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125.ぼっち少女と相談3


「あたしがこのことを知ったのは、今から一週間くらい前。昔からの知り合いが、教えてくれたの。スリードレイク家が危険だって」

「その知り合いって、信用できるの?」

「うん。小さい頃から家ぐるみの付き合い。あたしの5つ年上で、お兄ちゃんみたいな人なんだ。今は次期当主としていろいろ頑張ってるみたい」


 5つ年上ってことは、今20歳くらい?大人で親しい人なら、信用できるのかな?うーん。会ったことない人のことはわかんないなぁ。

 リアを見ると、微妙な顔をしていたので、私と同じことを思っているに違いないと思った。


「それで、危険って、何?」


 リアが続きを聞く。その情報源のことは置いておくことにしたらしい。

 私も、情報源より続きの方が気になるので助かる。


「危険って言うのはね、誰かが、うちの評判を落とそうとしてるってことなんだ。私も学園時代の友人とかに聞いてみたら、実際に良くない噂が流れてた。スリードレイク家は、関税を横領してる、とか、商品を盗んでる、とか、亜人と繋がって国家のテンプクを企んでる、とか」

「それは、確かに良くない噂だね。国家の転覆とか、憲兵隊の耳に入ったら、たとえ根も葉もない噂話だったとしても、ただでは済まない」

「うん。父さんたちもこの噂聞いたみたいで、今火消しにかかってる。姉さんも、母さんも必死になって動いてる。だから、あたしも何かできないかなって思って、情報収集してたんだ」


 噂って怖いね。たかが噂。されど噂。軽視するわけには行かないと。

 私も噂には苦労したからよくわかる。


「それで、何か情報は集まったの?」

「うん。ほら、あたし、人脈はあるからさ、いろんな人から話を聞けたんだ。それで、黒幕について、結構確度の高い情報があったんだ」

「えっ!もう黒幕までわかったの?」

「うん」

「誰?」

「えーと……」


 コーデリアはそこで口を噤んでしまった。

 リアが不思議そうに尋ねる。


「どうしたの?コーディ。黒幕は、誰なの?」

「えー、えっとー」

「うん」

「そのー」

「うん」

「あのね」

「……コーディ!もったいぶってないで早く言ってよ!」


 なかなか言おうとしないコーデリアに、とうとうしびれを切らしたリアが怒る。

 それでもコーデリアは渋っていたけど、リアがぷんぷん怒っているのを見て、ようやく聞こえるような小さな声で呟いた。


「アドリアナ」

「えっ?アナ?」

「うん。噂の出どころは、アドリアナ・トゥ・オネインザらしい」


 今度ははっきりと、アドリアナの名前を答えるコーデリア。

 なるほど。言いづらそうにしていた理由はこれか。そりゃ、リアの前で、アドリアナのことは言いづらいだろうなぁ。

 一方リアは、頭を抱えて溜息をついた。


「アナは一体何をやってるんだろう……」

「それはあたしが聞きたいよ。だいたい何でうちが標的にされてんのかもわかんない。あたし、あいつの気に障るようなことした覚えないよ」

「ごめんなさい。私もアナの考えてることはよくわからないから」

「「はあ……」」


 二人して頭を抱え始めたのを見て、私はリアに念話を送った。

 このままじゃ話が進まない!


『コーデリアの欲しいものはなんだろう?』

「あっ。コーディの欲しいものって?」


 リアはすぐに反応して聞いてくれた。こういうところがリアの良いところだよね。


「あたしの欲しいものは、転移魔法だよ。いざとなったとき、家族を連れて安全なところまで逃げるために、転移魔法が欲しいんだ」

「……は?何で転移魔法?」


 話が飛びすぎて理解が追いつかない。リアも目が点になっている。


「だって、転移魔法って最強じゃない?どんな攻撃だって、転移しちゃえば当たらないでしょ?それって最強じゃない?」


 目をキラキラ輝かせて言うコーデリアを、私とリアは呆れ顔で見つめていた。


 そして、コーデリアは、リアが必死で止めるまで10分以上、転移魔法の良さを延々と語り続けていた。



◇◆◇◆◇◆◇



「うわぁ!何、この家!?こんな森の中に立派な家!しかもカッコいい!すごい、すごい!」


 コーディの話を聞き終えた私たちは、とりあえず彼女と行動を共にすることにした。どこまで協力するかは、話の裏付けが取れてから、ということになった。

 アドリアナが関係しているから、リアとしても放っておけないそうだ。

 少し仲良くなったので、私もコーデリアのことを愛称で呼ぶことにした。あと、念話のことはリアに猛烈に説得され、渋々ながら話すことになった。

 ああ、言いたくなかったのに……。



 いつまでも店に居座るわけにもいかなかったので、とりあえずコーディを家に連れてきた。

 家の外観を見たコーディは、初めて見るログハウスに大興奮して家の周りを走り回り、それをリアが追いかけて宥め、落ち着いたコーディがログハウスを見てまた興奮して走り回り、それをリアが……という光景が、私の目の前で繰り返されている。

 お店でもそうだったけど、この二人を見ていると寸劇を見ているような気になってくる。コーディはあれが素みたいだから、余計に質が悪い。一度や二度ならいいけど、ずっとあの調子だと疲れそう……。

 あとでリアに何とかできないか聞いてみよう。


「ほら、コーディ!いい加減にして!」

「うぎゃ!」


 突然、ログハウスの裏手からリアの声が響いたかと思うと、コーディの悲鳴が聞こえた。そのまま静かになったので、何があったのか心配して様子を見に行ってみると、コーディが倒れていた。


『えっと……何があったの?』

「あ、トモリさん。いえ、ちょっと、コーディを静かにさせようと思って実力行使をしたら、思ったより力が入ってしまって、気絶させてしまったようなんです」

『あ、そう……。とりあえず、中に運ぼうか』

「はい」


 リアはコーディを軽々と抱え上げる。あれ?リアってこんなに力あったっけ?


『リア、力ついた?』

「そうですね。トモリさんのおかげで、いくつかレベルが上がってステータスも上がったので、その影響でしょうか」

『なるほど』


 レベリングのおかげってことね。ステータスが上がると、日常生活でもラクになるんだ。

 そういえば、コーディのステータスはどうなんだろう?後で聞いてみようかな。



◇◆◇◆◇◆◇



「それで、どうするんですか?」

『どうするって、何が?』

「コーディの欲しいものですよ。転移魔法って、簡単に手に入るものじゃありませんけど」

『うーん。そうだね。転移魔法じゃないとダメなのかなぁ』

「ダメだと思いますよ」

『だよねぇ』


 リアと苦笑いをしながら、コーディに転移魔法を取得させる方法について考えた。

 お店でもすごい語ってたし、転移魔法でここに連れてきたときも大興奮だったからなぁ。

 転移魔法の取得以外で手伝うって言って、聞いてくれるかどうか……。

 確かに転移魔法は便利だけど、いろいろ制限はあるし、コーディが言うほど便利なものじゃないんだけど、言っても聞かないだろうしなぁ。

 やっぱり、実際に使ってみないとわからないものだよね。

 あーあ。どうしようかなぁ……。



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