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100.ぼっち少女のお迎え4


 4人といくつか話をしたあと、私はミラさんとカージアの街に戻った。

 ギルマスたちへの報告と、洞窟内にいる人たちをカージアの街まで運ぶ手段を用意する必要があるのだ。

 本当は、ひとりで戻るつもりだったんだけど、事情を説明するために必要だと力説され、断りきれず、ミラさんもついてくることになった。


 ただ、出発するときに問題が起きた。

 歩いて戻るには遠すぎるので、飛行魔法を使うことにしたんだけど、ミラさんが飛んでいくのは嫌だと駄々をこねまくったのだ。ミラさんは高所恐怖症らしく、飛んでいくのは耐えられないんだとか。

 なら、別についてこなくてもいいんじゃないかと思ったけど、意地でも行くと言って聞かない。ダニーさんたちが説得したけど、全然妥協してくれなかった。

 そこで、業を煮やしたグレイスさんが、魔法でミラさんを眠らせた。

 私は、眠っているミラさんを抱えて、さっさと出発したのだった。

 ちなみに、ミラさんが眠っているから、3人から見えなくなったところで転移魔法に切り替えて戻った。見てる人がいないなら、楽な方法で行ってもいいよね。



◇◆◇◆◇◆◇



 眠っているミラさんを連れて冒険者ギルドに入ると、アニタさんがロビーで待っていた。

 入ってきた私を見つけたアニタさんは、そのままギルマスの部屋に案内してくれた。


「お帰りなさい!遅かった……あら、その人は?」


 ギルマスの部屋に入ると、すぐにハティさんが声をかけてきた。途中でミラさんに気づき、尋ねる。

 私は、空いていた二人がけのソファにそっとミラさんを寝かせると、別のソファに座った。


「ん?これは、ミラか。眠っているのか?ケガは……ないようだが、何があったのだ?」


 ギルマスの問いに、私は4人と話しながら事の顛末を書いた紙を見せた。


「そうか。ゴブリンキングとオークキングが森に……。事態は我々の想像より遥かに悪そうだな」


 読み終わったギルマスは、ハティさんに紙を渡しながら言った。


「そうね。たまたまトモリちゃんと冒険者の人たちがいたから、被害なく討伐できたけど、これが一般人だけのときだったらと思うと、ゾッとするわね」


 ハティさんはアニタさんに紙を渡した。


「しかも、場所はちょうどスウィルシアの街とカージアの街の中間。応援を呼んでも間に合わないでしょう。狙って襲撃したのであれば、悪質極まりないですね」


 アニタさんの言葉に、ギルマスとハティさんは深刻な顔で頷いた。


「考えなければならないことは多々あるが、私は先に救助隊の手配をしてくる。夜明けとともに出発し、多少急げば、明日中には到着できるだろう」

「そうね。お願いするわ」

「お願いいたします」


 ギルマスは部屋を出て行こうと、扉に手を掛けた。そこで突然止まり、振り返った。


「そういえば、なぜミラは眠っているのだ?」


 あ、そういえば、ミラさんを眠らせた理由は紙に書いてなかった。

 私は急いで経緯を書いて見せた。

 それを見たギルマスは苦笑いをすると、部屋を出て行った。

 ちなみに、ハティさんは、前に私と飛行魔法で飛んだ時のことを思い出しているのか、遠い目をしていた。



 その後、時間も遅いこともあり、ハティさんの判断で解散となった。ミラさんは、今夜はハティさんが面倒を見てくれるそうだ。

 私は、さっさと宿に帰ると、お風呂に入って夕食を食べ、寝た。

 昼間結構寝たけど、その後いろいろあって疲れたからか、すぐに眠りに落ちていった。



◇◆◇◆◇◆◇



 翌日。

 ギルドに行くと、アニタさんが待っていて、またもやギルマスの部屋に行くことになった。

 部屋に入ると、ハティさんとミラさんが仲良く話をしていた。

 ミラさんは、部屋に入った私を見つけると、駆け寄って抱きついてきた。


「もうっ!どうして起こしてくれなかったの?目が覚めたら知らない部屋のベッドに寝かされてて、ハティさんに話を聞いたら、事情説明は終わってるって言うじゃない!これじゃあ、私がついてきた意味がないじゃないっ!!」


 抱きつかれた、というより、泣きつかれた。

 といっても、本当に泣いているのではなくフリなので、服が汚れることはないから良かったけど。


「ほら、ミラ。トモリちゃんが困っているし、そろそろ離してあげなさい」

「はあい……」


 ハティさんに言われて、やっとミラさんは離れてくれた。かなり渋々といった様子だったけどね。

 ハティさんに勧められるまま、私はソファに座る。全員が座ったところで、ギルマスが話し始めた。

 ギルマスはひとつ咳払いをした。


「ゴホン。あー、せっかく集まってもらって大変申し訳ないが、今日話すことはほとんどない。本格的に話をするのは、ミラの仲間たちが街に着く明日……いや、明後日以降だな。メンバーが揃わないと話はできない」


 確かに、ダニーさんたちがいない中で話をしても、あまり実のある話はできないと思う。

 ダニーさんたちがいたのは、ここから馬車で一日ちょっとくらいのところらしい。

 救助隊が今朝出発し、急いで行って夕方くらいに到着。一晩を洞窟で明かして、明日の朝出発し、夕方か、場合によっては一日野宿して明後日の朝に到着の予定らしい。


 私は30分くらいで行けたけど、馬車だとそんなにかかるのか。

 やっぱり、飛行魔法って便利だよね。まあ、転移すれば一瞬だけど、一度行ったことがある場所か、目視できる場所じゃないと転移できないんだよね。

 あ、千里眼とかで遠くの景色を見て、転移するってできるのかな?もしできたら、わざわざ行かなくても転移できるからもっと便利になるかも!うん。あとで試してみよう。


「詳しい話は、明後日の昼頃、再度集まってもらったときにすることにしよう。いいか?」

「いいわよ」

「私もそれでいいです。あ、ダニーたちが到着したら、私にも教えてください」

「私もそれで構いません」


 ハティさん、ミラさん、アニタさんが了承する。

 特に反対する理由もないので、私も頷いた。


「では、今日はこれにて解散とする。ああ、ミラは残って報告をしてくれ」

「報告?昨日の話はトモリちゃんがしてくれたって聞きましたけど」

「それとは別件だ。例の依頼について聞かせてくれ」

「あっ!そうですね。了解しました」

「じゃあ、私たちはこれで失礼するわ。また明後日に会いましょう」

「失礼いたします」


 ミラさんだけ残り、私とハティさん、アニタさんは退室した。

 その後、ハティさんとアニタさんはやることがあると言ってギルドを出て行った。

 私も特にやることがなかったので、またオーク迷宮の第6層に行き、ステータス上げに励んだ。



◇◆◇◆◇◆◇



 翌日、ダニーさんたちは、救助隊の人たちと一緒にカージアの街に到着した。

 私はミラさんたちに誘われて、出迎えに行った。

 道中、何度かノーマルオークやオークソードマンに遭遇して、大変だったらしい。

 ミラさんの穴を埋めるためか、ギルマスが救助隊に魔法が得意な冒険者を多めに入れておいたため、事なきを得たそうだ。

 私に無理矢理ついてきたミラさんは、ダニーさんからその話を聞き、申し訳なさそうにしていた。そのあと、グレイスさんに文句を言われ、口喧嘩をしていた。喧嘩するほど仲がいいって言うけど、いつも喧嘩ばかりってどうなのかな。



 話し合いは次の日ということになっていたけど、全員揃っているし、早いに越したことはないということで、今日行うことになった。

 救助隊から一通り報告を受けたギルマスが引き上げるのに合わせて、私たちも冒険者ギルドに移動した。




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