ドロップ品の所有権
可愛い女の子だった。
木漏れ日にキラキラと反射する黄金色の髪が
すごく印象的だった。
細い肩を震わせて、体を小さく丸めていた
その子がようやく顔を上げてくれた。
「スっ、スライムは……?」
僕が倒したから、安心して!
っと、喉から声がでかかったところで
思わず手に持った剣に目がいく。
あれ……、これ、もしかして俺が倒したけど、
このドロップはこの子のもの……??
最初にエンカウントしたのこの子だしな
でも、倒したのは僕だし……うーん
後の世に、救世の英雄と呼ばれた男は、
実は、少しばかりせこい男だった……
というのは歴史の闇に埋もれている。
と、そんな風に言葉を濁していると……
「あなたが、助けてくれたの?」
まだ少し涙目の、大きな瞳が二つ、
こちらを見上げながら覗き込んでいる。
上目遣いである。
ドキンッ!
僕ちゃんは、女性に免疫が皆無である。
顔を真っ赤にして、声が全く出ない。
黙ってコクコクと、うなづくのが精一杯だった。
「ありがとうございます!」
少女はゆっくりと立ち上がり、
僕ちゃんの手を取りながら笑顔で
お礼を伝えた。
ボブッ
僕ちゃんは思考停止におちいった。
「あの……だいじょうぶ、ですか?
どこかお怪我でも??」
心配そうに少女が見つめている。
僕ちゃんはあわてて手を放し、
「だっ大丈夫です。そ、そちらこそ、
怪我なんかはしてないっかっ?」
「はい、大丈夫です。助けていただいて
ありがとうございました。」
と少女は最高の笑顔で答えてくれた。
少しばかり冷静になった僕ちゃんは、
いきさつを少女に尋ねた。
もちろん、ドロップのことも正直に話した。
実は、この世界にはドロップ品は
エンカウントした者に所有権があり
それ以外のものはドロップ品を拾えない
という制約があった。
僕ちゃんが【白???剣】を拾えた時点で
実は僕ちゃんに所有権が移っていたのだが、
世の中を知らない僕ちゃんは
実は気まずい思いをしていたのだ。
少女曰く、
「明らかにエンカウントした者が
戦意を失っていたり生命の危機に
あった場合は、討伐者に所有権が渡ります。
討伐者が複数の場合は、最大の功労者に
所有権が渡るのですが、今回はあなた様
に既に所有権が移っていたのですから、
お気にせずお使いください。」
とのこと。
でもなぁ……この性能なんだけどな……
ドロップ品の桁違いの性能に
僕ちゃんはまだとまどっていた。
僕ちゃん、さすがは未来の英雄。
いいやつなのである。