表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/391

M-073 資金不足に人員不足


 ガネーシャ達がやって来て4日目の昼近く。

 どうにか隠匿空間近くに機動要塞を持ってくることができた。


 まだ、リバイアサンの全て学んだわけではないから、しばらくは詳細な調査が行われるに違いない。

 アリスも、色々と調べた結果を生体電脳との会話で内容の精査を行っているらしい。

 パズルのようで面白いと言ってたけど、複雑な数式をパズル感覚で解くというのは俺には想像もできないんだよなぁ。


 迎えに来てくれたガリナムに乗艦して、俺達も隠匿空間へと向かう。

 機動要塞は、しばらくは隠匿空間のランドマークとして使われそうだな。


 隠匿空間のヴィオラ専用桟橋にガリナムが停泊すると、カテリナさんと一緒に船を下りてヴィオラに向かう。

 一緒にクリスが付いてきたから、先ずは会議室で報告ということになるのだろう。


 ヴィオラの会議室の扉を叩くと、直ぐに扉を開けてくれた。

 中にはフェダーン様まで副官と一緒にテーブルに着いている。


「ご苦労様。座って頂戴。今、コーヒーを運んでくるわ」

「近くで見ると異様と言うより威容の方が勝っているな。王都の貴族達が欲しがりそうだ」

「指揮官の居住区だけで2フロアもあるのよ。あれならハーレムを作るのも簡単だわ」


 カテリナさんの報告に、フェダーン様が好奇の目で俺を見てるんだよなぁ……。

 別に作ろうなんて考えてないんだけど、何となくそれをさせたいようなところがあるから注意しておかねばなるまい。


「それで、ちゃんと制御できたということね。リオを艦長としてヴィオラの旗艦にしておくのは問題なさそうね」

「6日間では調べきれなかったわ。どうにか全体が見えてきたところね。戦機や飛行機、それに戦闘艦のコクーンの解除は1年ほど掛かるんじゃないかしら」


 1年で終えるんなら大したものだと思わねばなるまい。

 ネコ族のお姉さんが配ってくれたコーヒーを飲みながら、ドミニク達とカテリナさんの会話に耳を傾ける。


「何度か機動要塞の調査が必要でしょうね。今度は導師も連れて行きたいわ」

「カテリナには荷が重いと?」

「何とかなりそうだけど、早めに自由に動かしたいでしょう?」


 アリスなら自由に動かせそうだ。

 話が最上階の測距儀になってきた時、フェダーン様が首を傾げ始めた。

 艦戦の専門家として、何か気になるところがあるのかな?

 温くなったコーヒーを飲みながら深く考え込んでいるように見える。


「距離計の腕の長さが片方だけでも身長の3倍を越えると?」

「少なくとも6ステム(9m)を越えているわ。かなり正確に距離を測れるんじゃなくて」

「ウエリントンの戦艦でさえ、片腕の長さは2ステム(3m)だ。ひょっとして、機動要塞の艦砲は戦艦の魔撃槍を越えるのではないか?」


 俺に視線を向けられても返事のしようがない。慌ててカテリナさんに視線を向けると、小さく頷いてくれた。


「確かに不自然な話よね。72基ある80セム(120mm)砲は、後装式の火薬を使う大砲よ。バレル内に魔石を使った加速リングがあるのかもしれないけど、それを取り付けるには砲身の厚みが少ないわ」

「撃ってみないと分からないと?」

「試射をする時には呼んで欲しいわ。是非とも確かめたいところね」


 うんうんとカテリナさんが頷いているけど、砲弾なんてあったのかな?

 

「やはり、機動要塞の詳細な仕様を調べねばなるまい。リオ殿の私物ではあるが、王国に二心が無いことを示す必要はあるであろう」

「危険なおもちゃを与えかねないということかしら?」


 カテリナさんとフェダーン様の視線が空中で火花を放っているようだ。

 どちらも悪い人ではないんだし、一緒に調べれば良いと思うんだけどねぇ……。


「導師を指揮官として調査隊を結成してはどうですか? 導師であれば過去の遺物の危険性は十分にご存じのはずですし、調査結果を王宮に報告する際にも信ぴょう性が増すと思うのですが?」


 ジロリと2人の視線が俺に突き刺さる。

 怒鳴られるかなと、思わず首をひっこめたくなったけど、ヴィオラ騎士団の騎士である以上、無様な仕草はできないんだよなぁ。


「確かにそれが一番かしら……。フェダーンもそれなら良いでしょう?」

「導師に迷惑を掛けてしまいそうだが、カテリナを御せる人物は限られているから、……互いに5人ということで手を結ぶべきであろうな」


 いつの間にか2人が笑みを浮かべて頷いている。

 仲良く調査してくれるなら問題はないだろう。


「そうだ! ドミニクのところからも何人か出した方が良さそうよ。リオ君のプライベート区画は2フロア。1フロアが会議室と執務室、それに客室になっているわ。その上階はハーレムになっているの。そのまま部屋を使うにしても少し改造が必要ね。それに家具がまるでないわ。誰が暮らすかはリオ君達に任せたいけど、仮にも貴族館としての体裁は整えておきたいところね」


「この大きさがあるんでしょう? それも2フロアなんて……」

「上級貴族の館よりも広いわよ。メイドも何人か雇わないと掃除すら追い付かないでしょうね」


 カテリナさんの言葉に、ドミニクが溜息を吐いている。

 アリスと一緒に、たまに魔石狩りを単独ですれば何とかなるかな?

 クリスと一緒に魔石狩りをしたことがあるけど、かなり取れたことを思い出した。取れた魔石の山分けということで相談してみよう。


「私達であの機動要塞の調度を準備しろと?」

「ヴィオラ騎士団の旗艦になるんだから、貴方達で用意するのが筋じゃなくて? それにリオ君を使えばそれほど難しくないと思えるんだけど?」


 ドミニクの抗議に、カテリナさんが解決策のヒントを与えたみたいだ。やはり考えることは同じということになるのだろう。

 魔石の分配を少し考えないといけないみたいだな。それはドミニク達で何とかしてくれるに違いない。


「一応、二次調査結果として報告書が欲しい。カテリナ達の報酬は、その成果を使って王宮に請求することにしたい」


 フェダーン様の言葉に思わず笑みを浮かべたのは、貧乏性の俺には仕方のないことだ。

 とは言っても、日当みたいなものだからあまり期待しないでおこう。


「次の休暇までには纏めるつもりよ。それで良いでしょう?」

「導師の率いる調査隊が最終報告となると報告しておく」


 これで会議は終わりなんだろうな。ネコ族のお姉さんがワインを運んできてくれた。

 ありがたく受け取って、タバコに火を点ける。


「ドミニク。導師の調査隊にリオ君を借りるわよ。持ち主だし、何と言っても機動要塞の制御ができるのはリオ君だけだから」

「この周辺の狩りは危険なのよ! あまり調査に取られるのは問題だわ」


 俺の能力というよりは、アリスの能力が狩りには必要ということなんだろうな。

 フェダーン様が笑みを浮かべているのは、飛行機の提供ということになるんだろう。機動要塞に2機あるから、その1つと交換なんてことを考えているのかもしれないな。


 深夜になって、ようやく解放された。

 自室に戻ると、フレイヤが大の字になってベッドを占領している。

 起こさないように気を付けてフレイヤを動かして、寝る場所を確保した。


 翌日。朝早くに強くハグされて起こされてしまった。4時間も寝てないんじゃないか?

 フレイヤを抱いてそのまま寝落ちしてしまったから、2度目の目覚めは昼近くになってからの事だった。


「そろそろ起きださないと、皆が心配するわよ」

「まだ眠いんだけどなぁ……。でも、皆の話題にはされたくないね」


 デッキに出て2人でシャワーを浴びると、直ぐに着替えを済ませる。

 隠匿空間では、いつの間にか食事を外ですることになっているようだ。

 船内で暮らす俺達にとっては、かなりの贅沢に思える。それに、ネコ族の小母さん達が作ってくれる料理は美味しいからね。外で食べると美味しさが倍になる感じもする。


「あら、だいぶ早い昼食ね?」

「色々とやることがあるの。早めに食事を済ませたいわ」


 アレクに手招きされたテーブルに着くと、サンドラが早速からかってくる。そんなサンドラを、いつものようにフレイヤがあしらおうとしているのを見てアレクがおかしそうに手に持ったグラスを震わせていた。


「そのくらいにしておくんだな。それで、次の狩りには参加できそうなのか?」

「同行は難しそうです。導師を隊長にした調査部隊を機動要塞に送る計画を軍が提案してきました。代わりに飛行機を貸してくれるとは思うんですが……」


 仕方がないという、諦めの表情をアレクはしてくれたんだが、シレインはちょっと残念そうな表情をしている。

 やはり軍の協力があると言っても、ヴィオラ騎士団と相性が悪いのかもしれないな。


「飛行時間が限られているから、アリスの偵察みたいな正確性に欠けるのよね。魔獣を見たことが無いんじゃないかと思ったことがあるくらいよ。トリケラタイプとチラノタイプの区別もできないんですもの」

「致命的ですね。対処が両極端ですから」

「おかげで、2度、3度と確認する始末なの。それも十数km程度の距離だから、気が気じゃないわ」


 2時間程度の距離でそんなことがあるなら、確かに気が気じゃないな。

 低緯度付近ではなく、ここは北緯50度を超えている。大型の魔獣が群れで闊歩しているのだ。


「まあ、言いたいことは色々とあるが、無いよりはましだ。大規模騎士団ならともかく、俺達中規模の騎士団で飛行機を持つ騎士団は限られている」

「申し訳ありません。たぶん、導師の報告書が最終と言っていましたから、その後は同行できると思ってます」


 しょうがないなと言う顔をしてるけど、俺のせいじゃ無いからね。

 昼食はポトフのようなスープに丸いパンが添えられていた。リンゴのような果物の4つ切りが1つに、コーヒーが添えられている。


 とりあえず食事を頂きながら、機動要塞の話をアレク達にすることになった。

 指揮官の居住区が2フロアを使っていると知って驚いているけど、ハーレムを作っていたことは話さないでおく。

 

「5千人近くの兵士が暮らしていたのか……。それにしても、昔から貴族連中の生活は派手だったようだな」

「戦闘艦の解凍が出来たら、ヴィオラ騎士団で利用するんでしょう? ドミニクにそんな人物を見付けられるかしら」


 そうなるとコクーン化している戦機や飛行機の要員も確保しないといけないんじゃないかな?

 騎士の総数はそれほどいないと聞いているから、ベラスコのような若者を早いところ確保しておかねばなるまい。1人は、ベラスコの彼女で良いんだろうけどね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ