表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/172

35.ぼっち少女の異世界観光1



 すっかりお馴染みとなった冒険者ギルドのギルマスの部屋で、私はアニタさんから話を聞いていた。

 ハティさんも部屋にいるけど、私との話はアニタさんに任せっきりで、本人はほとんど話さない。

 昨日くらいから、自分で話すよりアニタさんに任せた方が早いということに気が付いたのか、私と話すのはアニタさんの役目になった。

 まあ、私としても、察しが良いアニタさんの方が話しやすいから助かるけど。


「では、まず確認ですが……トモリさんは、ひとりでゴブリンエンペラーを倒してゴブリン迷宮を攻略してきたということでよろしいですか?」


 頷くと、ふたりとも頭を抱えて溜息をついた。


「それから、迷宮攻略にかかった時間はどれくらいですか?」


 えっと、確か、ゴブリン迷宮に着いたのが朝の9時くらいで、街に着いたのが13時過ぎ。迷宮から街までの飛行時間を除くと……4時間弱、かな?

 私は紙に「4」と書いて見せた。


「……4時間ですか?」


 頷く。すると、アニタさんはもう一度溜息をついた。


「はあ……。トモリさんには本当に驚かされますね。まさか、たったの数時間で迷宮を攻略するとは……。ご存知ですか?普通、初級レベルであったとしても、ひとつの迷宮の攻略には、半日以上かかるんですよ」


 えっ!?そんなにかかるの?

 私、そんなにショートカットしてたっけ?

 確かに、ほとんど飛行魔法を使ってたから、道に関係なく進んでたし、だいぶ時間も短縮できたと思うけど、それだけじゃこんなに差は……。

 あ、そういえば、「地図マップ」があったから、マッピングする必要がなかったんだよね。もし、マッピングしながらの攻略なら、もっと時間がかかるか。

 あとは、歩いて行ったら疲れるから休憩も多くなって、時間はかかるよね。

 ということは、私、他の人から見たらかなり異常な早さで攻略してたってことに……。

 私は、自分がアニタさんたちにどう思われているのかなんとなく察し、青ざめた。

 もしかして、私、危険人物だと思われてたりして……。

 それが表情に出ていたのか、アニタさんが言った。


「大丈夫ですよ、トモリさん。私たちは、トモリさんが誰かに危害を加えるような人ではないとわかっています。その強さについては立場上警戒しないわけにはいきませんが、強いという理由だけでトモリさんをどうこうするつもりはありませんので、ご安心ください」


 そう言ったアニタさんは、とても優しい表情をしていた。だから私は、アニタさんを信じることにした。

 私が、まだ少しぎこちないながらも笑顔で頷くと、アニタさんは笑っていった。


「私たちを信じてくださって、ありがとうございます。それで、もしよろしければ、その……この街に来る前、トモリさんがどこで何をしていたのか聞かせていただけませんか?あ、話したくなければ無理にとは言いませんが……」


 言いながら、だんだんアニタさんの笑顔が曇っていく。聞きたいけど、無理に聞いて今の関係がこじれたら嫌というところだろう。

 うーん。どうしようかなぁ。

 まだ数日の付き合いだけど、アニタさんもハティさんも信頼できる良い人であるのはわかってる。でも、私の境遇をそのまま話しても信じてもらえるかは微妙なところだ。

 この世界で、異世界人というのが、どれくらい知られているのかわからないし、知られていたとしても、良くない存在だと思われている場合、どういう反応をするか……。


 たっぷり5分は考えた結果、私は、少し作り話も混ぜつつ、この街に来るまでの経緯を話すことにした。

 私が考えている間、ふたりとも黙って待っていてくれたし、長い話を書いている間も、紙が足りなくなりそうになったら新しいのを持ってきてくれたりと、親切にしてくれた。

 そして、書き終わると、ふたり並んで座り、私が書いた紙をふたり仲良く読んでいた。



 私は、次のようなことを書いた。


 まず、私は、とある小さな島国で暮らしていて、同じ年頃の子たちと学校に通って勉強をしていたこと。

 その国には、魔法を使える人がいなくて、私もその国にいる間は使おうと思わなかったこと。

 下校途中にいきなり気を失い、気が付いたらフィルリアの街の外の森の中にいたこと。

 そこで初めて魔法を使ってみたら、強力だったこと。

 私が暮らしていたところと、この街では、文化が全然違うこと。

 

 そんなことを虚実織り交ぜながら書いた。

 幸い、ふたりとも作り話には気が付かなかったようで、私の話を丸ごと受け入れてくれた。

 それから、ふたりの質問に、さっきの話と矛盾しないように気を付けながら答えていった。

 そして、一通り質問に答え終わると、アニタさんが言った。


「話してくれてありがとうございます。それで、トモリさんに提案なのですが、明日、私に、この街を案内させていただけませんか?」


 ……いきなりアニタさんがこんな提案をしてきて驚いた。

 確かに、そろそろ街のいろんなところに行ってみようとは思っていたし、案内があったらいいなとは思っていた。

 まさか、アニタさんが案内してくれるとは思ってもみなかったけど、話の通じやすいアニタさんなら、大歓迎だ。

 私は、笑顔で頷いた。




 話が終わると、アニタさんと明日の約束をして部屋をあとにした。

 アニタさんとハティさんは、当初の用事があるからと言って部屋に残ったので、私はひとりで素材買取所へ向かった。

 そこで、迷宮で手に入れたゴブリンエンペラー以外のゴブリンの魔石を、それぞれ20個ずつ売った。

 ゴブリンの魔石は、1個銅貨2枚で、全部で銀貨6枚だった。

 予想より少なかったから、もう少し売ろうかとも思ったけど、あまり大量に売ると悪目立ちするので諦めて帰った。


 明日は、アニタさんと観光だ!

 楽しみだな♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ