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25.ぼっち少女のスライム迷宮攻略8

※『』は燈里の念話での発言です。


 突然現れた小さな人は、綺麗なローズレッドの髪と瞳の女性だった。見た目年齢は私とそう変わらないように見える。

 彼女は、よく見ると体が透けていて、人間にはない角と尻尾と翼があった。

 ……もしかして、悪魔?

 人間ではないことに気付いて、少し警戒を強めた。

 すると、そんな私を見た彼女は、クスクスと笑い出した。


「そんなに警戒しなくてもいいわ。これはただの立体映像で本体じゃないから、私があなたに物理的・魔法的に干渉することはできないわ」


 いきなり喋ったことで驚いたけど、立体映像だと聞いて納得し、安心する。

 体が透けているのは、実体ではないからのようだ。


「ふふ、安心してくれて嬉しいわ」


 私が警戒を緩めたのがわかったのか、彼女が言った。

 私は、そんな彼女を無言でじっと見つめていた。

 ……というか、話したくても話せないから、こうするしかないんだよね。

 すると、彼女は何かに気が付いたように言った。


「あ、そうそう。あなた、念話ってわかるかしら?」


 念話?物語に出てくる、声を介さず、心の中で会話できるアレかな?

 彼女が言っているものと同じかわからないけど、一応それっぽいものは知っているので頷いた。


「そう。やっぱり知っているのね。じゃあ、使い方もわかるわよね?あなたと会話したいから、使ってみてくれないかしら?」


 いきなり無茶な要求がきた。念話なんて使ったことないんだけど。

 戸惑ったけど、試しにやってみることにする。

 私は、心の中で、彼女に向けて「聞こえますか?」と言ってみた。

 すると、彼女から返事が返ってきた。


「聞こえるわ。念話の使用は、通信越しでも問題なさそうね」


 ちゃんと聞こえていたらしい。良かった。

 でも私、念話のスキルなんて持ってないけど、どうして通じたんだろう?

 気になったので聞いてみた。


『えっと、私、念話のスキル、持ってない、けど、通じる理由、は?』


 ……人と話すのが久しぶり過ぎて、かなりぎこちなくなってしまった。

 でも、彼女はそこには触れずに答えてくれた。


「それは私の能力よ。念話は、片方がその能力を持っていれば、もう片方が持っていなくても通じるのよ」


 なるほど。片方持っていればできるなんて、なかなか便利な能力だな。私も欲しいなぁ。

 ……あ、でも、持ってたら持ってたで面倒そうだし、やっぱり今のままでいいかな?

 私は、念話の能力についていろいろ考えてみたけど、特に必要はないという結論に落ち着いた。

 人と話すのは苦手だし、変に目をつけられて厄介事に巻き込まれるのは嫌だからね。

 彼女は、私があれこれ考えている間、待っていてくれたのか、ちょうど私が考え終わると話し始めた。


「さて、念話もできることがわかったし、本題に入らせてもらうわ。まずは、自己紹介から。私は、魔界序列第2位"女帝エンプレス" のリリス。種族はサキュバスよ。よろしくね」

『えっと、雪原燈里ゆきはらともりです。はじめまして』


 彼女――リリスは、予想通り悪魔だった。それも序列第2位で、高位の悪魔らしい。意外と大物でビックリだ。

 私は、とりあえず最低限の挨拶を返した。すると、リリスから衝撃の言葉が返ってきた。


「あら、気が付いてない?私たちが話をするのは、これが初めてじゃないのよ?」

『え?』



 どこかでリリスと会ったことがあったっけ?

 記憶を辿ってみるけど、思い当たることはなくて、首を傾げる。


「うーん。やっぱり、あなたには聞こえてなかったのね。僅かだけど意識があったから、聞こえてると思ったのだけれど。……ねぇ、あなた、本当にわからない?」


 リリスが聞いてくるけど、わからないものはわからないので、正直に言う。


『ごめんなさい』

「そう。なら、本題に入る前に説明するわ。これを説明しておかないと、本題に入れないし」


 リリスは悪魔だけど、良心的な人?のようで、丁寧に説明をし始めた。


「そうね。こう言えば思い出すかしら。私は、あなたをこの世界に連れてきた張本人よ」

『えっ!?』


 言われて、思い出してみる。確か、刺されたとき、誰かの声が聞こえたような気がしたけど。


『あの時の声の主?』

「ええ、そうよ。あなたには、私たちに協力してほしくて喚んだのよ」

『協力?』

「ええ。あ、でも、今のあなたでは全然使い物にならないから、今すぐに協力してもらう必要はないわ」


 使い物にならないって、かなり直球に言うなぁ。もうちょっとやわらかい言い方があると思うんだけど。

 内心そう思ったけど、念話には出さないように気を付けた。

 

『私は、何をすればいいんですか?』

「その前に、あなたは、どうしたいの?」


 私が聞くと、リリスが質問で返してきた。

 どうしたいって、どういう意味だろう?わからないので聞いてみる。


『どうしたいって?』

「あなたがこの世界で今後どうしたいのかってことよ。勝手に喚んだ私に言えたことではないけれど、私は――私たちは、あなたに無理やり協力させようとは思ってないわ。あくまでも、あなた自身の意思を尊重する。もし、あなたが元の世界に帰りたいと願うなら、元の世界に帰すことも不可能ではないわ」


 ……元の世界に、帰る?この世界に来てまだ3日しか経ってないから、帰りたいとか考えたこともなかった。

 私は、元の世界に帰りたいのかな?

 魔法があるファンタジー世界に来て、魔法を使って戦って、危険もあったけど、それなりに楽しかった。

 それに、ここでは、私は自由だ。

 行きたくもない学校に行ったり、会いたくもないクラスメートや母親に会ったりしなくていい。

 好きな時間に起きて、好きなことを好きなだけして、好きな時間に寝られる。

 元の世界より、ずっと居心地がいいように感じられた。

 ……でも、永住するかどうかはまだわからない。

 今はまだ、異世界に来て浮かれているところがある。気持ちが落ち着いて、この世界のことをもっと知ったとき、どう思うか。 


 私が悩んでいるのを見て、リリスが言った。


「別に、今すぐに答えが欲しいわけじゃないわ。さっきも言ったように、今のあなたは弱すぎて使い物にならない。私たちが欲しいのは、強くなったあなたなの。だから、答えは、あなたが私たちの求める協力者にふさわしい強さを手に入れてからで構わないわ」

『その強さって、どれくらいなんですか?』

「そうね。最低でも、この世界の迷宮を全て制覇できるくらいかしら?」


 迷宮の全制覇……。それって、かなり大変なことなんじゃ……。

 これは、ちゃんと確認しておいた方が良さそうだ。

 私は、リリスに次々と質問をしていった。


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