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M-064 ソフィーとレイバンも一緒に


 2日程のんびり過ごしたところで、あの大きな倉庫のようなマーケットにソフィー達と出掛けることになった。

 運転はレイバンにして貰い、前と同じく荷台で周囲の景色を眺める。

 砂の海と違って、やはりここは緑が多いんだよね。

 眺めているだけで、心が休まる感じだ。


「リオは前回の水着で良いよね。私も1着買って貰おうかしら?」

「しばらく給料を下さなかったから、だいぶ貯まっているはずなんだ。マーケットで下ろせないかな?」

「6つの神殿の代理店があるわよ」


 神殿の代理店というのもおかしな表現だけど、銀行部門だけを独立しいるのかな?

 とりあえずカードが使えるなら問題なさそうだ。


 別荘に行くんだから、3人分の水着に釣竿1つ。後は俺達の服を新調するぐらいだろう。

 王都で揃えるわけでは無いんだし、それほどの金額にはならないんじゃないかな?


 マーケットの入り口近くにある神殿の代理店で、ブレスレットをかざして残高を確認してもらう。

 5万ビーナ以上あるようだから、3千ビーナを下ろしておく。銀貨30枚だから足りなくなることは無いだろう。

 バッグの財布にも銀貨10枚以上は入っているはずだ。

 フレイヤも貯金を下ろしているみたいだが、何か買う品があるんだろうか?

 

 最初に向かったのは、スポーツ用品を扱ったお店だ。

 周囲に泳げるような場所が無いんだけれど、王都と同じような水着を揃えているとフレイヤが教えてくれた。

 思わず不安がよぎったけど、顔には出ていないようだ。


 レイバンのサーフパンツは直ぐに買い込むことができたけど、フレイヤとソフィーの方は時間が掛かるんだよなぁ。

 近くでアイスクリームを買い込んで2人で食べていたんだが、どうにか食べ終えるころになって店の奥の着替え室から2人が出てきた。

 急いでお店に入って、今度はショーツとTシャツを選ぶことになった。

 買い物袋が4つも出来てしまったけど、荷台が広いからね。

 釣り具屋さんで、少し硬めの竿と両軸リールを買いこみ、ラインと仕掛けを用意してもらう。

 前回があるから、少しは自分の好みに合わせられる。


 最後に、帽子とサングラスを買い込んだんだが、ソフィーが泳げないと知って慌てて浮き輪を買い込んだ。2つあればフレイヤと喧嘩をすることもないだろう。


 これで終わりかなと思ったら、フレイヤが食材を購入するらしい。

 ソフィーと一緒に行ってもらい、俺は嗜好品を買いに向かう。レイバンには三輪自走車の番をして貰うことにした。


 別荘だからねぇ。タバコと酒をたっぷりと買い込んでおく必要があるし、ベルッド爺さん達へのお土産も必要だろう。


 支払いを済ませたところで財布の中を覗くと、銀貨かなり減っていた。

 あんな布地の少ない水着が、銀貨3枚以上するのは暴利じゃないのかな?


 両手に紙袋をぶら下げたフレイヤ達を見て、急いで駆けつけて重そうな紙袋を持ってあげる。

 その重さに、今日の夕食を期待してしまうのは、単なる食いしん坊だからなんだろう。


「これで、ソフィーも水着を気にしないで済みそうね。私のお古じゃ嫌だと言うんだから」

「古いという認識があるんだろうね。しばらく着るのが楽しみならそれで十分だよ」


 女の子だからねぇ。タオルのガラまで気にするようだ。レイバンは、これとこれという感じで直ぐに決めてくれた。

 

 農場に戻ると、自分の荷物を嬉しそうに運んで行った。

 俺達の荷物をフレイヤが持ち、食材の袋を俺が運ぶ。1度に運べないけど、残りはレイバンが運んでくれるらしい。


「ただいま。厄介になってるから、少し食材を買い込んできたわ。ケーキを作ってね」

「あらあら、そんなに買い込んで……。こちらに下ろしてくれませんか? ケーキは明日でも良いでしょう? クッキーを焼いたんですよ」


 食材を運び終えた俺に、イゾルデさんが笑みを投げかけてくれた。

 思わず頷いてしまったのは、誰にも見られていないだろうな?


 荷物を運び終えたソフィー達も一緒になって、午後のひと時をクッキーとコーヒーで過ごす。もっともコーヒーは俺一人で、フレイヤ達はお茶のようだ。


 前回滞在してからは、ファルコのような猛禽類を見なくなったらしい。

 ファルコがいたから、他の猛禽類が姿を見せなくなっていたということかな。

 その状態でファルコが退治されたなら、しばらくは平穏だとイゾルデさんが話してくれた。


「アレクが、2人に拳銃を送ってきたのよ。まだ早いと思ってたんだけど」

「長剣が使えて、拳銃を放てるなら一人前ですね。でも、アレクは何時もレイバンに農場を継がせると言ってましたよ」


「ソフィーの方なの。レイバンはのんびりした性格だから、この農場を上手く経営することができるでしょうけど……」

「兄さんに相談してみるわ。ソフィーも一緒に行くから丁度良いかもしれないわよ」


 長男の意見はそれなりに重い、ということなんだろうか?

 長子相続の時代でもないだろうが、一番上の兄さんだからねぇ……。少し飲兵衛だけど、俺達の面倒をよく見てくれる筆頭騎士だからなぁ。


 その夜はハンバーグステーキだった。

 普段は野菜中心の食事に傾きがちなんだろうな。レイバンが笑みを浮かべているぐらいだ。

 

 朝は、フレイヤと一緒に仕掛けたウサギ罠を巡ったところで、ネコ族の小母さん達のお手伝い。

 夕食前には、ソフィーの長剣を稽古を見てあげる。暇な時間には、池に竿を出して魚を釣る……。

 平和な時間が過ぎていくのが自分でもよく分かる。

 緊急を知らせるドラは鳴らないし、甲板をパタパタと駆け抜けるネコ族のお姉さん達の姿はここには無いからなぁ。


 明日は農場を去るという夜。シエラさんの門下生まで一緒になったパーティを開いてくれた。

 納屋の前の広場でバーベキューをしながら、ワインやジュースを頂く。

 長剣の腕を見せてくれという懇願を受けて、丸太の柵を1本斬り倒してしまったのは、余興で済ませても良いものだろうか?

 後でアレクに怒られそうだな。

 それでも翌日の朝、シエラさんが俺の剣技を褒めてくれたから、許して貰えたのかもしれない。

 今日の夕暮れと同時に発つ予定だから、それまでには直しておこう。


 昼過ぎになると、ソフィー達が荷物を持ってそわそわし始める。

 どうやってアレクのところに行くのかまだ話してはいないんだけど、イゾルデさん達にはフレイヤが教えたようだ。

 びっくりしてたと俺に話してくれたけど、アリスで向かうと知ったらそうなるだろうな。


 季節は初夏だから、綿の上下で十分だ。ソフィーとレイバンでトランクは1つらしい。

 俺達の持って来たトランクに釣竿を玄関の傍に置いておく。

 どうにか傾いてきた太陽の位置を確認しながら、リビングでのんびりと時を過ごすことにした。


「いつでも気兼ねなくいらしてくださいね。私の農場に貴族様がやって来ると知ったら、友人達は驚くでしょうけど」

「私の教え子達の母親達も、わざわざ私のところにやって来る始末です。やはり信じられないということなんでしょうね。丸太を軽く両断できるとは、騎士でなければ考えることも出来ないでしょう」


 俺の方こそ、ありがたい話だ。

 この世界に、頼れる家族も親戚もいない状況だ。

 何となく、自分の故郷のようにも思えてくる場所になってきている。


 少し早めの夕食は、ポトフのようなスープとサンドイッチになる。包を1つフレイヤが受け取ったのは、向こうで皆と摘まむようにとのことだろう。


 食事を終えて、外に出ると夕焼け空になっていた。

 30分も立たない内に暗くなってしまうだろうな。

 フレイヤがベランダに持って来てくれたコーヒーを飲みながら、一服を楽しむ。

 この場所で夕暮れを見るのもしばらくお預けだな。


「そろそろ出掛けましょう。すっかり暗くなったから、通りを歩く人もいないんじゃないかしら?」

「そうだね。それで、ロープは探してくれた?」

「レイバンが用意しているわ。納屋の前で良いんでしょう? 荷物も運び終えたみたい」


 なら出掛けられるな。

 リビングに入るとイゾルデさん達の姿が見えない。どうやら納屋の方に出掛けたみたいだ。

 コーヒーカップをテーブルに置くと、フレイヤと一緒に納屋へ向かう。

 納屋の前に2つの光球が浮かんで、その下に4人がいるのが分かった。


「少し下がっていてください。……アリス、出てきて良いよ!」


 声が終わると同時に空間が揺らぎ、アリスが姿を現した。

 4人とも声も出ないようだけど、こんなことができるのはアリスだけだろうな。


「両手に俺達4人を乗せてアレクの別荘まで運んでほしい。落ちたら大変だから4人のベルトにロープを通して指に巻いておくよ」

『半重力の場で包みますからロープは必要ありません。落ちても1m程下までです』


 ちょっと信じられないところがあるけど、アリスを信じるとするか。

 両手を下したアリスの手のひらに乗ったフレイヤにトランクを受け取って貰う。釣竿をも忘れないように積み込むと、ソフィー達に乗って貰う。

 

「それではお預かりいたします。10日後に向こうを出ますから、翌日中には農場に戻れると思います」

「よろしくお願いします。ソフィー、リオ様にご迷惑をかけないようにね!」


 イゾルデさん達に頭を下げると、アリスに出発を告げる。

 ゆっくりとアリスが上昇していくのを、目を丸くして2人のご婦人が見ていた。


『地上20m。これより水平飛行に移ります』


 水平飛行に移ると、アリスの速度がだんだんと増してくる。

 半重力場がアリス全体を包んでいるのだろう。時速100Km以上の速度が出ているはずなんだが、強い風を感じることもない。


 王都の中心街に近付くと、アリスが高度を上げる。

 眼下にはたくさんの明かりが通りを照らしていた。この眺めを見ることができる者はそれほどいないんじゃないかな。


 2時間も掛からずにアレクの別荘に着いた。

 さすがに道路に下りるのも問題だから、扇型のデッキに着陸する。

 デッキの床が抜けないかと心配になったけど、半重力制御とは偉大なものだ。デッキを軋ませることなく、着陸して手の平から俺達を下ろしてくれた。

 荷物を受け取ったところで、アリスが再び亜空間へと姿を消していく。


 デッキの騒ぎを見ていたのだろう。アレク達が直ぐに俺達を迎えてくれた。

 嬉しそうにソフィーがアレクに抱き着いている。

 まだ少女だからサンドラ達もそんな光景を温かい目で見守っている。


「よくやってきたな。歓迎するぞ。フレイヤ、部屋を案内してやってくれ。前に来たところはリオ達で、その手前がソフィー達だ。ツインベッドはそこだけだからな」

「了解! 着替えて来るわ。その後で2階のリビングで良いんでしょう?」


 なら早めに着替えないとね。

 かつて知ったるということで、デッキから客室に向かう。

 ソフィーやレイバンは想像していた別荘とかなり違って見えるのだろう。あちこちと視線を向けている。


「別荘内では、全員が水着なの。荷物を運んだら着替えなさい。直ぐに迎えに行くからね」

「いつも水着なの?」

「そうよ。だって直ぐ海に飛び込めるでしょう? ソフィーは泳げないんだから、レイバンに今夜中に浮き輪を膨らませて貰いなさい」


 さて、いよいよ漁師暮らしだ。

 ベラスコ達も来ているはずだから、前回よりは楽になるに違いない。


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