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17.ぼっち少女の初依頼報告3


 ……いきなり話が飛んでついていけない。そういうわけでって、何がそういうわけなの?

 私は、急いで「説明」と書いた。

 すると、ハティさんは、不思議そうな顔をして言った。


「え?ちゃんと説明したと思うけれど」


 本気でわからないという顔をしている。この人、もしかして天然?

 私は、ハティさんに聞くのは諦めて、アニタさんを見る。

 アニタさんは、ハティさんと違って、わかるように説明してくれた。


「えっと、トモリさんはEランクとしては破格の強さを持っていらっしゃるので、Dランクに上げても大丈夫ということです」


 強いの?私?

 イマイチ実感がないけど、二人が言うならそうなんだろう。

 でも、確か、ランクを上げるには、条件とか必要なんじゃなかったっけ?

 私は、「ランクアップ 条件」と書いてアニタさんに見せた。


「確かにランクアップには、規定の条件を満たす必要がありますが、特例として、Cランク未満はギルマス権限でランクアップが可能なんですよ。強い冒険者がいつまでも低ランクにいると困ることもありますから」


 なるほど。そこはいろいろと複雑な事情があるんだね。

 ランクアップについては理解したので、続いて迷宮について聞く。


「迷宮は、特定の魔物しか出てこない、数階建ての建造物のことです。現在見つかっている迷宮のほとんどは、地下に向かって降りていく地下型ですが、稀に地上から上に向かって上っていく地上型の迷宮もあります」


 いわゆるダンジョンだね。特定の魔物しか出てこないってことは、ゲームみたいに、階層が増えたり、遠くの街に行くと強くなったりするのかな?


「迷宮は、各街に3つか4つあります。また、街毎に存在する迷宮の難易度に偏りがあります。ここフィルリアは、魔物の中でも最弱と呼ばれるスライムやゴブリン、ウルフの迷宮があります。レベルが低い者でも挑める迷宮が揃っていることから、この街は『始まりの街』とも呼ばれているんですよ」


 へぇ。ここは初心者用の街なんだ。最初にここに来れてラッキーだったな。いきなり難しいところだと終わってたかもしれないし。 

 でも、アニタさんの話からすると、「特定の魔物」って、1つの迷宮につき1種類の魔物しか出ないってこと?

 あ、でも、ウォータースライムやアースウルフの中でも、AとかBとか分かれてたし、種族は1つでもタイプは豊富なのかな?プラントウルフもあるって親方が言ってたし。


「それから、迷宮を攻略すると、攻略人数に応じた攻略特典2つが得られます。1つ目は、全員が得られる迷宮制覇の称号です。称号の効果でステータスに補正がかかることもあります。2つ目は、一人ひとり異なり、スキルやアイテム、ステータス値の場合がほとんどですが、稀にギフトを授かることもあるそうです。それから、特典の内容や効果は2つとも攻略人数に反比例しているので、少人数で攻略すれば高い効果の特典が得られますが、反対に、大人数で攻略すれば、それなりのものしか得られませんので注意してください」


 攻略特典で強くなれるなんて、迷宮ってすごくおいしい場所なんだね!

 少人数で攻略すれば、良い特典がもらえるみたいだし、できるだけひとりで頑張ってみようかな。

 ……誰かとパーティーを組むつもりなんてないし、そもそもこんな私と組んでくれる人なんていないだろうから。

 私は、相づちを打ちながら、アニタさんの話を聞く。アニタさんは、私の反応を見て話を進めた。


「ただ、迷宮攻略にはデメリットもあります。迷宮内の魔物は、討伐依頼の対象としてカウントされないうえに、数十匹以上が一斉に襲ってくることがあり、対処できなくて負傷する人が後を絶ちません。また、奥まで潜ればその分だけ戻ってこなければいけませんので、負傷した場合の死亡率が高いのです」

 

 迷宮内は、外よりも危険らしい。今日のアースウルフの群れに襲われるような事態が、よく起こるようだ。行くときは魔物の位置に気をつけておこう。

 それから、階層をショートカットできるようなものはないみたいだから、迷宮に行くのは、転移系の魔法を創ってからにしよう。

 私は、アニタさんの話から、迷宮に行くときの注意点を考えた。

 せっかくいろいろ教えてくれてるんだから、活用しないとね。

 私がそんなことを考えている間にも、アニタさんは話を続ける。


「迷宮の説明はこれで以上ですが、最後にひとつ、迷宮にまつわる言い伝えをお教えしましょう」


 迷宮にまつわる言い伝え?なんだろう?

 私は、妙にその言い伝えの内容が気になったので、考えるのをやめてアニタさんをじっと見る。

 アニタさんは、そんな私を見て、にっこり笑うと言った。


「世界中に無数にある迷宮をすべて制覇した者は、ひとつだけですが、どんな願いも叶うそうなんです」


 ……思ったよりも普通の言い伝えだった。でも、なぜか気になる。

 私は、紙に「根拠は」と書いてアニタさんに見せた。


「ありますよ。確か、千年くらい前に迷宮全制覇を達成した人が、ある日突然、神になったそうです。そして、その神は、今でもこの世界のどこかに存在していて、私たちを見守っているとかいないとか」


 人が神に?なんか、一気に胡散臭くなってきたなぁ。

 でも、願いが叶うなんて言われたら、頑張ってみたくなるのが人の心ってものよね。

 私は、強くなるためにも、迷宮をできるだけ制覇していこうと心に決めた。

 

「これで説明は以上ですが、何かご質問はございますか?」





 その後、私は、話の中で気になったことをアニタさんに聞いた。 

 まず、迷宮はどこにあるのか。これについては、アニタさんが地図を書いて説明してくれた。とてもわかりやすかった。さすがアニタさん!

 それから、ギフトについて。ギフトというのは、異能とほぼ同じものらしい。異能とギフトの違いは、獲得時期だけ。異能が生まれつきのものであるのに対し、ギフトは生後に授かるものをいうそうだ。

 あとは、迷宮内で討伐した魔物は、持ち帰って売れるのか。これは、迷宮の外の魔物と同様に売れるらしい。つまり、素材が売れる魔物のいる迷宮に潜っていれば、依頼を受けなくてもお金に困ることはないということだ。



 そんなふうに質問をして、知りたいことが一通りわかると、私とアニタさんはギルマスの部屋をあとにした。

 途中からハティさんを除け者にしてしまったけど、特に気にした様子はなかったので助かった。


 その後、1階の受付カウンターに戻って、アニタさんに依頼達成処理をしてもらい、報酬を受け取った。

 報酬は、ポー草の採取が1回銅貨2枚と品質ボーナスが全部で銅貨20枚、ポー草モドキの採取が1回銅貨3枚×2回で銅貨6枚と品質ボーナスが全部で銅貨35枚と銭貨6枚、アースウルフの討伐が1回銅貨10枚×7回で銅貨70枚で、合計銅貨133枚と銭貨6枚だった。



 私は、アニタさんからDランクの水色のギルドカードを受け取り、ギルドを出ると、そのまま隣の買取所の解体部屋に向かい、余ったポー草とポー草モドキと、アースウルフを売った。

 中に入ると、昨日と同じで親方が対応してくれた。

 私は、ハティさんの話を思い出して、目立たないようにするために、アースウルフの売却は5匹でやめておいた。

 残りはタイミングを見て少しずつ出していこうと思う。


 状態の良いアースウルフに大喜びした親方は、昨日と同じ1匹銅貨50枚で買い取ってくれた。5匹で銅貨250枚。

 ポー草とポー草モドキは、合わせて銭貨22枚で、意外と少なかった。依頼ボーナスの方が高かったので高品質のものはほとんどなかったからかもしれない。

 私は、親方から銅貨252枚と、銭貨2枚をもらった。

 銭貨は10枚で銅貨1枚らしい。


 結局、今日の収入は、全部で銀貨3枚、銅貨85枚、銭貨8枚だった。

 最初に持っていた額のよりも増えた。嬉しいな。




2019/11/27 報酬額と売却額を変更しました。

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