表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/172

142.ぼっち少女と魔法屋2


『あ、あの……お店、大丈夫……ですか?』


 本題に入る前に、気になったことを聞いてみた。お店閉めてたけど、いいのかな?

 それにしても……やっぱり、初対面の人と会話するのは苦手だ……。


「ええ、大丈夫ですよ。実は、この店は趣味でやっているものでね。利益なんてどうでもいいんですよ。それに、もともと客は常連ばかりですから、臨時休業にも慣れているでしょうし、問題はありませんよ」


 ……なんか、すごいことをサラッと言ったような気がする。利益度外視で、普段から臨時休業してる店って、よくやっていけてるなぁ。

 まあ、店を閉めても大丈夫と本人が言っているので、心配はしなくていいよね。

 あ、私が後で何か買っていけば、少しは足しになるかな。お金はあるし、魔法書を少し買っていこう。


「説明を始めてもよろしいですか?」


 リアムさんが改めて聞いてきたので、頷いた。


「まず、あなたの現在の職業は、魔術師ソーサラーでよろしいですか?」

『え!なんで、知って……』


 私、職業言ってないのに、どうしてわかったんだろう?

 ステータスが見えるのかな?もしかして、私が他の職業にもなってるってバレてる?どうしよう?なんて説明すれば……。

 私が不安に思っていると、リアムさんはハッキリと言った。


「勘です」

『……勘、ですか?』

「はい、勘です。まあ、勘、というか、推測という方が正しいかもしれませんね。まず、あなたが武器をお持ちでなく、聖職者といった感じでもないことから、魔法系だと判断しました。魔法屋に来ていることからも明らかでしょう。それから、転職後の職業について知りたがっているところから、転職前、あるいは転職して間もないと推測できます。あとは、魔法使い(ウィザード)か、魔術師ソーサラーか、二択のうちひとつを選ぶだけです。今回は、たまたま当たったということです」


 推測って……。話を聞く限り、そんなに難しいものじゃなさそう。ヒントはたくさんあったみたいだし、リアムさんの話にヘンなところはないように思う。ここは、とりあえず信じてもいいかな?

 私がひとりで納得している間にも、リアムさんは話を続ける。


「すでに転職されている、ということは、魔術師ソーサラーがどのような職業か、ある程度はご存知ということでしょう。あなたの認識を聞いてもよろしいですか?」

『えっと、魔術師ソーサラーは、戦闘魔法が得意だと……』


 いきなり水を向けられて驚きつつ、なんとか答える。

 私の答えに、リアムさんは頷いた。


「そうですね。魔術師ソーサラーは、魔法系職業の中では、一番戦闘系の魔法に優れています。他の職業に比べて、汎用性が高く、様々な場面で役に立ちます。ただ、他の職業の方が優れているところももちろんありますから、万能、というわけではありませんよ」


 リアムさんの言葉に頷く。

 確かに、魔物を操ったりするのは召喚師サモナー調教師テイマー、占いは占い師(フォーチュンテラー)の方が優れているだろう。でなければ、わざわざ分岐する必要がないし。

 普通は、そういった専門的な部分を捨てて、汎用性の高い魔術師ソーサラーを選ぶんだろうけど、私は違う。他の職業にも転職しているから、それこそ万能なんじゃないかな。まあ、物理系はからっきしだけど。

 私の反応を見て、リアムさんは話を続ける。


魔術師ソーサラーの転職ボーナスは、魔法系ステータスの上昇。特に、魔力と知力の上昇幅が大きくなります。平均は1.5倍くらいですね。人によっては、倍近くになります。これによって、より強力な魔法を使えるようになるのです」


 平均1.5倍で、高くても2倍……。3倍はやっぱり異常だ。早めに気付いていて良かったよ。


魔術師ソーサラーの場合、転職ボーナスは基本的にステータスアップのみですが、稀にスキルを獲得することがあります。トモリさんは、スキルは獲得しましたか?」


 私は首を横に振った。特にそういうのはなかったから、ここに来ているんだよね。


「そうですか。では、今日の目的は、魔術師ソーサラー用の魔法を知ることですか?」

『あ、はい』

「他には、何かありますか?」

『……えっと、他の魔法系の職業についても、知りたい、です。その、何か使える魔法とかないかなって、思って……』


 変に思われないように気をつけていたら、逆に変になってしまった。大丈夫かな……。


「そうですね。確かに、他の職業の魔法でも、全く使えないというわけではありませんし、その職業の者と戦闘になったとき、相手の魔法を知っていると戦闘を有利に進めやすくなります。知識はあるに越したことはありません。知りたいというのであればお教えしましょう」

『ありがとう、ございます』


 好意的に受け取ってくれたみたいで良かった。私はほっとした。



◇◆◇◆◇◆◇



 その後、日が暮れるまで、水属性の魔法を中心に、魔術師ソーサラーが使う魔法を教わった。

 私が使う魔法は、オリジナルばかりだったから、これで私も普通の人のフリができそう!

 ついでに、召喚師サモナーが使う魔物召喚魔法や、調教師テイマーが使う魔物調教魔法、占い師(フォーチュンテラー)が使う占術魔法の知識も教えてもらった。占術魔法は、使いどころがイマイチよくわからなかったので、しばらく使うことはなさそう。どちらかというと、趣味の類だね。


 今店の中ということもあり、話だけで終わった。屋内で実際に魔法を使うわけにはいかないから、当然ではあるけど。

 リアムさんは、外で実際に使いながら教えると言ってくれたけど、時間も遅いし、まずは魔法書を読んでおきたかったから、自分でやってわからなかったら教えてもらうことにした。

 それに、あんまり王都やその周辺にいたくない。いつアドリアナや、あの不審者に遭遇するかわからないし、コーディは微妙な立場だ。変なのに絡まれないように、今は目立たないようにしないとね。


 リアムさんは、お土産に魔法書をたくさんくれた。水属性の魔法書はもちろん、他の属性の魔法書もくれた。知っていて損はないし、魔術師ソーサラーになると2属性以上の魔法が使えるようになることもあるから、と。

 それを聞いて、私は、もう一つ属性が使えるようになった、ということにしてもいいかも、と思った。正直、水属性だけだと困るときもあったから、火属性とか使えることにしておくと、戦うときにいいかもしれない。

 他の職業の魔法書ももらい、私とコーディは、魔法書がたくさん入った袋を両手に持って、魔法屋をあとにした。



◇◆◇◆◇◆◇



 次の日。

 私は早速、カージアの街迷宮に行き、水属性魔法の魔法書に載っている魔法を片っ端から使っていった。

 もちろん、ディーネのサポート付きだ。

 精霊語の呪文をすべて覚えることは不可能だし、毎回ディーネに教えてもらうのは効率が悪すぎるので、何回か呪文を唱えて魔法を使ったら、その発動効果を元に、「想像創造クリエイト・イマジネーション」で魔法を創る、ということを繰り返した。


 これか思ったより魔力と集中力を消費して、一日で魔法書一つが限度だった。

 それに、水属性の魔法書は、前に習得した光属性の魔法書より倍くらい分厚くて、載っている魔法も多い。他の魔法書も比べてみると、属性によって魔法の種類に差があるようだ。

  すべて習得するには時間がかかりそうだけど、せっかくもらったんだから、使えるようになっておきたい。

 私は時間の許す限り、魔法を習得することにした。



 一週間後、水属性と火属性の魔法書の魔法の習得が一通り終わった頃、ジェミナさん経由で国王から緊急招集がかかった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ