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M-096 操作は動かしながら覚えよう


 翌日、目が覚めた時には誰もベッドにいなかった。

 寝坊したかと思って体を起こすと、3人があちこちに寝ていた。

 もう少しでフレイヤがベッドから落ちそうなのが気になるところだ。エミーはベッドの下の方にいるし、カテリナさんを探したら俺の頭の方にいた。

 どんな寝相なんだかと考えてしまう。

 まだ寝息を立てているから、このままで良いだろう。1人ベッドから抜けて衣服を整える。

 カテリナさんが持って来てくれたのはベルッド爺さんが着ているようなツナギだった。色は黒だから埃が着いたら目立ちそうだ。

 装備ベルトを付けて、パウダールームに向かい顔を洗う。そのまま奥に向かい、浴室を抜けてデッキを作った。

 朝焼けが始まっている。何条か流れる雲が紫に染まっていた。

 時計を見ると1630時を少し回っている。フレイヤ達が起きるまではここで一服していよう。


 朝日が昇り始めるころに、シャワーの音が聞こえてきた。

 ようやく目が覚めたみたいだな。思わず笑みがこぼれる。


「だいぶ早起きね。今日は忙しいわよ」


 タオルを巻いただけのカテリナさんが抱き着いてくる。

 早く着替えないと風邪を引きそうだ。高緯度とは言えないけれど、この辺りの朝晩は結構冷える。


「朝食もお弁当ですから、マイネさん達が準備してると思いますよ。早めに食べて、今日の課題を終わらせましょう」

 

 カテリナさんの腕引くようにしてデッキを後にする。

 浴室ではまだ2人がシャワーを浴びていたけど、そのままパウダールームの椅子にカテリナさんを座らせた。


「早めにお願いしますよ」

「2人にも伝えておくわ」


 頬に軽くキスをしてくれた。思わず鏡を見てルージュが付いてないことを確認する。

 士官候補生の前であまり醜態は見せたくないからね。


 広間に出て昨夜の区画に向かうと、マイネさん達が朝食の準備を終えていた。

 朝の挨拶を済ませて、デッキを展開しるとコーヒーカップを渡してくれた。


「エミー達は時間が掛かりそうだ。できれば手伝ってくれないかな?」

「宮殿ではいつもお世話をしてたにゃ。入っても良いのかにゃ?」

「全員起きてるからだいじょうぶだよ。まだシャワーを浴びてるかもしれないけど」


 うんうんと2人が頷いてくれた。

 直ぐに、「行ってくるにゃ!」と言い残して走って行ったけど、やはり広間と言うより体育館に見えてしまう場所だよなぁ……。


 デッキでコーヒーを飲み終えて戻って来ると、3人がシートに座っていた。俺と同じような服装だが、美人は何を着せても似合うんだと感心してしまう。


「さて、頂きましょう。私達は制御室で待っていれば良いのね?」

「それでお願いします。区画は明確なんですが椅子が無いのが面倒ですね。それと小型の魔石通信機は用意できました?」


「椅子の選択も今夜の議題ね。マイネ達もいらっしゃい。一度見ておいた方が良いわよ。小型の魔石通信機は10個用意してあるわ。果たしてどこまで使えるかも問題ね」


 軍艦の中では多用されているらしいが、リバイアサンの大きさが問題だ。使えない場合の対応も考えねばなるまい。

 何らかの連絡手段をリバイアサンは持っているのだろうが、その使い方までの調査確認はしていないのが現状だ。


「とりあえずは、アリスを通じてリオ君と話ができれば問題はないはずよ」

「なるようにしかならない、ということですか」


「少しずつ動かそうと思うんだけど、アリスは手伝ってくれるんでしょう?」

『生体電脳を使った制御は可能です。先ほどの通信手段を確認しました。マスターにはインターホンと言えば理解できるのではないでしょうか?』

 

 電話じゃないんだな。だけどそれでも十分だと思う。問題はどこと、どこを結んでいるかになる。


『いくつか相手先を選択できるようです。調査を進めて夕刻にはプリントします。昨日1600時より枢要区画の扉を全てロックしました。入室はマスターの認証が必要です。

 1630時にプライベート区画への扉認証にカテリナ様、エミー様、フレイヤ様、マイネ様、ミイネ様を追加しました。

 0930時に制御室扉認証を同じく追加します』


「士官候補生達はまとめて制御室へ入ることになるだろう。エミーもしくはフレイヤが制御室にいる場合は区画の扉をフリーにしてくれないか?」

『了解です。……生体電脳のプログラム変更完了です』


「私達は自由に出入りできるけど、士官候補生達は制限が掛かるということね」

「そんな感じです。本格運用を始める時にはもっと面倒な手続きになりそうですけど、現状はここまででしょうね」


 朝食が終わると9時近くになっている。約束の時間は10時だからまだ時間がありそうだな。

 それにしても、椅子やテーブルは早めに手を打たねばなるまい。補給の第2陣の中に入っているのだろうか?


「今日の昼食はどうするのかにゃ?」

「戻ってきますが、時間は12時を過ぎるかもしれませんよ」

「凝ったものは作らないにゃ。待ってるにゃ」


 制御室を見学して、引き上げるってことかな?

 それで十分だろう。


 9時半を過ぎたところで、兵員室に向かう。

 カテリナさん達は専用エレベーターで直接制御室に向かうらしい。

 俺だけ忙しいのは気のせいなんだろうか? リバイアサンの持ち主ということになるんだけど……。


 集合10分前に休憩室の扉を開くと、士官候補生達が車座になってお茶やタバコを楽しんでいる。

 男女の区別をしない軍だから半数近くが女性達だ。

 一緒に生活してセクハラされないのかな? ちょっと心配になってしまう。


「「おはようございます」」

「おはよう!」


 灰皿を囲む連中の間に座って、一服を楽しむ。

 昨日は制服だったんだが、今日は俺と同じようなツナギ姿だ。全員が白だから、1人浮いている感じだ。


「今日はおもしろいものが見られるぞ。制御室勤務は驚きの連続だろうし、砲塔に向かう連中は、実際に砲を撃ってもらうつもりだ。最上階の班は眺めに驚くだろうな」

「リバイアサンを動かせるんですか!」

「動かして貰う。俺一人でも動かせるんだから、本職の君達ならもっと上手く動かせるはずだ」


「「ウオォォ……」」

 部屋の中が煩い程の喜びようだ。

 きちんと動かせなくては、フェダーン様達の艦隊との統一行動がとれない。

 頑張って貰わねば後が大変だからね。


「注目! 整列の上点呼を取れ!」

 

 5分前に先任伍長殿が入ってきた。3人の下士官も一緒だから、これで全員ということになる。


「総員100名、異常ありません!」

「了解だ。リオ殿も来てたのですか?」

 

 後ろの方から目ざとく見つけてくれたようだ。


「移動距離が長いから、早めに来てしまった。後は俺の指示で構わないか?」

「よろしくお願いします。巡洋艦より来てくれた下士官1名が私と同行し、砲塔操作は下士官2人が引率いたします」


「了解した。小型だが魔石通信機を10個用意した。制御室とここでの交信は可能だったが、どこまで届くかはやってみないと分からない。一応、4人に渡しておく。残りは各班に渡して欲しい」


 班長が決まったのかな? 数人の男女がロベルの元に向かい小型魔石通信機を受け取っている。


「さて、大きく3カ所に分かれる。制御室と測距離儀室、それに砲塔区画だ。

 制御室にはリバイアサンの指揮官であるエメラルダ王女とカテリナ博士、それに俺の所属するヴィオラ騎士団の陸上艦ヴィオラの火器管制官であるフレイヤがいる。また別の場所で待機しており、制御室の全体を見ているアリスがいる。

 先ずは制御室に行く班は通路に移動してくれ。残ったものは、マニュアルを用意してあるから自習ということになる」


 バッグから何組かのマニュアルを取り出して残った者達に渡すと、自分の班に関わるマニュアル以外を次の班に渡している。

 2人の下士官に頭を下げて、後を頼み通路にでた。

 

 整列した士官候補生達の先頭に歩いたところで、注意点を話しておく。


「本来、制御室は容易に入域できる場所ではない。リバイアサンは軍より厳しい審査が行われるのだが、今回はそれを削除している。俺にも分からない排除システムが無いとは限らない。統一行動をなるべく取ってくれ。それと、休憩したい時には離席を許可するが統括する3人の誰かに許可を得てくれ。以上だ!」


「理解したな。全員一緒に制御室に入る。出る時も一緒だ。休憩は3人の誰かに許可を得てからだ!」

「「了解!」」


 ロベルの大声に負けないような答えが返ってくる。

 さて出掛けようか。フレイヤ達が待ちかねているはずだ。


 通路を歩きエレベーターで制御室へと向かう。

 エレベーターホールで再度列を整え、生体認証区画へと入る。

 ゲートは3つあるんだが、初めてゲートを使用するから面倒だな。

 ゲートをくぐった先で、全員が通り抜けたことを確認して制御室の扉を開けた。


「ここが制御室だ」


 そう言って振り返ると、全員が目を丸くして驚いている。

 カテリナさんだって驚いてたからなぁ……。仕方がないところだ。


「エミー、連れてきたよ。……先ずは、紹介しておく。俺に降嫁してくれたエメラルダ王女、隣がフレイヤだ。奥にいるのがカテリナ博士になる。疑問点は3人に聞いて欲しい。その場で答えは得られない場合でも、少し経てば答えてくれるはずだ。各区画にマニュアルが載せてある3冊あるが持ち出しは厳禁とする。帰る際に、3冊乗せられていることを確認するぞ。

 それでは、班ごとに区画に入ってくれ。運行班は舵輪のある正面の区画だ。その左が火器管制区画、右がドック管制区画になる。後列の2つは左が通信区画で右が機関区画となる。

 通信区画は無人になるから、火器管制区画で代替できるように調整した」


 驚いてはいたが、きちんと持ち場に付いてくれたようだ。

 レイドは俺の隣にいるが、下士官の2人は自分達の専門である区画に移動したようだ。1人が舵輪の傍に立ち、もう1人は火器管制制御盤の仮想スクリーンを覗き込んでいる。


「ロベルさんは候補生達の統括なんですから、エミーの後ろに付いてください。全体を見ることが出来ますから、伝達役をお願いします」

「王女様の後ろに立つなど……。分かりました。王女様の手助けを致します」


 これでエミーが大声を出すことも無いだろう。


「よろしいですか! 簡単に設備の取り扱いを説明します。というか……、動かした方が分かり易いでしょう。

 動力班は制御盤中央の出力ゲージに注意してね。通常であれば光の帯が2割以下になるはずよ。各部署への動力供給もそこで監視できるけど、今は気にしなくてもだいじょうぶ……」


 後はカテリナさんに任せられそうだ。カテリナさんに視線を向けると小さく頷いてくれたから、制御室を出ることにした。

 次は……、先に輸送艦に行ってみるか。


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