出会い
始業式から2週間が経った。クラスのみんなは、段々慣れ始めてきて仲良しグループが出来上がってきている。
俺は、始業式の日にあんな事をしでかしたせいか誰も近寄って来ない。一人は慣れているし、群れるのは好きじゃないから良いんだが、だからといって寂しくないわけじゃない。
その時、ドカッ。と目の前の椅子に座り、さらにそいつの後ろから ひょこっ と顔を出す女、突然見慣れた顔2つが視界に入ってきた。
「直輝は、昼近いってのに元気ないねぇ?」
「雪子、こいつは昔から無気力な奴だった上に始業式の日に、デブキモ眼鏡の大村を突き飛ばすわ、雪子に怒鳴られるわ、散々で友達すら出来ないんだから無気力なのは仕方ないってもんだろ? ひひひっ」
雪子は良いとして、このクソ坊主頭の藤森武広は本当に腐れ縁で幼稚園からずっと同じクラスだ。
2人とも幼なじみではあるが、藤森は悪友に近い。とにかく俺をからかうのが好きで、いつも今みたいに人を馬鹿にしたような憎たらしい笑いをかましてくる。
「無気力で何が悪いんだよ? むしろ学校で楽しそうにしてられるお前らが、おかしいんだよ」
「え? 無気力で無愛想でも良いよ。 ただ、元気がないようにも見えるから体調悪いのかな?って心配なるだけ。 無愛想な方が悪い女が直輝に近寄って来ないからむしろ良い。 もっと無気力になれ!」
「ちょ!? 何でそういう意味深な発言を雪子はするんだよ!? 直輝は早く彼女作れ! 命令だ!」
軽く不機嫌になる武広の雰囲気に気付かず雪子が武広を罵り始める。
「あのさぁ、ずっと前から思ってたけど武広って何なの? 直輝に早く彼女作れっていつも煽り入れてさぁ。 ちょっと頭にきてしまうんですけど?」
「あのー、すいません。 もうちょっと静かにしてもらえますか? 休み時間だからって近くでバカでかい声でふざけられたら迷惑です」
雪子が武広に注意した所で突然予想外の人に注意され、俺達3人は面食らってしまった。仲良しだからとか幼なじみだからとか関係なく俺達3人は同じ事を思っている事だろう。『この人って喋るんだ!?』と。
いつも無表情で読書ばかりしていて、何を考えているかわからないような人だから。いつも一人で、どこのグループにも属していない磯谷広子。
そんな人に注意されたわけだから、ちょっとびっくりしてしまった。
「ごめんね磯谷さん、ちょっとうるさかったよね? 気を付けるね」
雪子が謝ると、俺達を睨み付けていた目をまた本の方へと移し、いつもみたいに物静かに読書を始めた。
磯谷さんって友達いなさそうだよなぁ。一匹狼って感じだし。
つり目で痩せてて黒髪のロングヘアー、化粧っ気はない。可愛いまではいかなくても、ブスではない。まぁ、どちらにせよタイプじゃないからこの時は気にも止めなかったが······。
このような感じの毎日の時間を過ごし、平々凡々な毎日。時間はあっという間に過ぎて、期末テストも終わり何事もない普通の学生生活を送っていく事になるわけだが、俺にとっての問題はこの夏休み2週間前に起きる。