13.ぼっち少女の初依頼2
冒険者ギルドをあとにした私は、昨日入ってきた門から街を出て、森に向かった。
門番は昨日と違う人だった。
おじさんに会ったら、昨日のお礼を伝えようと思っていたので、少し残念だった。
森の入り口に着くと、私は「探索」を使って魔物の位置を調べながら、森の奥へと入っていく。
足元に注意して、ポー草を探す。でも、森には草がたくさん生えていて、どれがポー草かわからない。
私は、試しに目についたポー草に似た草をひとつ採り、カードに収納してみた。
そして、ステータスを開くと、称号欄に「冒険者」が増えていたので、タップしてみる。
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冒険者
【称号取得条件】冒険者になる
【効果】進行中の依頼状況が閲覧できる
【依頼状況】最新立寄:フィルリアの街
〔一時依頼〕
・ポー草の採取(0/100) オルヴァセン13日 受注
〔常時依頼〕
・ポー草モドキの採取(1/100) オルヴァセン13日 受注
品質:中1
【収納物】
ポー草モドキ・中(1)
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さっきの草は、ポー草モドキというらしい。品質は中か。そして、ポー草モドキは常時依頼扱いになるんだね。
確認が終わると、私は、さっき採ったポー草モドキの横に生えていた草を取り、カードに収納する。
そして、またステータスを開いて確認すると、今度は、「ポー草・中」と表示された。
正直、ポー草とポー草モドキの違いがよくわからないけど、どちらを採っても依頼をこなせるので、近くにあった似ている草を片っ端から採っていった。
ひととおり採って確認すると、ポー草・中が10本、ポー草モドキ・中が8本だった。この辺りには品質が中のものしか生えていないようだ。
アニタさんの話だと、高品質なら報酬も増えるらしいので、できれば高品質なものを採りたい。
私は、「探索」でポー草を探した。特定の物を探すために「探索」を使うのは初めてだけど、ポー草がどういうものかわかっているからか、ちゃんと表示された。……ただ、私がちゃんと見分けがついていないせいか、ポー草モドキも混ざっていたけど。
地図に表示されたアイコンをタップすると、品質も表示された。高品質なポー草(とポー草モドキ)は、森の奥の方に生えているらしい。
私は、魔物に気を付けつつ、森の奥に歩いて行った。
できるだけ魔物に遭遇しないルートを選んで、森を進み、目的の場所に辿り着いた。
地面には、明らかにさっきより良質なポー草(とポー草モドキ)がたくさん生えている。ざっと数えたところ、今見えている範囲だけで200本くらいはありそうだ。
私は、夢中になって、片っ端からポー草(とポー草モドキ)を採っていった。
そして、その辺りに生えていたポー草(とポー草モドキ)をすべて採り終わると、ステータスを開いて確認した。
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冒険者
【依頼状況】最新立寄:フィルリアの街
〔一時依頼〕
ポー草の採取(183/100) オルヴァセン13日 受注・完了
品質:良109、上53、中14、下7
〔常時依頼〕
ポー草モドキの採取(243/100) オルヴァセン13日 受注・完了×2
品質:良156、上73、中11、下3
【収納物】
ポー草・良(109)、ポー草・上(53)、ポー草・中(14)、ポー草・下(7)
ポー草モドキ・良(156)、ポー草モドキ・上(73)、ポー草モドキ・中(11)、ポー草モドキ・下(3)
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全部で400本以上採ったらしい。ポー草とポー草モドキは1本が細く、直径1センチもない上に、何本もまとめて生えていたので、かなりの量を採取することができた。
時間を見ると、この場所で1時間以上も採っていたらしい。もう11時を回っていた。
そろそろお昼時だし、帰ろうかな。
そう思って、魔物を探すために「探索」を発動すると、近くにアースウルフBの反応が4匹あり、こちらに近づいてきている。
直線距離で15メートルくらいしかないので、今から逃げても間に合わないだろう。
こんなに近づかれるまで気付かないなんて、ポー草採取に少し夢中になり過ぎたようだ。
反省しつつ、アースウルフBの接近に備えて「氷槍」を4つ出して待機した。
少しして、木々の隙間からアースウルフの姿が見えると、すぐさま「氷槍」を放った。
「必中」の異能により、氷の槍は狙った場所に正確に当たり、アースウルフBを3匹倒すことができた。
しかし、1匹は咄嗟に木の陰に隠れられたせいで、倒し損ねてしまった。
「必中」の異能は、狙った場所に当たる能力で、狙った物に当たるわけではない。この能力の補正が聞くのは、あくまで座標に対してのものだから、その場所から動かれたら意味がない。
私は、気を取り直して、もう一度「氷槍」を3本準備し、そっと残ったアースウルフBに近寄っていこうとした。
と、ちょうどその時、アースウルフBが隠れている木の陰から、遠吠えが聞こえた。
「アオ~~~~~ン」
私は直感的に、危険を察知した。これはマズイ。
私は、慎重に行くのはやめて、強行突破するべく走り出した。
10メートル弱の距離を一気に駆け抜け、遠吠えをしたアースウルフBを氷の槍で倒し、死骸を「無限収納」に回収する。
さらに、さきほど倒したアースウルフの死骸も回収し、「探索」を使いつつ、全力でその場を離脱する。
走りながら、「探索」の結果を見ると、さっきまでいた場所を中心として、円状にアースウルフがこちらに向かって集まってきている。
やっぱりさっきの遠吠えは、アースウルフBの固有スキル「遠吠え」だったようだ。
数十匹ものアースウルフが、一斉にこちらにやってきている。
私が場所を移動しているので、一番遠い群れからはだいぶ距離があるけど、一番近い群れにはむしろ近づいている。
アースウルフたちは円状に接近してきていて、私はその円の中にいるため、戦闘を回避することはできそうになかった。
私は、仕方なくその場で足を止め、迎撃態勢に移った。
……無事終われますように。
そう祈りながら。
参考までに載せておきます。
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遠吠え
【発動】任意
【説明】使用者の周囲半径10メートル以内の同族を呼ぶ。
【使用方法】遠吠えする。
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