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129.ぼっち少女とスリードレイク家1


 リアとコーディが仲直りしたところで本題に入ることにする。


「ところで、コーディ。これからどうするつもりだったの?」

「えーと……」


 リアに問われて、目を逸らすコーディ。

 リアが大きく溜息をついた。


「はあ……。やっぱり何も考えてなかったのね。勢いで飛び出したはいいけど、どうしようか迷ってたってところかな?」

「ち、違うよ!家に帰ってからのことはちゃんと考えてあるよ!ただ、どうやって帰ろうかなって思ってただけ!ほら、ここって王都から離れてるから」

「ああ……そうね。普通の方法じゃ、王都に行くのも一苦労だものね」


 確かにそうだ。ここは、王都からかなり離れている。

 空(高い木くらいの高さ)から辛うじて王都から見えるくらいなので、歩いていくと丸1日は掛かりそうだ。

 しかも、人が来ない場所を選んだので、街道からも遠いし、当然馬車も通らない。

 気軽に行き来するのは極めて困難なのだ。

 実際、家ができてからハティさんたちは一度もここに来ていない。会うのは王都でだけだ。

 コーディはどうにかして早く王都に行けないか考えたけど、結局難しいという結論に至ったということだろう。


「王都に行って、そこから馬車に乗ってタルフィアの街まで帰る予定だったんだ。うまく行けば、10日で着くはずだよ」

『10日って、急いでいるんじゃないの?』

「そうだけど、普通に行くならこれが最短なんだ。タルフィアの街は王都からかなり離れてるから。トモリの飛行魔法でも数日は掛かるんじゃないかな?何時間もぶっ続けで魔法を使うのは無理だし」

『でも、馬車よりは早いよ』


 そう言って私は、コーディの返事も聞かずに「飛翔フライ」を発動させる。

 木々よりも高いところまで上昇したところで、コーディに聞く。


『タルフィアの街はどの方向?』

「ええっと…………あっち!」

『了解!』


 コーディが指差した方向に向かって飛ぶ。

 コーディとリアのために、初めは少しゆっくりめに飛び、だんだんスピードを上げていった。



◇◆◇◆◇◆◇



 途中で何度か魔力回復のために休憩しながら飛ぶこと数時間。タルフィアの街に着いたのは、夜も更け、日付が変わろうかという時間だった。

 出発したのがだいたい午後4時くらいだったから、8時間近く掛かったことになる。

 まあ、馬車で10日の距離だ。今日中に着いただけ良いだろう。


 こんな夜中では当然門は閉まっているため、飛んだまま街に入る。「隠形ハイドフォーム」で姿を隠しているから、見つかる心配はない。

 思いっきり不法侵入だけど、今回はコーディがいるし、何とかなるだろう。


 そのままスリードレイク家へ向かう。

 街の中で、夜中なのに明るい場所があった。どうやら、領主邸の周りに集まった人たちが灯している明かりのようだ。

 近づくと、時折怒号が聞こえてくる。これはヤバそうだ。

 私はコーディの指示に従って、外からは見えない中庭に降り立った。

 着地すると同時に、「隠形ハイドフォーム」を解く。

 コーディは、中庭から邸内に入れる出入口から邸の中に入って行く。

 私とリアも、コーディに続いて中に入った。


 最後に入ったリアがドアを閉めると、コーディは明かりのついていない廊下を走り出した。

 外の明かりで多少は明るいから、壁にぶつかることはない。

 私とリアも小走りでついていった。




 コーディは、両開きの扉の前で立ち止まった。

 息を整えることもなく、ドアを開けて中に入って行く。


「ただいま!みんな、大丈夫!?」

「コーディ!?」

「コーデリア!?どうしてここに?王都にいたはずじゃ……」


 部屋の中にいた人たちが、コーディを見て驚く。

 部屋にいるのは、家族と使用人かな?

 全員、突然入ってきたコーディを見て驚き、続いて入ってきた私とリアを見て警戒する。

 ……まあ、そうなるよね。


「コーデリア。そちらは?」


 仕立ての良い服を着て、高そうな椅子に座っている男性が、コーディに聞く。この人は、どうみても領主だな。

私から見て、領主さんの右には、30代くらいの品の良い女性が、左にはコーディとよく似た、少し年上の女性が立っていた。


「父さん。この人たちは、あたしの友だち。王都でいろいろ協力してくれたんだ。ここに来るのも手伝ってくれたんだよ」

「お初にお目にかかります。アレナリアと申します。こちらはトモリです」


 私はリアの紹介に合わせて挨拶した。

 リアもだんだんフォローがうまくなってきたなぁ、と場違いなことを思った。

 私たちが挨拶すると、領主さんが自分と家族を紹介してくれた。


「私はシリル・トゥ・スリードレイクだ。こっちは妻のジェミナ。それから、長女のチェルシーだ。娘が世話になったようだ。わざわざ来てくれてありがとう」

「いえ。友人が困っていれば、助けるのは当然のことですから」


 リアが返答すると、シリルさんは少し驚いた顔をした。


「ああ。確かにその通りだが、この状況で平然とそう言ってのけるとは……あなたは随分逞しい方のようだ」

「あ、えっと、お褒めいただき光栄です……」


 まさか褒められるとは思ってなかったリアが照れながらお礼を言う。


「本当に。このお転婆娘には勿体ないくらいのいい子だわ。アレナリアさん。うちにいらっしゃる間は、自分の家だと……いえ、どうぞゆっくりしていらして。私たちはお二方を歓迎するわ」


 ジェミナさんが歓迎の言葉を述べる。途中で言葉を変えたのは、多分、リアが誰だか気付いているからだろう。

 リアは姓を名乗らなかったけど、名前や容姿から特定するのは難しくない。変装もしていないし。

 それに、よく見ると、シリルさんもジェミナさんもチェルシーさんも、リアのことをかわいそうな子を見る目で見ている。

 同情、憐憫。そういった類いの感情が、ほんの少し透けて見える。

 コーディは学園時代によくリアを助けていたって言ってたから、リアの事情もある程度知っていそうだ。

 それなら、まあ、大丈夫かな。

 私のこともわかってそうだし、いきなりオネインザ家に引き渡されたりはしないだろう。

 もちろん、演技ということも考えられるけど、少なくとも、自分の家の問題が片付くまでは何もしてこないだろう。

 私は、リアがスリードレイク家の人たちと話している横でそんなことを考えていた。

 もしもの時は、リアを連れて逃げられるようにしておかないとね。


 

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