23.ぼっち少女のスライム迷宮攻略6
第5層は、第1層と同じ造りだった。
石製で暗く、狭い通路。ときどき小部屋があって、スライムが固まっているのも同じだ。
私は、「光球」で通路を照らしながら歩いた。
こういう暗くて狭い場所は、飛ぶと方向転換が難しいから、歩いた方が良いと思ったのだ。
……歩く分、移動にかかる時間は長くなるけど、それは仕方ないよね。壁に激突してケガするなんて嫌だもの。
私は、「探索」でこの階層にいるスライムを調べた。
この階層には、パラライズスライムとポイズンスライムがいるようだ。
位置的に、パラライズスライムの方が先に遭遇しそうだな。
私は、いつものように、階段への最短ルートを「地図」で探して歩き始めた。
パラライズスライムには、すぐに遭遇することができた。
通路にいるパラライズスライムは、あまり多くない。それに、一か所にいるのはせいぜい3匹くらいだから、いきなり襲われても対処できる。
私は、「風刃」でパラライズスライムを両断しながら、通路を進んだ。
進行通路に小部屋があると、入口から「風嵐」を使って一掃する。
そんなことを繰り返して、パラライズスライムからポイズンスライムのいるエリアに入る頃、私は予想外の事態に陥った。
それは、私が通路の角を曲がったときのことだった。
曲がった先にパラライズスライムが3匹いることはわかっていたから、「氷槍」を用意して用心しながら角を曲がった。
曲がってすぐに「氷槍」を放つ。そのおかげで、曲がった先にいたパラライズスライム3匹を倒すことができた。
倒したパラライズスライムは、ゆっくりと消えていく。
パラライズスライムは、他のスライムと違って、消えるのに数分かかる。
私は、ここまでと同じように、消えかかっているパラライズスライ厶の横を通って、先に進もうとした。
そんな私の背中に、どこから現れたのか、パラライズスライムが突っ込んできたのだ。
パラライズスライムの攻撃?自体はあまり痛くなかった。
例えるなら、子供用の柔らかいボールがポーンと当たったような感じで、衝撃もほとんどない。
でも、当たったところから少しずつ体が痺れていく。ピリピリとした感覚が、背中から手足に広がっていくのがわかった。
私は、急いで振り返り、目の前のパラライズスライムを鑑定する。
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パラライズスライムC
【属性】光
【特徴】黄色のスライム。一応雑魚?触れると麻痺する。麻痺効果のある攻撃をする。
【固有スキル】麻痺体Ⅰ
【レベル】10
【体力】168/168
【魔力】79/79
【筋力】20
【防御】20
【命中】27
【回避】20
【知力】29
【精神力】29
【速度】27
【運】20
麻痺体Ⅰ
【発動】常時
【説明】体表に触れたものを軽く麻痺させることができる。解痺には下級以上の回復薬か回復職による治療が必要。
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痺れの原因は、パラライズスライムの固有スキル「麻痺体Ⅰ」によるもののようだ。
……そういえば、パラライズスライムを鑑定するのは、これが初めてだった。スライムは雑魚ばかりだから、パラライズスライムも大したことはないと思って、鑑定していなかったのだ。
油断大敵というヤツだ。
これからは気をつけないとね。
私は、攻撃をしてきたパラライズスライムを、痺れて動きが鈍くなってきた体でなんとか「風刃」を使い、倒した。
倒したパラライズスライムが消えていくのを見ながら、「探索」を使い、周りに敵がいないか確認する。
うん。今度は大丈夫そうだ。
状況から推測するに、このパラライズスライムは、「探索」をしたときに、先に倒した3匹のうちのどれかと重なっていて見落としたのだと思う。
次からは、全部消えるか「探索」で倒し忘れがないか確認してから進むようにしよう。
私は、反省をすると、近くの壁に寄りかかって座った。
痺れはいつの間にか指先まで回っていた。
座りながら、麻痺を取り除く方法を考える。
「麻痺体Ⅰ」の説明には、麻痺を取り除くには、回復薬か回復職による治療が必要と書いてあった。
今、私は回復薬を持っていない。となると、使えるのは回復職による治療だけになる。
私は、一応回復師だし、自分で自分に回復魔法をかければ、治療できると思う。
というわけで、私は回復魔法を創ることにした。
いくつか創りたい魔法はあるけど、先に、今必要な魔法を創る。
『創造・異常回復』
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異常回復
【属性】光
【タイプ】回復・治療・蘇生
【発動対象】指定
【効果】指定対象の麻痺・毒等の状態異常を回復する。治療範囲は、術者の知力と精神力に依存する。なお、この魔法で病気を治療することはできない。
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効果のところに、意図していない説明が入っているけど、無視して使うことにする。
治療範囲云々と書いてあったけど、知力も精神力もだいぶ高くなっているし大丈夫だろう。
『異常回復』
唱えると、淡い紫色の光が私を包んだ。
そして、10秒ほど経って光が消えると、それまで感じていた痺れが消えていた。
どうやら成功したようだ。
私は、手足を動かして異常がないかを確認すると、ほっと一息をついた。
治って良かった……。
私は、ついでに、もう一つ定番の回復魔法を創っておくことにした。
今回みたいに、もし何かあったときに、すぐに使えるようにしておいた方がいいと思ったのだ。
創っている時間がない状況になる可能性だってあるわけだしね。
『創造・治癒』
◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆
治癒
【属性】光
【タイプ】回復・治療・蘇生
【発動対象】指定
【効果】指定対象の外傷を治療する。治療範囲は、術者の知力と精神力に依存する。なお、この魔法で部位欠損を治療することはできない。
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出来を確認すると、私は立ち上がって、通路を歩き始めた。
……次は、後ろから襲われないように気を付けよう。
今までよりも、幾分か用心して、迷宮を進んでいった。




