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98.ぼっち少女のお迎え2


「ゴブリンキングとオークキングだと?迷宮の最下層にいるような魔物がなぜこんなところに……」

「こんなの、ありえないわ!」


 二人が驚いている横で、私は冷静に考える。

 前に、森でハティさんとオークキングを倒したことがあるから、キングが出たこと自体に驚きはない。

 ただ、問題は、同時に2体いるということだ。

 1体ずつなら、他の人とうまく連携すれば倒せる。オークキングは一度倒したことがあるし、ゴブリンキングはゴブリンエンペラーよりも弱い。それに、前よりもステータスは上がっている。多少実力を隠さないといけないことを除いても、問題なく倒せるはずだ。

 でも、それが2体となると話は違う。1体ずつ倒すなら、もう一方は足止めしないといけないけど、私は水属性の魔法使いということになっているから、手持ちの中で長時間足止めできるような魔法がないんだよね。

 とりあえず、ステータスを確認しておこう。



◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆



ゴブリンキング

【職業】キング

【特徴】ゴブリンのキング。まあまあ強い?

【固有スキル】王の特権キングズ・プリヴィレッジ


【レベル】80

【体力】9443/9443

【魔力】3976/3976

【筋力】908

【防御】881

【命中】937

【回避】906

【知力】901

【精神力】901

【速度】906

【運】908



王の特権キングズ・プリヴィレッジ

【発動】任意

【説明】全ステータス値を高める。最大2倍。効果時間は5分。

【使用方法】スキル名を唱える。




オークキング

【職業】キング

【特徴】オークのキング。かなり強い?

【固有スキル】王の特権キングズ・プリヴィレッジ


【レベル】234

【体力】80345/80345

【魔力】33375/33375

【筋力】7540

【防御】7388

【命中】7373

【回避】7255

【知力】7440

【精神力】7371

【速度】7253

【運】7373



◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆



 うん。相変わらずな説明だね。「?」が付いてると、強いのか弱いのかよくわからなくなりそうだよ。まあ、ステータスだけ見ればだいたいわかるし、いいけどさ。

 で、やっぱりオークキングは強い。

 そして、ゴブリンキングは意外と弱いな。体力とか、一部のステータスは私より高いけど、他は私より低い。知力なんて、私の3分の1くらいしかないし。

 オークキングはちょっと手こずりそうだけど、ゴブリンキングは楽勝かな?

 あの二人がギルマスの言っていた冒険者なら、オーク迷宮を攻略できるくらい強いって話だし、うまくやれば全力を出さなくても勝てそうだな。



 そんなことを考えているうちに、2体は洞窟のすぐ近くまでやってきていた。

 考えている時間が少し長かったみたいだ。

 もう1体ずつなんて言っていられる距離じゃない。失敗した!

 私はなんとかしないとと思い、とりあえず攻撃しようとした。

 ちょうどその時。


「お前らの相手は俺だ!タウント!」

「我が主、テムド様。どうか我が友をお守りください。ライトシールド!」


 いつの間にか現れた冒険者らしき武装した人たちが、ゴブリンキングとオークキングに立ち向かう。

 盾を持った男性が挑発系のスキルで注意を集め、シスターの服を着た女性が盾の男性にシールドを張る。

 さらに、盾の人に意識が向いたゴブリンキングには、さっきの剣の男性が向かっていき、オークキングには杖の女性が火の魔法を放っている。


「……、ファイアーストーム!」


 距離があって詠唱がよく聞こえなかったけど、魔法名はよく聞こえた。

 ファイアーストーム。私も使う魔法だ。効果?や威力もほぼ同じに見える。

 攻撃を受けたオークキングは、まとわりつく火を消そうとのたうち回る。そのせいで、周りの木々に火が燃え移ってしまった。


「ちょっとミラ!何をやっているんですか!こんな森の中で火の魔法を使えばどうなるかくらいわかりませんでしたか?」


 森が燃え始めたのを見たシスター服の女性が、魔法を使った女性――ミラさんに文句を言う。

 ミラさんも、魔法の詠唱の合間に反論する。


「そんなことわかってるわよ!」

「ならば」

「あーもう!うるさいわね!私は火属性魔法しか使えないの!ザックがゴブリンキングを倒すまでの時間稼ぎなんだから、少しくらい多めに見てよね!」

「なっ!私は」

「いいから黙りなさい、グレイス!あなたはダニーの援護に集中して!」

「ちっ!わかったわよ!後で覚えてなさい!」


 二人はしばらく口論を繰り広げると、元の役割に戻っていった。

 私は、四人の戦いを見て、戦闘そのものには下手に介入しないほうが良さそうだと判断した。

 チームプレーをしているところに、部外者が割り込んでも、いいことはない。むしろ、状況を悪化させてしまうこともある。

 そういうわけで、私は消火をすることにした。


水雨ウォーターレイン


 四人とキングを避けて雨を降らせる。

 一気に降らせた方が早く消火できると思ったので、バケツをひっくり返したような土砂降りにした。


「わっ!何?雨?」

「くそっ!こんなときに雨かよ!ついてねーな!」

「皆さん、できるだけ早く終わらせましょう!」


 火は消えたけど、代わりに四人を驚かせてしまったようだ。

 雨の中での戦闘は嫌なのか、短期決着を狙い始めた。焦ってもいいことはないので、私の魔法だと説明することにする。

 剣でゴブリンキングに斬りかかっているザックさん、盾でゴブリンキングの攻撃を受け止めているダニーさん、その二人にバフを掛けたり、ゴブリンキングにデバフを掛けたりと大忙しのグレイスさんの三人に説明するのは難しそうなので、比較的余裕があるミラさんに説明することにする。

 私は、雨を止めて、オークキングの足元を魔法で凍らせてから、ミラさんに近付いた。


「えっ、凍結魔法?」


 ミラさんは私がやったことに気づかず、驚いている。

 そんなミラさんに、私は視界に入るように気をつけて近付いた。後ろから行ったら、もっと驚かれそうだからね。


「あら、あなた、さっきの冒険者さんね。どうしたの?」


 私は、手のひらに小さな「水球ウォーターボール」を作ってみせる。

 それから、さっき凍らせたオークキングの足元や、雨を降らせた森を指差した。

 うまく伝わるか心配だったけど、伝わったみたいだ。


「あ、あれ、あなたの魔法なのね」


 頷く。


「そう。あの雨もあなたが?」


 頷く。雨の方はちゃんと伝わってなかったのかな。でも、最終的にわかってもらえればそれでいいか。


「そっか。じゃあ、悪いけど、ちょっとオークキング見ててくれる?私、今の話して、ついでにあっちの方片付けてきちゃうから」


 そう言うと、ミラさんはゴブリンキングの方にいる仲間たちに合流しに行った。

 えっ!私がひとりでオークキングの相手をするの?いきなり過ぎない!?どうしよう……

 引き止めようにも、喋れない私では不可能だ。

 三人と合流したミラさんは、さっきの雨が私の魔法によるものだと説明すると、ゴブリンキングの討伐に加わった。

 こちらは完全に私に任せるつもりらしい。

 …………仕方ない。ゴブリンキングが片付くまで適当に足止めしておくか。

 私は、火達磨になりながら、足元の氷から逃れようと暴れるオークキングを見て、溜息をついた。



◇◆◇◆◇◆◇



「おまたせー」


 その後、5分ほどでゴブリンキングは倒された。

 私が水魔法で森の火を消せると知ったことで、火魔法を使うことに抵抗がなくなったようで、高火力の魔法で一気に倒していた。

 そのせいでゴブリンキングは黒焦げになっていた。まあ、ゴブリンの素材は魔石だけだから、黒焦げになっていても問題はないんだろうけど、見た目がね……。

 私はなるべくゴブリンキングを視界に入れないようにしながら、ミラさんたちを見た。


「オークキングの相手、ありがとうね。おかげで助かったわ。それで、悪いんだけど、もう少しだけ保たせられる?作戦会議がしたいのよ」


 私は、両手足が凍り、満足に動けない状態で転がっているオークキングを見てから、頷いた。

 火は消えているから、氷は簡単には溶けないし、もう少しなら大丈夫だ。


「そう?なら、お言葉に甘えさせてもらうわね。あ、グレイス。先に弱体化魔法だけ掛けておいてくれる?」

「わかりました。我が主、テムド様。我らを襲う悪しき者に罰をお与えください。ステータスダウン」


 ミラさんの言葉に応じて、グレイスさんがオークキングにステータス低下のデバフを掛ける。

 効果を確認するために再度鑑定すると、7000台だったオークキングの各ステータスが、5000台まで下がっていた。だいたい3割減といったところかな。

 HPも6万弱になっているけど、これはデバフによるものというよりは、これまでの私やミラさんの魔法によるものだと思う。結構ダメージ与えてるしね。


「では、時間もないし、作戦会議を始めよう」

「「「了解」」」


 ダニーさんの言葉で、作戦会議が始まった。




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