40.ぼっち少女の多忙な一日4
私たちは、狭い場所で、体長3メートル弱の大きなオークキングから必死に逃げ回っていた。
私は、隙を見てオークキングのステータスを鑑定した。
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オークキング
【職業】王
【特徴】オークの王。かなり強い?
【固有スキル】王の特権Ⅰ
【レベル】216
【体力】68588/68588
【魔力】28515/28515
【筋力】6955
【防御】6803
【命中】6788
【回避】6670
【知力】6855
【精神力】6786
【速度】6668
【運】6788
王の特権Ⅰ
【発動】任意
【説明】全ステータス値を高める。最大2倍。効果時間は5分。
【使用方法】スキル名を唱える。
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オークキングのステータスは意外と高い。ゴブリンエンペラーに勝るとも劣らないレベルだ。
でも、固有スキル「王の特権Ⅰ」は、上昇の最大値が2倍だし、効果時間も短いから、ゴブリンエンペラーの固有スキル「皇帝の特権Ⅰ」と比べるとまだマシだ。
それに、オークキングは魔法はあまり得意じゃないようで、私やハティさんの魔法攻撃はほとんど防がれることはなかった。
ただ、ゴブリンエンペラーのように体力も防御力も高いから、攻撃がほとんど効いていない。
ハティさんは、時折剣で斬りかかったりしているけど、ほとんど効いてないようだった。
私は、異能「並列思考」を使って、攻撃と回避をしながらハティさんの様子を見て作戦を考える。
オークキングは、力は強いけど、その太った体型のせいか動きは遅いから、「身体強化」を使わなくても余裕をもって避けられる。
でも、場所が狭いせいで、ずっと動き回っていなければいけないし、攻撃も、ハティさんに当たらないように気をつけないといけないから、決定打を打てずに攻めあぐねていた。
オークキングとの戦闘が始まって10分が経った。
その間ずっと走って逃げ回ったり、攻撃のために魔法を使ったりして、だんだん疲れてきた。
途中、オークキングが固有スキルを使ったせいで、結構本気で逃げるハメになったけど、二人とも大きなケガをすることなく、効果時間が切れた。
私は、高いステータスと、連日の迷宮攻略のおかげで、体力にはまだ余裕があるけど、見た感じハティさんはそろそろキツそうだ。
うーん。ハティさんがいると、全力が出せないんだよなぁ。
ハティさんには本当の実力は隠したままだし、今はまだ、話すつもりはない。利用されたくないし。
それに、狭いから、前衛のハティさんがなかなか射線から外れてくれない。これじゃあ大規模な魔法が打てないよ……。
私は、後方でハティさんの補助をしながら、ひたすら機会を伺っていた。
それから3分後。一気に状況が動いた。
再び固有スキル「王の特権Ⅰ」を使ったオークキングにハティさんが殴り飛ばされた。
ハティさんは、地面に叩きつけられたけど、うまく受け身をとったようで、叩きつけられた勢いのまま数メートルゴロゴロと転がると、ひょっこりと起き上がった。
ところどころ切れて出血しているけど、大きなケガはなさそうで安心した私は、ようやくハティさんから離れてくれたオークキングに向けて魔法を使った。
『凍結』
オークキングは一瞬で全身氷漬けになり、絶命した。一撃で倒せたのは、ここまで地道に体力を削っていた成果だ。
鑑定で確かめると、オークキングの死体になっている。
私は、「凍結解除」でオークキングを解凍すると、ギルドカードをかざしながら「無限収納」に収納した。
そして、ケガをしたハティさんに駆け寄った。
ハティさんの傷は、私が駆けつけたときにはもうほとんど塞がっていた。
さすがに破れた服までは直せないみたいだけど、出血は収まっているし、傷跡もほとんどなくなっている。
回復系のスキルか異能でも持ってるのかな?
気になったけど、今はそれを聞く手段はないので諦めた。
私がハティさんを観察していると、ハティさんが言った。
「ごめんなさい。私、足手まといだったわね。私がいなければ、トモリちゃんはもっと早くオークキングを倒せてた。そうでしょう?」
私は返答に困った。
確かにハティさんの言うとおりだけど、素直に頷くのは、無遠慮な気がする。
でも、ハティさんの顔を見て、考えを変えた。余計な気遣いは無用といった表情をしていたからだ。私は、頷くことにした。
「そう。やっぱり、トモリちゃんはすごいわね…………」
そこで言葉を切って、一息つくと、今度は明るい声で言った。
「それで、このあとだけど、トモリちゃん、まだ依頼残ってるでしょう?ついでに片付けていかない?」
ハティさんはそう言ってにっこりと微笑んだ。
2020/3/10 オークキングのステータスを大幅に上方修正しました。




