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36.ぼっち少女の異世界観光2


 翌日。

 朝食を終えた私は、約束通り、朝9時(=朝4刻)に冒険者ギルドの前に行った。

 そこには、昨日と同じ私服姿のアニタさんと、ハティさんがいた。

 あれ?なんでハティさんもいるんだろう?

 そんなことを思いながら歩いていくと、向こうも私に気付いて声を掛けてきた。


「おはようございます、トモリさん」

「おはよう、トモリちゃん。突然で悪いんだけど、私も一緒に行っていいかしら?」


 構わないので頷くと、ハティさんは満面の笑顔でお礼を言った。

 そうして、私たちは3人で街を歩くことになった。




 

 最初の目的地は教会だった。

 行く場所は、アニタさんに完全にお任せしている。特に行きたい場所もないから、口を出すことはしないと決めている。

 でも、最初に教会とは予想外だった。

 てっきり、観光名所的な、綺麗な風景が見える場所とか、珍しい物があるお店とか、そういうところだと思ってた。

 だから、アニタさんに理由を聞くと、アニタさん曰く、この国では新しい街に来たら、教会に礼拝に行くのが習わしになっているそうで、私はまだ教会に行っていないから、早めに行った方がいいということだった。

 一応、教会に入る前に、他の宗教の教徒かどうか聞かれた。他の宗教に入っている人は、改宗の手順を踏まないと他の宗教の教会に入れないらしい。

 私は、無宗教なので、問題ないと伝えると、無宗教であることを珍しがられた。

 この国では、約99%の人がゼフェラルト教の信者で、それ以外の人も、何かしらの宗教に入っているのが普通らしい。

 この国は、宗教国家だったんだね……。変な儀式とかないといいけど。

 私は、何もないことを願いながら、アニタさんとハティさんと一緒に教会の門をくぐった。



 私は、アニタさんたちと一緒に、シスターの案内で教会内を一通り歩き、ミサを見学させてもらった。

 入信するかは今すぐ決めなくていいと言ってくれたので、随分と気楽に見学できた。

 歩きながら、ゼフェラルト教に関する話をたくさん聞いた。

 要約すると、こんな感じ。

 

 ゼフェラルト教には7柱の神がいて、それぞれがこの世界の人々に関する何らかのものと、7つの属性うちのひとつを司っている。

 正義と火を司るゼルム。

 えにしと水を司るフェテル。

 善悪と闇を司るフェムテ。

 平等と風を司るリノム。

 戦いと地を司るアスノ。

 信頼と無を司るラドス。

 慈愛と光を司るテムド。

 魔法が使える信者は、自分が使える魔法属性を司る神を優先的に崇め、他の神へは、季節ごとの儀式や冠婚葬祭などの特別な用事があるときに祈るだけでいい。

 魔法が使えない信者は、自分の好きな神を決め、その神を優先的に崇める。

 この7柱の神は、昔実在していて、天災や戦争で滅亡寸前だったこの国を救い、今の平和な世をもたらした。

 そして、世が平和になると、当時の信者を残して神々はどこかへ去っていった。



 とまあ、こんな感じだ。

 宗教ができた話は、よくあるやつで、聞いていて本当かなぁと思った。

 それに、7柱の神々すべてを平等に崇めるのではなく、好きな神だけ崇めていればいいって、どうなの?

 人気のない神様はかわいそうだと思ってしまった。

 私は、もともと神様は信じないタイプなので、この宗教の神様も実在するのか怪しいと思っている。

 ……教会の中だし、他人の目があるところで、信じてないなんて間違っても表には出さないように気を付けたけど。

 2時間くらい見学をして、私たちは教会をあとにした。

 案内してくれたシスターがしつこく入信を勧めてきたけど、考えたいと言ってやんわりと断った。

 信者であるアニタさんたちには悪いけど、当分は宗教に入るつもりはない。

 元の世界でも、初詣なんて一度も行ったことはない。

 困った時の神頼み的なことはしてたけど、特定の神を信仰していたことはない。

 だから、宗教的な決まりとか、そういうの覚えたり、縛られたりするのは嫌だと思ったのだ。

 シスターはともかく、アニタさんとハティさんは、しつこく言ってきたりはしなかったので助かった。


 あ、そうそう。

 教会でひとつ面白いことがわかった。

 この世界では、光の魔法属性は、何かの宗教の信者しか得ることができないらしい。

 また、ステータスの職業のうち、回復職は、その宗教に一定以上の貢献をした者、あるいは、一定以上の修行を納めた者しか転職することができないらしい。

 もし、それが本当のことだとすると、回復師ヒーラーであり光の魔法属性を持っている私って、どうなっているんだろう?

 複数の職業に就けるのは、称号「万能者」のおかげだけど、「万能者」の取得条件は「???」のままだし、この辺が怪しいんだけど……。

 また自分では解決できない謎が増えてしまった。

 




 教会を出た私たちは、街を少し散策したあと、ハティさんおすすめのレストランで昼食をとった。

 その店は、異国料理のお店で、なんと、和食があった。

 親子丼や牛丼、うどんといった料理があり、お米もあった。

 ほっこり亭では、パンや麺ばかりで、ライスはなかったから、久しぶりのお米に感動した。

 アニタさんは親子丼を、ハティさんはかつ丼をそれぞれ注文していた。

 私は、好きなものを頼んでいいと言われたので、海鮮丼を注文した。中身は、マグロ、サーモン、イクラといった元の世界と変わらないものがほとんどだったけど、中にはよくわからないものもあった。

 何の魚か聞こうかとも思ったけど、魔物がいる世界だし、変な魚の名前が出てきたら食べられなくなりそうだったので止めておいた。



 昼食後、商店街で服や本、雑貨を買って楽しい時間を過ごしたあと、午後5時(=昼6刻)くらいにふたりと別れてほっこり亭に帰った。

 歩きながら、私は、ふたりにいろいろなことを聞いた。


 まず、暦のこと。今が何月なのかわからないのは気持ちが悪いから、教えてもらった。

 この世界でも、1年は12カ月で、1ヵ月は約30日。1週間は7日ある。季節は春夏秋冬が同じ長さずつあるらしい。

 で、今は、4カ月目で、季節は春。曜日は、使われている単語の意味を教えてもらった結果、日曜日だと判明した。

 つまり、オルヴァセン=4月で、私がこの世界に来た曜日は、テリアルダン=水曜日ということだ。

 ちなみに、宿に帰って「時計クロック」で暦を確認したら、この世界の暦と元の世界の暦が切り替えられるようになっていた。

 これでもう、今日が何月の何曜日なのか迷わなくて済む。

 私は心底ほっとした。



 それから、人間以外の種族がいるのかも聞いた。

 この世界には、人族の他に、妖精族エルフ人魚マーメイド半狼人ワーウルフ半猫人ワーキャットといった獣人などがいるらしい。

 これらの亜人は、基本的に人族に友好的だけど、悪魔の血を引く半魔や、獣人の中でも獣の血を濃く引く食人種は、人族にとっては危険な存在だから無闇に近付かないように注意された。

 ファンタジー世界に来たからには、一度くらいは亜人に会ってみたいけど、この世界には人を食べる種族もあるそうだし、気をつけよう。

 


 宿に帰った私は、買ったものを「無限収納インベントリ」内で整理して、夕食と入浴を済ませると、早々に横になった。

 今日は、いろんなことがわかったし、久しぶりに和食を食べて、ショッピングして、とても有意義な一日だったなぁ。

 ずっと歩き回っていたからか、疲れていたらしい。

 私はすぐに眠りに落ちた。


 



◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆



万能者

【称号取得条件】???

【効果】複数の職業に就ける



◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆


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