29.ぼっち少女のゴブリン迷宮攻略1
この世界に来てから4日目。
今日も、昨日に引き続き、迷宮攻略に行くことにした。
街の散策も考えたけど、どうせするなら、ついでにいろいろと買っておきたい。そのための資金集めとして、迷宮で稼ぐことにした。
今日行く迷宮は、ゴブリン迷宮だ。
ゴブリンは、人型の魔物だから倒せるか不安だ。まあ、もし無理そうなら、途中で引き返してくればいい。
私は、軽い気持ちで迷宮に向かった。
ゴブリン迷宮は、スライム迷宮から直線距離でおよそ10キロ西に行った森の中にあった。
私は、街の路地裏で「隠形」で姿を隠し、「転移」でスライム迷宮の前に転移すると、そこから「飛翔」を使ってゴブリン迷宮まで飛んで行った。
かなり飛ばしたおかげで、10分もかからずに到着することができた。
ゴブリン迷宮の入口は、スライム迷宮とほぼ同じだったから、一瞬、来るところを間違えたのかと思って焦ったけど、入口にあった「ゴブリン迷宮」と書かれた看板から、間違いではないことがわかって安心した。
私は、「快適空間」と「光球」を使って、迷宮に潜る準備を整えると、ゴブリン迷宮に入っていった。
ゴブリン迷宮の第1層は、スライム迷宮と同じで石造りになっていた。
「探索」で調べると、この層にいるのは、ノーマルゴブリンであることがわかった。
……例によってA~Cまで揃っている。これまでの経験から、同じ種類の魔物でも、Aタイプは弱く、Cタイプは強いことがわかった。
特に、Cタイプは固有スキルを持っていることが多し、レベルやステータスもAタイプに比べて高いことが多かった。
まあ、今はまだ、相手が雑魚なのでタイプによる違いはあまり気にしないでも良さそうだ。
私は、ゴブリン迷宮も、スライム迷宮と同じように、基本的には階段までの最短ルートで進みつつ、転職必要討伐数と素材を確保することにした。
素材が欲しいから、使う魔法は水属性か風属性かな?
解体すればどの属性の魔法で倒したかなんてわからないし、あまりこだわらなくてもいいよね。
かといってグロいのも嫌なので、基本はアースウルフのときのように「氷槍」で倒していくことに決めた。
私は、30分もしないうちに第1層を通り抜けた。
心配していた人型の魔物を倒す嫌悪感もなく、スムーズに進むことができた。
その理由のひとつとして、ノーマルゴブリンが、武器も持っていない超雑魚だったことも関係していると思う。
ノーマルゴブリンのステータスは、こんな感じだった。
◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆
ノーマルゴブリンC
【職業】なし
【特徴】普通のゴブリン。雑魚?ただし、すばしっこい?
【固有スキル】なし
【レベル】9
【体力】140/140
【魔力】53/53
【筋力】26
【防御】19
【命中】15
【回避】23
【知力】17
【精神力】17
【速度】23
【運】26
◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆
ノーマルゴブリンの中で一番ステータスが高かったヤツでもこのレベル。私の足元にも及ばない。
私は、「氷槍」を連発して、次々とゴブリンを倒していった。
ステータスが上がったので、「氷槍」は同時に9個まで展開できるようになっていた。
それに、異能「必中」による補正もあって、特にミスすることなく倒すことができた。
もちろん、ゴブリンの死体は「無限収納」に回収して、歩きながらひたすら解体していった。
解体したノーマルゴブリンの素材を何種類かギルドカードに入れてみたけど、依頼は発生しなかった。
私は、その勢いのまま次の階層に向かった。
スライム迷宮では、第2層は森林地帯だったけど、ゴブリン迷宮は草原だった。
広大な草原地帯に、ゴブリンソードマンとゴブリンウォーリアーが混在している。
剣と拳。接近戦をする人にとっては、武器の違いは厄介かもしれないけれど、私には関係ない。
私は「飛翔」で飛び上がると、上空から地上にいるゴブリンに向かって「氷槍」を放ちまくる。
上空からでも「無限収納」の一括収納は有効なので、地上に降りることなく進んでいった。
結局、第2層を抜けるのに10分もかからなかった。
ちなみに、一番強いゴブリンソードマンとゴブリンウォーリアーのステータスはこんな感じだった。
◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆
ゴブリンソードマンC
【職業】剣士
【特徴】ゴブリンの剣士。一応雑魚。剣の腕は素人レベル?
【固有スキル】身体強化Ⅰ
【レベル】12
【体力】238/238
【魔力】86/86
【筋力】45
【防御】27
【命中】23
【回避】43
【知力】25
【精神力】25
【速度】43
【運】32
身体強化Ⅰ
【発動】任意
【説明】身体能力を強化する。最大2倍。
【使用方法】スキル名を唱える。
ゴブリンウォーリアーC
【職業】拳闘士
【特徴】ゴブリンの拳闘士。一応雑魚。力が強い。
【固有スキル】筋力強化Ⅰ
【レベル】12
【体力】245/245
【魔力】86/86
【筋力】52
【防御】40
【命中】36
【回避】50
【知力】25
【精神力】38
【速度】50
【運】32
筋力強化Ⅰ
【発動】任意
【説明】筋力を強化する。最大2倍。
【使用方法】スキル名を唱える。
◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆
ゴブリンソードマンの固有スキル「身体強化Ⅰ」は、私が持っている異能「身体強化」の劣化版のようだ。
でも、例え劣化版でも、ゴブリンごときが私と同じ能力を持っているなんて、なんかムカつく。
幸い?「身体強化Ⅰ」の固有スキルを持っているのはゴブリンソードマンCだけだったので、私はゴブリンソードマンCを優先的に殲滅していった。
それにしても、「身体強化Ⅰ」や「筋力強化Ⅰ」って、最後に「Ⅰ」が付いてるけど、これって、「Ⅱ」とか「Ⅲ」とかもあるんだよね?
最終的に、私の「身体強化」よりも固有スキルの「身体強化」の方が強化倍率が高くなったら嫌だなぁ。
末尾に数字が付いている固有スキルの内容は、よく見ておくことに決めた。
第2層も、依頼は発生しなかった。
ゴブリンソードマンが持っていた剣は、ボロすぎて売れないと思うけど、いつか何かに使えるかもと思い、できる限り拾っておいた。
私は続けて第3層に向かう。
第3層は、森林地帯だった。鬱蒼と茂った森の中に、ゴブリンスピアマン、ゴブリンウィザード、ゴブリンヒーラーが各1匹ずつのチームを組んで散らばっていた。
ゴブリンスピアマンが前衛、ゴブリンウィザードが後衛、ゴブリンヒーラーが回復役といった感じだ。
ただでさえ見通しの悪い森の中で、連携して襲ってこられたら困る。
私は、今回も空を飛んでいくことにした。
でも、空からだと森の中がよく見えないから、「氷槍」で倒すのは無理がある。
かといって、「火嵐」を使うと、せっかくの素材が灰になってしまう。
でも、ゴブリンの素材でお金になりそうなのは、魔石だけ。そして魔石は、熱には弱いけど寒さには強い。
これは、階段を降りながら、余ったノーマルゴブリンの魔石で実験した結果から、間違いはないはずだ。
というわけで、私は、森の中央付近までいくと、森の半分くらいを覆う規模の魔法を発動した。
『凍結』
一瞬にして森ごとゴブリンが凍りつく。
凍ったゴブリンに対しても、「無限収納」の一括収納は有効だった。本当に便利なスキルだなぁ、「無限収納」は。
私は、凍った森を隅々まで飛び回り、凍ったゴブリンを回収して、階段に向かった。
第3層は、20分くらいで抜けられたけど、スライムと違ってゴブリンは素材が残るから、回収するのが大変だと思った。
第3層も依頼は発生しなかった。
ゴブリンスピアマンのボロ槍と、ゴブリンウィザードとゴブリンヒーラーのボロ杖も、念の為回収しておいた。
大部分が木でできているから、薪の代わりにしてもいいかもと思った。




