表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

無理ゲー



「この者も魔法がない世界の人間のようです。魔力がまったく感じられません。見たところ体力もあまりなさそうです」


 玉座の男に一番近い鎧の男が言う。位置的に偉い地位の人間だろうか。


「今回もハズレか」


 そう言うと玉座の男は残念そうにため息をつく。


(ハズレってひどいこと言うなぁ。まぁ魔力も体力もないんじゃ仕方ないんだろうけど・・・。確か今回も、とか言ってたな・・・ということは俺以外にも誰か召喚していたということか?)


 そう考えを巡らせる俺をよそに、玉座の男がしゃべりだす。


「よし、始めよ」


「はっ、仰せのままに!」


 魔術師の集団がそう答えると、呪文らしきものを唱え始めた。それと同時に俺の足元に魔方陣が展開される。


「おぉ!?魔方陣だ。すげぇ・・・」


 本物の魔法を見て少し興奮する。いや、俺でなくてもこれは興奮するだろう。

 しばらくすると魔方陣から赤い霧が湧き出でて、そのまま俺の体に入り込んできた。


(お~霧が体に入ってくる・・・あ~すっごい)


 別に気持ちよさはないが、この新しい感覚にしばらく身を任せていた。

 すると術が終わったのか魔法陣がすっと消えていった。


(今のってもしかして、俺を強くする魔法・・・異世界物でよくあるチートを授けてくれたのか!?)


 ゲームができないのは悲しい。だが、チートを使って俺TUEEができるとなると話は変わってくる。


(チートがあれば悪者なんかばったばったとなぎ倒せるし、女の子からは強いから好かれるだろうし、あれ、俺また世界を救っちゃいました?とかイキったりもできるし!最高じゃないか!)


 これからのことに期待を膨らませた結果、俺のテンションが急激に上がった。


「いいか、お前にはこれから魔王を倒しに行ってもらう」


 普通なら困惑どころではないことを言われたが、俺が動じることはなかった。

 チートを授けたということは、何かしらの討伐を言い渡されるのは予想ができたからだ。


(うーん魔王か。もっと強そうなやつが良かったけども・・・まぁしょうがない。チートを得たこの最強の俺が、この世界、救ってやりますか!)


「任せて下さい、必ず魔王を倒して見せますよ」


 俺はここぞとばかりにイキる。


「ほう、頼もしいな。それと、さっきお前に3年後に死ぬ呪いをかけた。死にたくなければ魔王を倒してこい。そうすれば呪いを解いてやる」


 その言葉を聞いた瞬間、俺の表情は固る。そして心の中の将来のビジョンが音を立てて崩れ落ちていった。


「・・・うそでしょう?」


 もはやこの可能性に期待するしかない。


「うそではない。お前より前に召喚したやつが魔王を倒しに行かずに、近くの村でのんきに暮らしておったものでなぁ。気に入らんから次から呪いを掛けることにした。もちろんそいつにも呪いを掛けてやったわ」


 どうやら前に来たやつはスローライフを楽しんでいたところを見つかってしまったらしい。

 そいつのせいでこんなことになったのだが、魔王を倒すなんて無理だったのだろうと思うと、攻める気持ちにはなれなかった。

 それよりも今大事なのは、俺の今後である。


(このままじゃ力も魔法もない俺は確実に死ぬ。そんなことはこの人も分かってるはず。さっきハズレって言ってたし・・・ならやっぱり)


「もしかして、このあとチート的なものを授けてくれたりします?」


「そんなものあるわけなかろう」


 玉座の男は鼻で笑う。


 どうやら俺はハズレの異世界を引いてしまったらしい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ