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37.ぼっち少女の多忙な一日1


 4月(オルヴァセン)17日、月曜日ムーンダン

 今日は、冒険者として依頼を受けることになっている。

 本当は、今日も迷宮に行こうと思っていたんだけど、昨日、アニタさんにたまには依頼も受けるように言われてしまったので、それに従うことにした。


 混雑している時間を避け、冒険者ギルドに向かう。

 時間は朝の9時過ぎ。

 おいしい依頼はもうないかもしれないけど、仕方ない。人混みの中、依頼の争奪戦に加わるのなんて絶対に嫌だもの。

 ギルドに着くと、カウンターにアニタさんがいないか探したけど、見つからなかった。

 あれ?今日はいるって言ってたんだけど……。休憩中かな?

 私は、依頼ボードを見ながらアニタさんが来るのを待つことにした。




 私は今Dランクだから、Cランクの依頼まで受けられる。

 Dランクの依頼にはやりたいと思えるものがなかったので、Cランクの依頼を見ていると、後ろから声を掛けられた。


「おはようございます、トモリさん」


 振り向くと、アニタさんがいた。

 私は、軽く頭を下げて挨拶をする。


「今日は依頼を受けるんですね?何を受けるか、もう決めましたか?」


 まだ決めていないので、首を横に振る。

 すると、アニタさんが提案してきた。


「実は、トモリさんにぴったりの依頼があるのですが、受けていただけませんか?」


 私にぴったりの依頼ってどんなのだろう?

 でも、アニタさんが勧めるくらいだから、私にとって悪い依頼ではないはず。

 私は、アニタさんの提案した依頼を、内容も聞かずにすべて引き受けることにした。

 ……受けてから、せめて内容くらい聞いておけばよかったと後悔したけど、後の祭りだった。





 依頼を受けた私は、溜息をつきながら、森の中をかれこれ一時間近く歩き回っていた。

 依頼対象がなかなか見つからず、延々と探し回る羽目になっているのだ。


 今日、私が受けた依頼は、採集依頼が8つと討伐依頼が1つ。どちらも一時依頼だ。

 採集依頼の方は、対象物が同じ依頼を複数まとめて受けた感じになっているので、実質は2つだけだけど、採集対象が問題だった。

 私が受けたのは、プラントスライムの蔦50本の採集×3つと、バードスライムの羽根50枚の採集×5つ。それから、森の中にあるゴブリンの集落の殲滅およびゴブリンの討伐。

 バードスライムの羽根は集めやすいからいいとして、プラントスライムの蔦計150本はかなりキツイ。

 プラントスライムを倒すだけなら簡単だったけど、蔦を残して倒すとなると、手こずることは間違いない。

 それに、バードスライムもプラントスライムも、スライム迷宮にしか出現しない魔物だ。

 つまり、プラントスライムはあの茂みの中で戦うしかないのだ。

 はあ、面倒だなぁ……。

 私は、超面倒な採集依頼を後回しにして、先に、すぐに済みそうなゴブリンの討伐依頼の方を片付けることにした。




 すぐに終わると思っていたゴブリンの討伐依頼は難航していた。

 迷宮の外に現れるゴブリンは、ノーマルゴブリンのみなので、簡単に倒せるはずだったし、実際簡単だった。……最初の頃は。

 ちょうど狩りでもしていたのか、森の中に数匹のゴブリンを見つけては狩っていっていた頃は、まだ良かった。

 「探索サーチ」を使うと、ノーマルゴブリンの居場所はすぐにわかったけど、集落の位置まではわからなかった。

 たぶん、私が想像しているゴブリンの集落と、実際のものが違うせいだと思うんだけど、見つからないから自分で探すしかない。

 そう思って、アニタさんから教えてもらった情報を頼りに、集落のありそうな場所をしらみつぶしに回ることにしてからが大変だった。

 狭い森の中では飛行魔法は使えないため、歩いていくしかないのがつらいし、行く場所はすべてハズレで、骨折り損のくたびれ儲け。

 ああ、もう、どうして見つからないのよ!

 5か所目を回ったところで、だんだん諦めが強くなってきた。

 ……もう1か所回って、何もなければ、一度戻ってアニタさんにゴブリンの集落の絵でも書いてもらおう。

 私は、次がアタリであるように祈りながら、歩いて10分ほどのところにある場所に向けて森の中を歩いていった。



 「探索サーチ」で調べると、その場所には魔物がいた。

 アイコンをタップしてみると、ノーマルオークとアースウルフが数匹ずつと、少し離れたところになぜかオークキングがいる。ゴブリンは一匹もいないようだ。

 ここもハズレかな……。

 そう思いつつも、一応何もないか確認してから戻ることにして、魔物に気付かれないようそっと近寄っていった。

 木の陰から覗くと、少し開けた場所に、丸太と葉と土で作られた小さな家らしきものが複数建っているのが見えた。

 高さは1.5メートルくらい。ゴブリンが住むのにちょうどいい高さだ。

 そして、家と家の間に、数匹のオークとウルフが睨み合っていて、地面にはゴブリンの死骸が転がっていた。

 ……ここは、ゴブリンの集落で間違いなさそうだけど、ゴブリン全滅しちゃってない?これって、依頼どうなるの?

 ゴブリンは、集落ごとオークとウルフの縄張り争い?に巻き込まれたようだ。

 このままでは依頼を達成できないので、私は一度街に戻ることにした。

 周りに人がいないことを確かめ、「隠形ハイドフォーム」と「転移テレポーテーション」で冒険者ギルドの近くの路地裏に転移した。




 ギルドに着くと、カウンターにいたアニタさんのところに向かった。


「あれ?トモリさん?お早いお戻りですが、どうされました?」


 あまりにも早い帰還に驚いたアニタさんは、すぐに紙とペンを用意してくれた。

 私は、だいぶ慣れてきたこの世界の文字で、「ゴブリンの集落にオークとウルフ」と書いて見せた。

 それを見たアニタさんは、急いでギルマスを呼びに行った。


 私は、一度戻ってきたアニタさんと一緒に、ギルマスの部屋に向かった。

 冒険者になってからまだ一週間も経ってないのに、ギルマスの部屋に行くのがすでに4回目って、どうなんだろう……。

 すっかりギルマスの部屋に馴染んでしまった自分が少し怖いと思ってしまった。

 

 

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