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144.ぼっち少女と真相2


 アドリアナは、パーティーでの話の流れで王女からお茶会に誘われたこと、招待を受けてからは、ドレスやお菓子の準備に駆け回ったことを話した。

 特に、お菓子については、王都の有名なお菓子屋さんだと強調した。朝、屋敷を出て、店に行って、何人くらいが並んでいて、どれくらい待ったのか、並んでいた人の特徴まで話していた。買ったあとは、ずっと手元に置いてあり、王宮で給仕係に渡すまで、目を離していないと主張した。


 でも、それだと、毒を入れられるのはアドリアナしかいないってことになるんじゃない?

 王族と接点のないお菓子屋さんが毒を入れる意味なんてないだろう。見つかったときのリスクが高すぎるから、ありえない。

 給仕係も、毒見役に殺意でも抱いていない限り、ありえないだろう。まあ、どんな人物だったのか私にはわからないけど、王女の給仕係を務める人物だ。恨みで毒を入れるような人じゃないだろう。というか、そういう人は雇わないと思う。


 アドリアナが詳しく説明すればするほど、犯人として考えられるのはアドリアナしかいなくなる。

 無罪を主張しているはずが、有罪を認める結果になっている。

 アドリアナはどう締め括るんだろう。

 話の行方を期待して聞いていると、アドリアナはこう締め括った。


「ですから、私の持ってきたケーキに毒は入っておりませんし、毒を盛ってなんかいません!」


 ……つまり、濡衣だということらしい。

 アドリアナは、自分が犯人というのは何かの間違いだ、と被害者のように振る舞っている。

 でも、アドリアナの本性?を知っている私からすれば、胡散臭いことこの上ない。

 リアへの仕打ちは忘れてないよ。

 ちらりとリアを見ると、まだ困惑した顔で、アドリアナを見つめていた。


「だが、そなたの持ってきたケーキを食べて、毒見役は倒れたのだ。そなたが犯人ではないというなら、このことはどう説明する?」


 アドリアナの話を聞いて、国王が尋ねる。

 アドリアナは、必死の表情で訴えた。


「それは何かの間違いです!私の持ってきたケーキに毒など入っておりません!」

「……口ではなんとでも言えますわ」


 今まで黙って話を聞いていた王女が、ポツリと呟く。

 アドリアナはすぐに反論した。


「それなら、ケーキを食べて見せましょう!そうすれば、毒入りかどうかわかりますよね?」


 国王は少し考える素振りを見せたが、すぐに首を横に振った。


「確かに、食べればわかるかもしれん。だが、本当に毒が入っていないとは限らない。アドリアナ嬢が毒耐性を持っていれば、毒を食しても問題はないだろう」


 なるほど。確かに、耐性があれば毒にやられることはない。アドリアナが強気なのは、そういうことなのかもしれない。

 前に見たとき、アドリアナに毒耐性はなかったけど、最近取得したのかもしれない。


「私には毒耐性はありません!」


 アドリアナはすぐに否定した。

 状況的には否定するしかなかったかもしれないけど、耐性の有無を自ら明かすのは良くないと思う。

 これで国王たちは、アドリアナに毒が効くことを知ってしまったのだから。

 あ、でも、アドリアナが嘘を言っていると思われる可能性はあるんだよね。毒耐性が無いって証明されたわけじゃないんだから。

 私が気がついたことは、国王たちも気づいたようだ。


「それこそ、口ではなんとでも言えるな。鑑定スキルの使用を受け入れるなら、今回の件を不問にしよう。もちろん、結果次第ではあるがな」


 国王はアドリアナをまっすぐ見て言った。

 鑑定スキルを使うってことは、アドリアナのステータスを見るってことかな。

 他の鑑定スキルがどういうものかはわからないけど、アドリアナのステータスを見れば、あのスキルのことが知れるだろう。

 そうなれば、アドリアナがリアにしてきたことも、明らかになるかもしれない。


『陛下の狙いは、アナのステータスチェックのようですね』


 繋げっぱなしにしていた念話から、リアの声が聞こえた。

 リアを見ると、いつの間にか立ち直っていたようで、いつもと同じ……いや、少し暗い顔だけど、さっきほどひどくはない顔をしていた。


『リアもそう思うんだ?』

『はい。私たちをここに呼んだことや、陛下御自ら尋問しているところを見るに、アナが捕まったのは、陛下が考えられたことによるものでしょう』


 つまり、アドリアナは、自分を捕らえるための国王の計画にまんまと嵌まってしまったわけか。

 となると、毒云々は自作自演の可能性が高い。毒見役もグルか。


『ステータスを見れば、アナが利用されただけの被害者なのか、それとも自分から悪事を企んだ加害者なのか、判別できるかもしれませんから』

『ステータスを見るだけで、そこまでわかるの?』

『はい。特に称号欄は、その人の性格や、今までの経験などが如実に現れますから』


 へぇ。そういう判断もできるんだ。

 確かに、称号は条件を満たすと獲得する。私の称号欄には、迷宮制覇記録があるし、召喚者だってこともわかってしまう。

 同じように、アドリアナの称号欄を見れば、アドリアナが今まで何をしてきたか、明らかになるってことか。

 前にアドリアナのステータスを見たときは、バレないように短時間で済ませようって思ってたから、スキル欄しか見ていなかった。称号欄も見ていれば、何か変わっていたかもしれない。

  ……まあ、今さら後悔したところで何もならないけど。


『それにしても、さすが一国の王、といいましょうか。見事にアナの逃げ道を塞いできましたね』


 リアが感心したように言う。顔はアドリアナに向けられたままだから、私からでは横顔しか見えないけど、リアらしくない顔をしていた。

 予想外のことが起こりすぎて、少しおかしくなっているように思える。

 暴走するようなら、強制退場させるのもアリかな?

 リアの言動に注意しよう。

 リアは私の返答を期待していなかったのか、言葉を続ける。


『毒殺未遂の犯人にされたくなければ、ステータス鑑定を受け入れるしかありませんが、ステータスを見られれば、自分の悪事が露呈してしまう。陛下は不問にするのは結果次第と仰っていましたから、アナに逃げ道はありませんね』


 リアはアドリアナが有罪になるのを確信しているようだ。


『リアは、アドリアナのステータスを見たことがあるの?』


 どうしても気になって、聞いてみた。

 リアの持つ「神眼ゴッド・アイ」の異能なら、ステータスを見ることはできるかもしれない。

 でも、もしリアがアドリアナの力を知っていたのなら、いろいろと疑問も出てくる。

 いつから知っていたのか。

 もし、ずっと前から知っていたのなら、どうしてされるがままになっていたのか。

 私がそんな疑問を持ったことに気付いたのか、リアは私の方を向いて、苦笑いした。


『……すいません。理由はあとでちゃんとお話します……』

『うん』


 様子を見るに、随分と前から知っていたようだ。

 リアのことだから、何か理由があったんだろうことはわかるし、今はそれよりもアドリアナの方が気になる。

 私はアドリアナの方に向き直った。

 横目でリアを見ると、リアもアドリアナを見ていた。


 アドリアナは、黙って俯いていて、表情はよく見えない。

 でも、後ろ手に縛られた手は、強く握られていた。

 必死に打開策を考えているのだろう。

 その様子を国王も、王女も、黙って見ていた。


 やがて、5分くらい経った頃、アドリアナがようやく顔を上げ、口を開いた。


「……鑑定を、受け入れます」


 その顔は、すごく悔しそうだった。




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