20.ぼっち少女のスライム迷宮攻略3
ステータスの確認が終わると、私は気を取り直して立ち上がった。
「探索」を使って敵を確認しつつ、階段を降りる。
階段を降りきり、土の地面に立つと、いきなり「地図」が切り替わった。
どうやら、新しい階層に到達すると、自動でその階層の「地図」が表示されるようになっているらしい。
私は地図に表示された敵を示すアイコンをタップした。
一番近くにいるのは、ロックスライムAで、3匹ほど固まっている。
私は、ロックスライムAのいる場所に向けて歩いていった。
ロックスライムAは、その名の通り、岩のスライムだった。
……スライムと岩が併存している時点で何かおかしい気がするけど、本当にそんなスライムだったのだ。
岩みたいなゴツゴツした質感だけど、スライムのように柔らかく、形状を変えられる不思議なヤツだった。
私は、試しに「水球」を使ってみた。
水の球は、1匹のロックスライムAにあたり、簡単にロックスライムAを吹き飛ばした。
続いて使った「火球」も、同じ結果が得られた。
ロックスライムAも、どの魔法でも倒せそうだ。
私は、残ったロックスライムAを「風刃」で倒すと、次に向かった。
ちなみに、倒したロックスライムも、ウォータースライムのように地面に消えて、何も残らなかった。
スライムは、倒したら消えるのがデフォルトなのかな?
私は、森の中を、次の階層への階段に向かう最短ルートで歩く。
目に付いた敵は、片っ端から倒していく。
さっき確認したステータスの転職に必要な討伐数を稼ぐためにも、遠慮なく倒していった。
ロックスライムにも、BとCがいた。ロックスライムCのステータスはこんな感じだ。
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ロックスライムC
【属性】地
【特徴】岩のスライム。雑魚?ただし硬い。
【固有スキル】防御力強化Ⅰ
【レベル】9
【体力】147/147
【魔力】61/61
【筋力】17
【防御】33
【命中】19
【回避】10
【知力】12
【精神力】12
【速度】10
【運】8
防御力強化Ⅰ
【発動】任意
【説明】対象の物理防御力を高める。最大2倍。
【使用方法】スキル名を唱える。
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何度か固有スキルを使われたけど、魔法で倒す分には何の問題もなかった。むしろ、スキルの効果を実感できなくて残念に思ってしまった。
その後、ロックスライムAを43匹、ロックスライムBを38匹、ロックスライムCを24匹倒したところで、今までと森の印象が違う場所に出た。
今までは、背の高い木が多くあり、地面に近い場所に草はほとんど生えていなかった。
でも、この先は、どちらかというと森というより、藪か茂みと言った方が正しい。
人ひとりがやっと通れるような小径の両側に、私よりも背の高い草が生い茂っている。
ときどき花や植物の蔦が小径に飛び出ていたので、引っ掛けて怪我をしないように気をつけて進んだ。
「探索」を使うと、茂みの中にもスライムはいた。
ここにいるのは、プラントスライムのようだ。
私は、一番近いところにいるプラントスライムBを鑑定してみようとした。けれど、何度やっても鑑定が発動しない。
鑑定は、対象を目視する必要があるみたいだ。ちょっと残念。
かといって、自分から茂みに突っ込んでいく勇気はなかったので、プラントスライムの位置に気をつけて、小径を進んでいった。
5分ほど歩くと、小径を一本の蔦が横に塞いでいた。高さは私の腿のあたりくらい。
跨ぐにもくぐるにも微妙な位置なので、魔法で切っていこうかなと思ったとき、蔦が動いているのに気がついた。
不思議に思って、そのまま見つめていると、突然、蔦が私に向かって伸びてきた。
私は慌てて後ろに下がる。
でも、蔦は私を追って小径を進んでくる。私は、謎の蔦から目を離さないようにしながら、適度に早く後ろに下がっていった。
10メートルほど下がり、蔦もだいぶ長くなってきた頃。
遂に蔦の終わりが茂みから出てきた。
蔦の先?には、プラントスライムがくっついていた。
緑色のプラントスライムの頭?の天辺から、一本の蔦が伸びている。
それが、この蔦だ。
私は、急いでプラントスライムを鑑定する。
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プラントスライムB
【属性】地
【特徴】植物と一体化したスライム。雑魚。伸びてくる蔦に注意?
【固有スキル】植物制御
【レベル】4
【体力】31/31
【魔力】24/24
【筋力】10
【防御】10
【命中】10
【回避】4
【知力】18
【精神力】18
【速度】10
【運】3
植物制御
【発動】任意
【説明】植物を操る。
【使用方法】スキル名を唱える。
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蔦が伸びてきた原因は、固有スキル「植物操作」にあるようだ。
また、厄介なスキルを持ってるなあ。
私は、くねくねと上下左右に曲がって伸びてくる蔦を躱しながら、魔法を唱える。
『風刃』
風の刃は、蔦ごとプラントスライムBを両断した。
プラントスライムBは、蔦の部分だけを残して、地面に消えていった。
私は、気になって残った蔦の部分を鑑定してみる。
『鑑定』
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プラントスライムの蔦
【用途】解毒薬
【説明】下級解毒薬の材料。
【品質】良
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へぇ。プラントスライムの蔦は、下級解毒薬の材料になるのか。
解毒薬があるってことは、ポーションとかもあるのかな?
ポーションは、ファンタジーの定番だし、一度くらいは使ってみたい!
街に戻ったら売ってないか探してみよう!
私は、プラントスライムの蔦を収納し、「探索」を使った。
相変わらず、プラントスライムの反応は茂みの中ばかり。
また、さっきみたいに突然襲われたら嫌だけど、「植物操作」のスキルのせいで、中に入って戦うわけにもいかない。
でも、討伐数達成のために、ここで100匹狩っておきたい。
うーん。どうしよう。
私は、敵の動きに注意しながら考えた。
手っ取り早く倒す、いい方法ないかな?
隠れてても、障害物があっても問題なく、殲滅できるような魔法……。
植物に効く魔法……。
…………。
…………。
あ!思いついた!
この場所にぴったりの良いヤツを!
私は、思いつきを実現するため、「飛翔」を使って空に上がった。
上空から茂みを見渡すと、その中心あたりの、スライムがたくさん集まっているところを目指して飛ぶ。
そして、目的の場所に着くと、スライムがたくさん集まっているところに向けて、魔法を放った。
『火嵐』
火はあっという間に植物を包み込み、プラントスライムごと焼いていった。
植物が密集していたせいで、火は次から次へと燃え広がって行き、1分後には、半径50メートル以上が焼けていた。
さすがにこれ以上はマズイと思ったので、魔法で消火する。
『創造・水雨』
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水雨
【属性】水
【タイプ】攻撃
【発動対象】指定
【効果】指定範囲内に雨を降らせる。雨量は調節可能。指定対象を濡れないようにすることもできる。
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魔法の出来を確認すると、早速唱える。
『水雨』
唱えると、たちまちバケツをひっくり返したような雨が私の周りで降り始めた。私も、雨の中にいるけど、ちゃんと濡れないように創ったから大丈夫だった。
雨はまたたく間に火を消していく。
消火する間にも延焼は進んでいたけど、消火するスピードの方が早かった。
結局、さらに半径10メートルほどを焼いて、火は収まった。
私は、焼け焦げた茂みを見渡して、溜息をついた。
まさかこんなに燃えるとは思わなかった。
「火嵐」の火を消火した私は、そのまま飛行魔法で茂み地帯を抜けた。
空中は障害物がないので、2、3分で抜けられた。
茂み地帯の次は、砂漠が広がっていた。
ただ、本当の砂漠と違って暑くない。同じなのは見た目だけだった。
ここにはどんなスライムがいるのかな?
「探索」を使って調べてみると、ここにいるのはサンドスライムらしい。
しかも、漏れなく砂の下に埋まっている。
これも、1匹ずつ相手をするのは面倒そうだ。
私は、また上空から魔法で一掃することにした。
今度は、さっきの反省を活かし、燃やすのはやめて凍らせることにした。
『創造・凍結』
◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆
凍結
【属性】水
【タイプ】攻撃
【発動対象】指定
【効果】指定対象または指定範囲内の対象を凍結させる。凍結強度や凍結時間は調節可能。
◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆
凍結魔法を創り、私を中心とした半径100メートルほどの地面を凍らせる。
一瞬にして、砂漠は氷に覆われた。
ちゃんと倒せているか確認するため、ステータスを開いたけど、まだ反映されていない。
やっぱり階段に行かないとダメかな?
討伐確認は諦めて、私は、凍結魔法を解除し、元の砂の地面に戻してから、階段を目指して飛んだ。
移動は、歩くより飛んだ方が圧倒的に楽だった。
その後、第3層に向かう階段でステータスを確認したら、プラントスライムは、合計で121匹、サンドスライムは、173匹倒していた。
どちらも魔法の一撃でこの討伐数……。
……少しやりすぎたかもしれない。
2019/11/30 「防御力強化」と「植物制御」の説明を追加しました。
2019/12/9 「防御力強化」を「防御力強化Ⅰ」に名称と内容を変更しました。