森の遺跡③
翌朝、簡単に食事を済ませた二人は、
さらに森の深くに進むことにした。
深く進めば進むほど、引き返すことが
難しくなることもこの森に人が寄り付かない
一因でもあった。
どのくらい進んだだろうか、
不思議と今朝から魔物に1度も
遭遇しなかった。
二人の目の前に少し開けた場所が見えた時、
その理由を二人は知ることになる。
石造りの何かが立てられていたかのような
瓦礫の山の中に、侵入者を阻むかのように
横たわっているおおきな魔物。
「あれは…… ブラックサーベルタイガー」
「サーベルタイガーって希少種の?」
「そうです、まさか、こんな所で目にするなんて……」
ブラックサーベルタイガーか……
見るからに恐ろしい魔物だ。
黒い美しい毛並みからは想像がつかないが、
生半可な武器では太刀打ちできない硬さらしい。
何よりも、あの異様を誇っているあの2本の牙。
長く伸びた鋭い牙、あんなものが突き刺さったら……
考えたくもないな……とカナタの頬を汗がつたう。
「リコさんが探してたって遺跡、あれっぽいんだよね?」
「はい、恐らく、何らかの祭壇だったように思います。
ですが、いくらなんでも二人で戦うには危険すぎる
相手です。まだ、こちらには気づいていたいようですし
1度引き上げても」
「胸騒ぎがするんだろ……? 僕にはよくわらないけど、
リコさんには不思議な力がある気がするんだよね。
その感覚が、不安を伝えてるなら、今やらなきゃ
ダメなんじゃないのかな?」
「それはそうですが……
リコは言葉を詰まらせて俯いてしまう。
そんなリコをカナタは見ていたくなかったのだ。
勝てない相手かもしれない。
でも、カナタの感覚もここで戻っては行けないと
警鐘を鳴らしていた。
最悪はリコさんだけでも逃がすことなら、
とカナタは覚悟を決めて、リコに声をかける。
「やろうか、僕達で」
カナタさんをこんな危険な事に巻き込んでしまった。
この森で危険な所を救われた恩人
一緒に調査をしてくれた優しくてとても温かい人
今も一緒に戦うといってくれた。
この人だけは何としても守る
「カナタさん…… 分かりました、戦いましょう二人で。
私も覚悟が出来ました。」
そう言って顔をあげたリコの瞳は、
それまでの優しい瑠璃色の光から
美しい黄金色へと変わり、カナタを心から驚かせた。