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145.ぼっち少女と真相3


 アドリアナが鑑定を受け入れると言うと、宰相さんはすぐに動いた。

 鍵の掛かった棚から重厚な見た目の箱を取り出し、机に置く。

 国王は引き出しから鍵を取り出すと、机に置かれた箱の鍵穴に鍵を挿した。

 ガチャリ、と音がして鍵が開く。

 宰相さんがそっと蓋を開けると、箱の中にはクッションのような布の上に置かれた、水晶玉が入っていた。


「鑑定玉……」


 アドリアナが愕然とした顔で呟く。そしてすぐに、国王と宰相を見て、最後に第3王女を睨みつけた。


「私を、嵌めたわね……!」


  リアと同じ結論に、アドリアナも辿り着いたようだ。怒りの形相で王女たちを睨みつける。

 でも、睨まれた方は、そんなことどこ吹く風で、淡々と準備を進めていた。

 言葉では意味がないと悟ったアドリアナは、実力行使に出ようとしたのか、逃げようとしたのかわからないけど、立ち上がろうとした。

 でも、すぐにバランスを崩して床に倒れてしまった。後ろ手に縛られているため手を着けず、顔を床に打ち付けてしまう。


「う……痛い……」

「勝手に動こうとするからですわ」


 痛みにもだえているアドリアナに、王女が冷めた目を向ける。その手はアドリアナを縛る縄をしっかりと握っている。握り方も、手から擦り抜けてしまわないように、手首に数回巻いてから握っているので、簡単には逃してくれないだろう。

 たとえ転んでいなくても、結果は同じだったと思う。

 

「逃げようとした、ということは、何かやましいところがある、ということかしら」


 カツン、と靴を鳴らして、王女がアドリアナに一歩近づく。


「鑑定玉を見て動いた、ということは、ステータスを見られたくない、ということでしょう?」


 王女がまた一歩、アドリアナに近づく。もともと近かった二人の距離は、あと一歩のところまで近づいた。

 王女は、足元に転がるアドリアナを冷めた目で見下ろした。

 アドリアナはなんとか体を起こそうともがくけど、縛られている上に、王女が近づくたびに縄を短く持ち直しているため、思うように動けず、起き上がれずにいた。

 アドリアナは、なんとか顔を王女に向けると、強気に言った。


「ステータスを見られたくないと思うのは、普通のことでしょう!」

「ええ。ですが、あなたは先程、鑑定を受け入れるとおっしゃいました。それなのに拒否しようとしたのは、何か理由があるからですよね?」

「それは……」


 王女の詰問に、アドリアナは答えられない。

 本当のことを言ったら終わり。でも、中途半端な嘘はバレる可能性が高いし、バレたら余計に状況が悪くなる。

 どう転んでも、アドリアナは終わりだ。

 これが誰の策なのかはわからないけど、国王たちとは敵対しないほうが良さそう。

 

「理由は?素直に答えてくだされば、悪いようにはいたしませんわ」


 そう言って王女はアドリアナの隣にしゃがみこんだ。


「ねえ、アドリアナさん。私たちは真実が知りたいだけなのです。もしあなたが素直に話してくだされば、私たちはあなたの罪を公にはしないとお約束します」

「公に、しない……?それはどういう……?」


 王女の言葉に、アドリアナは戸惑った様子を見せた。

 そんなアドリアナに、王女は微笑んで言った。


「言葉通りですわ。今、あなたの罪を知るのは、この場にいる者だけ。他に知る者はいません。ですから、私たちが黙っていれば、あなたの罪が公になることはないのです」

「ですが、今日の件は……?あの場には、他の令嬢もいましたが」

「そちらはどうとでもできますわ。例えば、あなたは真犯人によって、犯人にさせられた被害者だ、とでも発表すれば、皆納得するでしょう。真犯人とその手口については、警備の関係上公表できない、とすれば問題はありません。そもそも真犯人なんて最初からおりませんし、民もまさか王族の自作自演だとは思いもしないでしょうね」


 王女はそこで一旦言葉を切り、迷うアドリアナの目を真っ直ぐに見た。


「どうなさいますか?アドリアナさん」


 アドリアナは、端から見ても迷っているのがわかるほどなのに、口を開きはしなかった。

 静かなまま、1分、2分……と、時間だけが過ぎていく。

 5分くらい経ったところで、王女が立ち上がって言った。


「もし、あなたがここで話すつもりがない、というのでしたら、それで構いません。私たちは、通常の方法で、あなたを裁きます。投獄して、尋問官に尋問させ、裁判をして……王族の殺害未遂ですから、極刑は免れないでしょうね。

 跡取りであるあなたが重罪を犯したとなれば、両親も責任を問われるでしょう。父親は領主を辞めざるを得ないでしょうし、母親も、しばらくは社交界には出られないでしょうね……。あとは、領民からの非難もあるでしょう。税収は減り、暮らしは貧しくなり……。

 まあ、他にもいろいろあるでしょうが、今思いつくのはこんなところでしょうか。さて、どうします?」


 王女の言葉を聞いて、アドリアナの顔は青くなった。

 まあ、極刑だなんて言われたら、普通はそうなるよね。


「今話したら、罪に問わない、ということですか?」


 アドリアナの声は少し震えていた。

 王女は再びしゃがみこみ、優しい声で言った。


「ええ。私の殺害未遂については、あなたは何もしていませんから、処罰を受けることはありませんわ」

「きょ、極刑、というのも……?」

「ええ。ありませんわ」


 それを聞いてアドリアナは、ほっとしたように息を吐いた。

 それから、一度目を閉じ、開くと、観念して言った。


「わかりました。すべて、お話します」

「嘘ではありませんわね?」

「はい。もう、逃げません」


 嘘じゃない、とアドリアナは言った。さっき逃げようとしたから、信用はされてないけど、言質は取った。

 王女も同じことを思ったようだ。


「そうですか。では、もし逃げたり、嘘をついた場合は、相応の対処をさせていただきますから、そのつもりでいてくださいね」

「は、はい」


 アドリアナが返事をすると、王女はアドリアナに手を貸して立たせた。

 いつの間にか宰相さんが用意していた椅子にアドリアナを座らせる。

 縄を宰相に持たせ、自分は応接セットの椅子に座ると、アドリアナに話すよう促した。

 王女に促され、アドリアナはぽつりぽつりと話し始めた。



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