プレイヤーネーム
「えっと・・・助かりました。どうも」
この人がいなかったら俺は死んでいただろう。
だが、この後どうなるのかまだ分からない以上、素直に感謝はできなかった。
「礼には及ばんよ。私の名はアルベール、ここで戦士長をやっている。君の名は?」
「俺は山田・・・えーっと」
俺は言いよどむ。
(異世界だし、どうせならもっとかっこいい名前を付けたいよなぁ。何かいい名前はないか?)
しばらく考え込んでいると、
「やま・・・山田エイトというのか?」
どうやらえーっとをエイトと勘違いされたようだ。
(いや違うんだけど・・・ダメだ全然いい名前が思いつかん。そもそもゲームキャラの名前を考えるのに一時間も使う俺がすぐ思いつく訳ないだろ・・・キャラクリに関しては半日も使うし。もうその名前でいいか、変でもないし)
「そうです。山田エイトって言います」
「そうか。よろしく頼む、エイト殿」
握手を求められ、俺は応じた。
「さっそく学校への入学手続きを手配させよう。あとは部屋が必要だな。どこか空いてる部屋を用意してやってくれないか?」
「分かりました。あなた、付いて来なさい」
俺の腕を抱えていた鎧の奴が答えた。
女性の声であった。俺は少し驚く。
「は、はい」
(兜を付けてたから分からなかったけど、こいつ女だったのか・・・力強すぎだろ)
俺は彼女に付いて行った。
「ここがあなたの部屋よ」
案内された部屋は物置のようで、物が乱雑に置かれている。
(もっといい部屋がよかったけど、俺に選択権はないよな・・・)
「ここしか空いてなかったから、我慢しないさい」
そういって彼女は部屋の整理をし始める。
(え?この流れならこういうのって俺がやるんじゃないのか?何か悪いし手伝うか)
「あ、俺もやりますよ」
俺は手伝うことにした。
二人で片付けをし、ぎりぎり人が寝れるスペースを作る。
「これでスペースは確保できたわね。後で布団を持ってくるから、受け取りなさい」
(頼んでもないのにいろいろやってくれるなこの人・・・いや助かるんだけど。優しい・・・と言うより、この場合はおせっかい焼きが近いか)
「ありがとうございます。えっと・・・」
「自己紹介がまだだったわね。私はピリカ。よろしく」
「ピリカさん・・・ですか」
(いうて名前を聞いても顔見てないし、誰かわかんねーんだよなぁ・・・)
すると別の騎士が部屋へやって来た。
「アルベール様より伝言だ。入学の手続きは済んだ。明日より学校へ通ってもらう。手続きの都合上、お前は我が城の客人ということになった」
「おお、客人ですか。ならもっといい部屋に泊まらせて貰えるんですか?」
「あくまで形式上そうなっただけで、我々はお前をもてなすつもりはない」
「そうですか・・・」
どうやら酷い扱いは変わらないようだ。
「それと、ピリカには彼の文字係りと身の回りの世話をするようにとのことだ」
「ちょっと待って、世話までしなきゃなの?」
「こいつは今まで異世界に居たから、この世界のことを教えてやらんとだからな。世話焼きのお前なら適任だろうとのことだ」
「適任て何よそれ・・・はぁ、分かったわよ。やればいいんでしょやれば」
顔は見えないが嫌そうな感じは伝わってきた。
(すげー嫌がってるけど、確かにさっきの行動からして適任だな・・・)
「じゃあ、布団を持ってくるわ。後で食事の場所も教えるから」
そう言ってピリカは部屋を出て行った。
「さっそく世話を焼いているようだな・・・まさしく適任だ」
騎士はあきれたように言う。
「ですね・・・」
「伝言は以上だ。何か困ったことがあったら彼女に頼れ。では」
そう言って騎士は部屋を出て行った。
一人になった途端、精神的な疲れがどっと押し寄せその場に寝転がる。
(とりあえず・・・助かったんだよな。よかった・・・)
どうやら俺の名前は山田エイトで、明日から学校に通うらしい。