何度でも挑めばいい -3-
少女は町の大通りを、人混みを器用に避けながら走っていた。
少女は淡いピンク色の変わったデザインの帽子を被っている。
それは、少女の顔ほどの大きさがある。
魔女が被っているような、とんがりの帽子で、その先端は真ん中辺りでポキリと折れ曲がっていた。
水色のカーディガンを羽織り、黄色のロングスカートを身に着けている。
しかし少女は背丈が低いので、その春によく映えそうなスカートは、実のところロングとは言えない。
(あのバカ 止める 私が)
少女は決意をその顔に滲ませる。
しかし、彼女をよく知らない人が見れば、その顔はただの無表情としか映らないだろう。
少女の向かう先は、仲間の元だった。
数か月行方を眩ませていた、その人物に少女は怒りを募らせていた。
(絶対 許さない あいつ)
かつて、少女たちは目的を共有し、途方もない旅をしていた。
それぞれが、望みもしない宿命を背負い、そこから逃げ出すことを求めたのだった。
しかし、結局は誰一人逃げられなかった。
少女も含め、4人居た仲間の内の2人はその宿命に絡めとられ、この世界を去った。
ナノハ=イルミナス は、世界の狭間を駆け、終わりの見えない人類救済を選んだ。
調停者として、あらゆる時空に赴き、歴史の特異点の観測と修正を責務としていた。
ヨルタ=ダンゾウは、その巨体を礎とし、人であることを捨てた。
魔と人を繋ぐ臨界の守護者として、君臨することとなった。
そして、少女―――タルム=サメサ だけは、この世界に留まり、
残された少年の行く末を見守っていた。
そしてそれが、タルムに与えられた宿命でもあった。
何度でも挑めばいい -3- -終-