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M-056 機動要塞発見!


 星の海を南から北に向かって飛びながら画像を照合する。島が動くならすぐに分かるはずなんだが、9日目になっても何の異常も見られなかった。


 仮想スクリーンを立ち上げて2つの画像を重ねてみたのだが、やはりどこにも異常が無い。

 やはり単なる都市伝説のようなものだったのかもしれないな。

 そろそろ閉鎖空間の拠点に戻ろうとした時だった。

 調査開始2日目の画像に、不自然な個所が1つあることに気が付いた。


「アリス、2日前に風が強い時があったよね」

『はい、風速30mを超える風は少し珍しいですね。砂の海で埋まった陸上艦もあるかもしれません』


 確かにありそうなことだが、そうなると益々変じゃないか?

 星の海の一カ所に霧が出ているのだが、その霧の位置が数日間経過しても変化がまるでない。

 だいたいにおいて霧は太陽光で熱せられると消えてしまうはずだ。それに強風でも位置を変えないとなると……。


「アリス、この霧の中を詳しく調べられないか?」

『赤外線なら視認できるでしょう。距離は北西400kmほどですね』


 霧を目指して一気にアリスが加速した。

 彷徨う島を探す陸上艦からはだいぶ離れているな。星の海の群島を探しているのだろうが、彼等はどうやってそれが探すものだと認識するのだろうか?

 島自体が動くということと、その島に住むというドラゴンの確認になるんだろうか。


「火を噴くドラゴンとは会いたくないな」

『本当にいると思っているのですか? 私は、火炎放射器もしくは初歩的なビーム兵器だと推測しています』

 

 カテリナさんはドラゴンの話はしてくれたけど、そのドラゴンの形については何も言っていなかった。

 攻撃手段は持っているがその攻撃をした相手を確認していないということになるのだろう。ドラゴンならば火を噴くこともあり得るぐらいの話だったということか?

 となれば自衛用の固定砲台という辺りが一番当たっていそうだ。

 

「相手の攻撃範囲と距離が問題になりそうだ」

『それは心配ありません。防御兵器なら島に1機ということはないでしょう。島の周囲全てに攻撃を与えることが可能なはずですし、有効射程は霧の半径程度と考えられます』

 

 根拠は? と聞いたら霧の外に飛び出すような兵器であれば直ぐに所在が分かるだろうということだった。

 直径30kmほどの範囲が霧で覆われているなら、島が中心にあるとして霧の端までは15kmとなる。アリスの推定した射程距離は10km前後ということになるのだろう。

 とはいえ、射程が10kmを越える兵器となれば、この世界では戦艦の主砲に匹敵する。その半分でも軍にとっては厄介なものになるはずだ。


『それに、当時の兵器に空を飛ぶ術が無いなら、島の中心に向かって垂直降下すれば迎撃されませんよ。飛行機程度なら獣機の持つ2連装の銃で十分ですが、私に傷を着けることはできません』

「調査ができるということなんだな。なら降りてみても良さそうだ」


やがて前方に霧が見えてきた。厚い雲が水面まで下がったようにも見える。あの中だと周囲がまるで見えないから、陸上艦がこの付近にやってきても避けてしまいそうだ。


『上空を通過して霧の内部を調査します』

「そうしてくれ。だが十分注意してくれよ」


 高度を少し落として、現在は1000mほどだ。霧の高さは300mを越えていそうだが、これほどの高さがあれば周囲に拡散していきそうだ。


『霧が何らかの力で拡散を防止されているようです。上空通過しました。現在画像処理をしています』 

 すぐに仮想スクリーンが目の前に開き、内部にある島が映し出された。


 1辺が500mを越える四角錐形だ。

 どう見てもピラミッドにしか見えない。高さは300mを越えているだろう。

 だが、これが本当に伝説の島になるんだろうか?

 どこにも着陸できそうな場所が見当たらないし、ドラゴンだって見当たらない……。


『島より魔石通信を受信……。ハッキング開始します』


 やはり、ということなんだろうな。

 それなりに文明が花咲いた時代が過去に存在したに違ない。敵味方識別装置が実用化していたのだろう。


『どうやら識別信号の様です。返信します!』


 敵と判断されたなら、ドラゴンの登場になるんだろか。


『離着陸口が開きます。機能の一部は未だに生きているようですね』


 赤外線で捕らえたピラミッドの一角に動きがあるようだ。

 斜辺の一部が外に開いて、離着陸台のような形が出来ている。開口部だけで、30m四方はありそうだ。

 

『降下を開始します!』

「危険じゃないのか?」

『離着陸台を開放するなら、敵性は無いと推測します』


 そんなものか?

 とりあえず腰に手をやり、リボルバーがあることを確認した。

 ゆっくりと、霧の中にアリスが下りていく。

 下の方で点滅する光が見えたかと思ったら、アリスの降下が終わる。どうやら離着陸台に降り立ったようだ。


『島の内部に向かって誘導灯が動いています。入ってみましょう』 

「危険はないのか?」

『いざとなれば亜空間移動をすれば外に出られます』


 そういうことか。なら、入ったところで入り口を閉じられても問題は無さそうだ。

 誘導灯に従って先に進む。50mほど入っただろうか、突然大きな空間に出た。100m四方はありそうだな。

 天井から弱い光が広間を照らしている。さすがに霧はここまで入ってこないようだ。


 ここが駐機場になるんだろうか?

 片方の壁際に、ずらりと戦機を駐機させる架台が2列に並んでいる。20機以上駐機できそうだ。

 反対側は棚が並んでいる。1つが15m四方はある棚が3段に設けられていた。飛行機を置いていたのかもしれないな。

 

『扉が3つあります。待機所でしょうか? 1つは奥に続いていると思うのですが?』

「案内板があれば良いんだが、どこにもないな」

『部屋に入れば端末ぐらいあるのではないでしょうか?』


 端末ねぇ……。推定で5千年前の代物だ。そんなものがあるんだろうか?

 アリスから下りて、近くの扉に向かう。

 床は塵が積もっているが、予想したほどでもない。長い期間の間に、何度か掃除が行われたようにも思える。


 扉らしきものはあったのだが、取っ手が無い。どうやって開けるのかしばらく悩んでいたんだが、取っ手の位置にある金属板に手を伸ばしたみた。

 俺の手が金属板に触れた途端、するすると扉が横に移動した。


 自動ドアってことか? 古代の方が文化が進んでいたということなんだろう。それが全て失われたということだから、魔道大戦とは恐ろしい戦だったに違いない。


『見つけました。そのまま中に進んでください。かつての戦機を駆る戦士の待機所だった場所の様です』


 昔はテーブルや椅子が並んでいたんだろうが、今は見る影もなく崩れている。

 部屋の奥に小さなランプが見えた。

 あれが、アリスの目的らしい。

 俺の目を通してアリスは状況が分かるようだ。なるべく周囲を見渡していた方が良いのかもしれない。


『情報端末の様です。マスターの肢体制御を一時的に私が行います。許可を頂けますか?』 

「構わないよ」


 俺の言葉が終わると同時に、体が自分の意思で動かなくなってしまった。

 ゆっくりと、点滅する表示灯に俺の手が延びていくと、表示灯の下の金属板に触れた。

 

 この部屋の扉のように、壁の一部が横に動くとスクリーンのような物が現れた。

 壁から手前にテーブルが延びてきたけど、その上にはキーボードのような物が埋め込まれている。

 俺の両手がキーボードの上を素早く踊り始めた。

 スクリーンに画像が映し出され、次々と画像が切り替わっていく。

 俺の目では追うことも出来ないけど、アリスには内容が分かるんだろうか……。


『終了しました。マスターの制御をお返しします。

 やはり、この島というか四角錐形の物体が、伝説の島の様です。現在は休眠中のようですが動かすことも可能と推測します』

「この島の概要は分かったということか?」

『詳細な情報解析には時間が掛かりますが、カテリナ様が欲しい情報は得ることが出来ました』


「なら、戻ろうか。場所が分かるならいつでも来れるからね」

『了解です。生体電脳に情報を追加しました。敵味方識別信号を少し変えましたが、私達の調査に影響はありません』


 アリスに乗り込み広間を後にした。

 離着陸台を離れると、再び島の中に離着陸台が収納されていく。


 上空に上がると、すでに夜になっていた。満点の星空が広がっている。

 眼下にはいくつもの湖があるのだが、その一角には相変わらず霧が出ていた。


 陸上艦が捜索している場所からだいぶ離れているし、霧の中を進んでまで調査を行うだろうか?

 沼沢地帯に足を延ばそうとする騎士団もいないだろうから、しばらくはあの島の秘密は守られるに違いない。


 隠匿空間に向けて夜空を滑空する。

 赤外線画像で見る地上の光景は、モノトーンではあるが魔獣や獣の群れが昼とはまるで違う動きをしていた。

 やはり、夜の方が魔獣の活性が高いように見える。


 隠匿空間に入ると、桟橋に停船しているヴィオラのカーゴ区域にアリスを固定して自分の部屋に戻る。

 深夜だから、フレイヤはベッドの中で夢の世界で遊んでいるんだろう。

 笑みを浮かべながら寝ている。


 デッキに出て、軽くシャワーを浴びると、体にタオルを巻いてワインを頂く。

 あの島に利用価値があるのだろうか?

 内陸に移動すればランドマークにはなるようにも思えるけどねぇ。

 桟橋すらないんだから、陸上艦を休ませることもできない。

 戦機や飛行機を搭載できるのなら、何とかヴィオラ騎士団で有効に使えないだろうか……。


 タバコを1本吸いながら考えてみたが、あまり良い案が浮かばない。

 明日皆へ報告すれば、良いアイデアを出しくれる御仁もいるに違いない。

 タバコの吸い殻を、携帯用灰皿に投げ入れると、残ったワインを飲み込んだ。

 部屋に戻ると、衣服を脱いでフレイヤの隣に潜り込む。

 クルリとフレイヤが俺に体を向けると、強く抱き着いてきた。

 寝ぼけてるのかな?

 このまま寝るしかなさそうだ。


本投稿話から、物語が少しずつ既存投稿内容と変わっていきます。

違和感が出てくると思いますので、既存の投稿を後ろから随時削除しますので、ご承知おきください。


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