森の遺跡②
二人が迎えた初めての夜
カナタと半日以上を共に過ごし、
一緒に戦う中で、リコはカナタを
信頼に足りる人物だと感じていた。
カナタが、リコの窮地を救ったという
事実も大きかった。
一方のカナタは、
少しばかり興奮していた。
思い通り以上に動く自分の手足と、
羽のように軽い武器。
支援を受けているとは言え、今までにない
戦いの手応えに、この森での生活の終わりを
ぼんやりと感じていた。
外の世界を見てみるのもいいのかもなぁ……
「カナタさん」
不意にかけられたリコの声に少し驚いたカナタだったが
「カナタさんには、お話しをしておこうと思いまして」
唯ならぬ雰囲気をまとったリコの姿を見て
カナタは黙って耳を傾けた。
「私のこと、私がなぜこの森に来たのかを…」
リコがこの森の何処かにあると言われている、
遺跡の調査に来ている事は聞いていた。
遺跡とは、今は滅びた古代王国時代に、
祭祀を行っていた神殿の事らしい。
驚いたのは、彼女の事。
神聖レイクパレス教国の神官様らしい。
(見えないと言って怒られ済)
そもそもが、レイクパレスではここ数年徐々に
大地の恵が衰え、農作物の不作が続いていた。
一部の地域では飢饉が出始めていて、
深刻化しているそうだ。
レイクパレスは、天上と大地の双子神を信仰の対象とした
宗教国家であり、司祭の長たる法皇が国家元首を務めている。
そして、同国には、伝統的に双子神の啓示を
受けることが出来る存在として伝えられる、
神子が選出され法皇と人気を2分する存在として
信仰の対象にすらなっていた。
「まさか、その啓示がくだったというのですか?」
「はい、その通りです。近く、再びこの世界に
災いの歯車が回り始めると……」
「再び……?」
「はい、まさしく、古の遺跡を探してこの森に来たのは、
その 再び という啓示のためです。
古代王国の滅びと関係あるのではと各地の遺跡に、
私のような神官が多く派遣されています。」
それて、神官であり、冒険者としての
技量も高い彼女が、この地に解決の手がかり
となるものはないか調査に来たのだという。
「遺跡にはなにがあるの……?」
カナタの質問に
「分かりません……言い伝えもほとんど
残っておらず、何かがあるのかさえ
分からないのです」
「ただ……何となく胸騒ぎがするんです」