【二章】花蓮迷宮02
少し遅くなりましたが投稿
「ふう...濡れタオルだけだとお風呂に入りたくなるな」
今僕は、クールベルタを出発して9日ほどの街道で野宿をしている
「スイさんそれは仕方ないことですよ。さすがの時空間の樹法でも、お風呂を丸ごと運ぶことは時空間樹法が中級の今ではできませんから」
茜さんの時空間の樹法を見ると、やはり樹法は便利なものだと少し羨ましくなる
『ねえ、ノルンやっぱり僕って樹法使えないんだよね?』
どうしても諦めきれずノルンについ聞いてしまう
『無理に決まってるでしょ、そもそもスイは樹力持ってないんだから』
仕方ないとはいえ、剪定者に樹力無くされたのは痛いな...
「ノルンさんとお話ですか?」
茜さんが聞いてくる
「はい、どうしても茜さんの時空間の樹法を見ていると羨ましくて...どうにかして時空間の呪法でも使えればいいのにな。と」
僕は苦笑しながら茜さんにノルンと話していた内容を教える
「確かスイさんは、そのままだと、転移ができなくて樹力を剪定者に封印してもらったのですよね」
「そうだよ、樹力を封印しないと転移もできないし、元の世界に戻れるわけでもない宙ぶらりんの状態になっていたからね」
「それならば、樹法が使えないのは仕方ないのではないですか?」
茜さんは僕の希望を砕くのが早いな〜
「その通りです...」
僕は、変えようのない事実を茜さんに指摘され頭をがっくりと落とす
「す、すいませんそこまで落ち込むとは思わなくて...」
茜さんは僕の反応が予想外だったのか、少し慌てながら僕を慰めてくる
「い、いいんですよ...僕が樹法を使えないということは知っていましたし...」
『あーあ。茜スイを落ち込ませたー』
「そ、その、私がこれからずっと、スイさんの荷物を好きなだけ時空間にしまいますから...」
「そこまで落ち込まないでください...」
茜さんは一生懸命僕を慰めている
『ぷっ..それってプロポーズぅ?茜〜?』
ノルンが鬼の首でもとったかのように面白そうに茜さんをからかっている
「ち、違います!そんなつもりはなくてスイさんには、そんな気持ちを抱くことは絶対ないですし...スイさんノルンさんのいうことは気にしないでくださいね!」
僕は茜さんのその言葉で、今まで落ち込んでいたことも忘れ、一気に血が凍るかのような感覚に襲われ、自分の動揺が露見しないようにと、また偽りの表情の仮面を被り、いつものスイを演じる
「ははは...勘違いなんてしませんよ。茜さん気にしないでくださいこんなものは、ノルンの戯言ですから」
僕は誰にもバレない笑みを浮かべ茜さんに返す
「そ、そうですよね」
茜さんはホッとしたかのように顔を緩める
僕はまたその茜さんの変化に昏い感情が出てくるのを感じるが、無理やり心の奥底に押し込む
「そうですよ、ノルン謝っておけ」
『む〜わかったよう...茜ごめんね』
「別にいいですよ。少しふざけただけでしょうし」
ひとまずこれで和解は済んだようだな...
「それじゃあこれで今日は寝ますか」
僕はそう茜さんに告げる
「そうですね...それではおやすみなさい」
茜さんは馬車の中にある衝立の向こうに消える
「おやすみなさい茜さん」
僕はその消える背中に声をかけそのまま毛布にくるまる
スイは毛布にくるまり誰にも聞こえない声で呟く
「茜さんの好きな人は「 」ただ一人なんだから...」
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「着きましたね...」
僕は今花蓮迷宮と言われている迷宮に来ている
「そうですね...確かにこれは大きいですね」
そう、茜さんが言う通り今僕の目の前には本当に巨大としか言いようのない、大きい遺跡のようなものが鎮座している
「やはり世界最大というのも嘘ではなさそうですね」
「はい、どうしますか?もうすぐ迷宮に入りますか?」
茜さんが僕に少し視線を向け、聞いてくる
「そうですね...一旦ご飯にしてから入りますか」
僕がこう言うのは今花蓮迷宮に着いた時点で、太陽が僕の頭の真上にあるからだ。
「わかりました。それでは食事の用意をしますね」
茜さんは空中にいきなり現れた裂け目から食材と調理器具を出しながら僕に了承の意を伝えてくる
「とりあえず、鶏肉を焼きますね」
「わかりました。ご飯をお願いします僕はとりあえず情報を集めてきます」
僕は周りで談笑している守護者らしき集団を横目で見つつ、茜さんにそう返す
「はいそれでは食事ができ次第お呼びしますね」
「ありがとう。それじゃあ行ってきます」
僕はそう告げ茜さんの返事を待たず、談笑している集団の方へ駆ける
僕はとりあえず、無骨な武器に機能性を重視した防具をつけているベテランの風貌を漂わせる男四人組に話しかける
「すいません今、お話大丈夫ですか?」
「おぉ?にいちゃん、えれぇ綺麗な顔してんな。ま、それはいい何の用だい?」
男の中の一人が気さくに返してきた
「はい、僕はこの迷宮に入るのは初めてなのですが、何か助言みたいなものをもらえないかと」
「なるほどなぁ、俺から言えることは自分の力量と敵の力量をしっかりみて、引き際を見定めることだな。おいお前らは何かあるか?」
気さくな男は他の三人にも聞いている
「そうだね...基本的に十層ごとに敵の強さがいきなり上がっていくから、油断しないことだね」
「飯だな、ちゃんと飯の残りを計算しないと最大限力を出せずポックリなんてのはこの迷宮じゃよくある話だ」
二人はすぐに助言をくれたが最後の一人は少し考え込んでいる
「その...別に、無理に教えていただかなくても...」
考え込んでいる男にそう告げる
「あぁ、いや別に助言がないわけじゃないが...少し抽象的でわかりにくい助言になってしまうがそれでもいいかい?」
どうゆうことだろう?
「はい構いませんよ」
そう僕が告げると男は苦虫を噛みつぶした蚊のような顔になり口を開いた
「そう、だな、俺の前組んでいた奴らから聞いた話だが、全員ラピスリの守護者4人で組んだ仲間で、この迷宮に挑んで150階層あたりまで行って一人生き残った奴がこう言っていたらしい...花だ、あの花に気をつけろ..あぁあの花だ、あの花が俺から奪うんだ、絆を血を誇りを、枯れないんだあの花は、決して枯れないんだよ。とまあ眉唾だが100階層より先にに行くつもりなら一応覚えていた方がいいぞ」
花...か100階層より後に行くときは気をつけておこう
「おりがとう。これは凄くためになる話を聞かせてくれたお礼だ」
僕はお礼を言いつつ財布から金貨を4枚男たちが話していた机の上に置いた
「おぉにいちゃん!やっぱり色男だぜ迷宮に入ったら気いつけろよ!」
僕は背中でそんな礼を受けつつ少し考える、花ね...奪うということは、何か寄生のようなことでもされるのか?もしそうだったらかなり厄介だな...まあ今考えても仕方ないか
僕は花のことを一旦思考から外す
この時に思考を続けなかったことに後に後悔することになるとは知らずに...
あるラピスリ守護者が譫言のように繰り返した言葉
“花だ...あの花に気をつけろ..あぁあの花だ..あの花が俺から奪うんだ、絆、血、誇り、全て。そう全て奪うんだ...花だあの花は枯れない...決して枯れないんだ、全て奪うまでは...ああぁ花だ、花が、花・・・・・・”




