はじまりの時
その日は、いつもより森が騒がしかった。
それが、僕の運命が変わったはじまり。
ここはアルカナの大森林と呼ばれ、
1本の大樹を中心に、一年中青々とした
木々が生い茂る静かな森だった。
確かに、自然界の食物連鎖におさまる営みが
無いわけではない。
それでも、平和といっていい静かな森のはずだった。
少なくとも、僕が日課の修行のために、
この大森林に足を運んで数年間、
こんな事は1度もなかった。
「きゃああああ」
突然聞こえた悲鳴。
普段、滅多に人が来ることのないこの森で珍しいと、
思いながらも、無意識に僕は走っていた。
「それにしてもこの方向って……」
そんな思いが頭をよぎっていると、
目の前に二つの影が見えてきた。
そこ、にたどり着いた時、僕が目にしたのは、
肩を震わせて、怯えている1人の女の子だった。
僕は、迷いなく、その子とその子に忍び寄る
もうひとつの影の間に割って入った。
「こい、スライム!僕が相手だ!!」
そう、女の子が怯えていたのは、スライム……
だよな……?見たことの無い色のスライム。
でも、形は間違いなく、いつものお得意様の魔物。
スライムならいける!
色が真っ白なところが不気味だけど、
スライムなら負けるはずがない。
白いスライムと僕の戦いが始まった。