表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/173

閑話2 とある受付嬢の日常?2

今話も、アニタ視点が続きます。


 午後の業務を終えて帰宅します。私が家に着いたときには、私以外の家族は全員帰っていました。

 家族といっても、私は誰とも血が繋がっていません。私は赤ん坊の頃、森に捨てられていたのを義父ジークに拾われ、この家の養女として育ちました。

 容姿も、性格も、家族とは全然似ていませんが、義父とうさんも、義母かあさんも、義兄にいさんも、私を本当の家族として迎え入れてくれています。もちろん、私も本当の家族だと思っていますよ。


 私たちは、いつも皆で夕食を取ります。仕事柄、帰宅は私が一番遅いので、帰ったらすぐに夕食になります。

 そのせいか、帰る頃には、お酒が好きな義父とうさんはかなり出来上がっています。私に対して超がつくほど親バカな義父とうさんは、酔っ払うとさらにウザくなります。

 いつもは、適当にあしらっていると、そのうち酔いがまわって眠ってしまうのですが、そうでないときもあります。

 そして、不幸にも、今日はその日でした。




「ただいま帰りましたー」



 玄関に入ると、野太いおっさんの笑い声が2つ聞こえてきました。

 義兄にいさんは、下戸ですし、どちらかというと控えめな性格なので、こんな声は出しません。

 とすれば、考えられるのはひとつ。義父とうさんの親友である親方が、遊びに来ているのです。

 親方は、よく家に遊びに来て、義父とうさんと泥酔するまで飲みます。そして、夜4刻くらいに、親方の奥さんが迎えに来るまで飲んで騒ぎ続けます。

 はっきり言って、かなり迷惑です。ですが、親方が来ると、家の中がいつもよりずっと賑やかになるので、嫌いではありません。

 私は、家族4人+1人で楽しい夕食の時間を過ごしました。


 途中、こんな会話がありました。



「そういや、アニタ、ヒック。あの子の面倒はちゃんと見てやったかー?」

「はい。もちろんです、義父とうさん」



 酔っ払った義父とうさんが、トモリさんのことを聞いてきました。

 すると、同じく酔っ払った親方が、話に食いついてきました。



「ん?ヒック、あの子って、何の話だ?」

「ああ、今日、仕事中になー、ヒック、変わった女の子に会ったんだよー」

「変わったって、ヒック、どんなふうに変わってるんだー?」

「ああ、それがなー、ヒック…………あーなんだっけ?」



 酔っぱらった義父とうさんは、忘れっぽいのです。今回も、言おうとしたことを忘れてしまったようです。

 これもいつものことなので、私はすかさずフォローに入ります。



「親方、トモリさんのことですよ」

「トモリ……?誰だっけ?ヒック」

「ほら、夕方、解体所でアースウルフを売りに来た人です。すごく状態が良いって、親方、銅貨2枚もおまけしてあげた人ですよ」

「ああ、あの子か!」



 親方は、ようやくわかったようです。

 すると今度は、義父とうさんが聞いてきました。



「アースウルフ?ヒック、見間違いじゃないのか?」

「いえ、間違いなくアースウルフでしたよ」

「そうか、ヒック。んじゃ、あの子、相当強いんだな」

「そうですね」



 アースウルフを単独で狩れる女の子。例えまぐれだったのだとしても、それなりに強いのでしょう。

 義父とうさんも親方も、同意見のようでした。



 そんな会話をしながら、私たちは楽しい夜を過ごしました。





 翌日。

 朝の混雑が終わり、一息ついた頃、トモリさんがやってきました。

 依頼を受けたいというので、残っていた中で一番まともな依頼である、ポー草の採取依頼を紹介してあげました。

 ポー草は、下級魔力回復薬の材料で、常に需要があります。また、ポー草によく似た、下級体力回復薬の材料であるポー草モドキは、常時依頼であり、ポー草と一緒に生えていることが多いので、一石二鳥です。

 私は、トモリさんを見送りながら、彼女がどんな成果を見せてくれるのか楽しみに思っておりました。




 昼過ぎ。

 そろそろ昼休憩の時間になろうかという頃、トモリさんが帰ってきました。

 採取依頼ですし、帰ってきてもおかしくはない時間です。

 さて、どれくらい採ってきてくださったのでしょうか。楽しみです。


 私は、トモリさんからギルドカードを受け取って、達成処理をします。

 読み取り機にカードをセットし、コピー機のボタンを押すと、カードに記載された依頼達成情報が紙に印刷されて出てきます。

 私は、ワクワクしながら紙に目を通し、次の瞬間、思わず声を出してしまいました。



「えっ!?」



 そこには、アースウルフ討伐の常時依頼を7回達成という、信じられないことが書いてありました。

 もしかしたら読み取りミスかもしれません。私は、もう一度印刷してみました。

 しかし、内容は同じです。

 私は、困惑して、紙とトモリさんを見比べて、首を傾げました。

 どうやったら、トモリさんのような少女が、アースウルフを35匹も狩れるのでしょうか?私には理解できません。

 ちょうどそこへ、ギルマスがやってきました。

 ギルマスのハヴィティメルネさんは、私と歳はあまり変わりませんが、元Aランク冒険者であり、人の性質を見抜く異能を持っていらっしゃいます。

 ギルマスなら、この件をどうにかしてくれるでしょう。

 私は、遠慮しながらも、ギルマスに達成情報が書かれた紙を手渡しました。



 その後、私たちはギルマスの部屋で話をしました。

 結論から言うと、トモリさんは、普通の冒険者の枠内に収まるような方ではないということがわかりました。

 業務終了後、ギルマスとトモリさんについて話をしました。

 あまりにも強いので、何か問題を起こすのではないかという話になりましたが、最終的に、本人は礼儀正しくて素直ないい子ですし、必要以上に警戒する必要はないという結論になりました。

 大事おおごとにならなくて良かったです。

 


 そして、今日、トモリさんは、早速スライム迷宮を攻略して来たようで、バードスライムの羽根を大量に持ってきました。

 バードスライムの羽根は、アクセサリーとして需要が高い素材ですが、バードスライム討伐の際に傷物になってしまうことが多く、品質はほとんど中か下です。

 しかし、トモリさんが採集した羽根の品質は、良や上ばかり。いったいどうやったら、こんなに多くの高品質の羽根を集められるのでしょうか?

 本当に不思議な人です。

 そして、これからの活躍が楽しみな人でもあります。


 トモリさん。これからも、ケガなく頑張ってくださいね。

 応援しています。



次話は、本編の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ