表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
347/391

M-347 メープルさんがリバイアサンに来るらしい


 第2砦の建設か所の画像を見せながら、ちょっとした変更の必要性を伝えると、直ぐに頷いてくれた。


「事前に教えて頂けるなら、現地に到着するまでの時間で変更が可能です。大きな変更ではありませんから、工兵部隊が大騒ぎをすることも無いでしょう」

「飛行機の銃を銃座に設けるというのは、案外、第1砦にも使えそうだ。さすがに城壁に組み込むのは面倒だが、城壁に上に設けた移動路に自走車に搭載すれば同じことが出来るだろう。脅威の程度は低いだろうが、万が一の対策が事前に出来ているなら慌てずに済む」


「その外に気付いたことは?」

「2つ目の砦ですからね。地理的な条件が異なるだけに思えます。強いて言うなら、第2砦を維持する騎士団になります。完成するまでは騎士団の戦力が半減するでしょう。1年近く、収入が半減するのは騎士団としてはかなりの痛手に思えるのですが」


「毎月金貨5枚を考えていたのですが……」


 オズエル殿下が、不安げな表情でフェダーン様に視線を向けた。

 フェダーン様が溜息を吐く。やはり足りないということなんだろう。


「騎士団はたとえ不足であっても、それを口にはしないだろう。それが12騎士団の矜持でもある。騎士団と王国の関係は建国時代にまで遡るという話だからな。今回も騎士団の戦力の半分どころか三分の二を使っているはずだ。工事が予定通りであっても、騎士団は蓄えをかなり放出するに違いない」


「騎士団というのは、中々難しいものですね。そうなると、何らかの手を打ってあげたいところです」

「1つは、星の海で行う狩りの頻度を上げるのも手でしょう。工事は長期にわたりますから、何度か休養を取るためにブラウ同盟の拠点を往復することになります」


「水の魔石……、それにカニだね。王国の取り分を少なくして彼らに分けることもできるだろう」

「それも問題があるかと思います。ウエリントン王国の取り決めを踏襲するのが一番でしょう。その中に、狩の頻度は入っておりません。頻度を上げれば必然的に騎士団の得る魔石を多くすることが出来ます」


「もう1つは、工事現場にやって来る魔獣を狩ることでしょうね。魔獣次第ですが、それなりの頻度で襲ってきます」

「さらに付け加えるなら、別に動く彼らの仲間達を手助けぐらいはできるだろう。さすがに軍の艦隊を派遣することは出来ないが、彼らの船の周囲にいる魔獣の群れを教えるぐらいは問題が無さそうに思える」


「騎士団の矜持を傷付けないよう気を遣うと言うことですか……。騎士団との付き合いはこれから大きくなるでしょう。よろしくご指導いただきたい」


 俺に頭を下げるからあわてて、そんなことをしないで欲しいとお願いする。

 それに、その指導はフェダーン様がしてくれるに違いない。肉親なんだからね。遠慮せずに頼るべきだろう。


「そうそう。1つウエリントン王国より、リオ殿に3人目のメイドを与えると陛下よりの言葉があった。メープルをリオ殿に預けるそうだ」


 思わずフェダーン様に顔を向けてしまった。

 かなり失礼なのかもしれないけど、こういうのを青天の霹靂と言うに違いない。


「大変ありがたい話ではありますが……。メープルさんを、ですか?」

「やはり貴族達が気にしているようなのでな。王宮を去ったという話ではなかったかと、陰で噂を立てているらしい」


 要するに、欺瞞工作という奴だな。

 名目的に俺に預けることで貴族達の疑いを晴らすということになるのだろう。


「メープルさんにも仕事があると思うのですが……」

「メープルの配下も優秀な人材が多いようだ。それに、彼女達に荷が重ければ、リオ殿なら直ぐに王宮にメープルを移動できるだろう?」


 確かに……。

 王族ともなると、人を操るのに長けているなぁ……。


「返事はドミニクと相談してからと言うことでよろしいでしょうか?」

「内諾は得ているぞ」


 頷くしかないようだな。

「ありがとうございます」と返事をしたけど、心からではないからね。

 ますます俺の自由時間が減ってしまいそうだ。


 アルマーダ騎士団の概要を聞いてみると、さすがにナルビク王国で活躍している騎士団だけに2人も良く知っているようだ。色々と教えてくれた。

 アルマーダ騎士団の陸上艦は軍から払い下げられた軽巡洋艦3隻ということだ。戦機の数が17機というんだから、機動艦隊と言っても良さそうだな。

 騎士団長は、今年60歳ということだが見掛けは20代後半の姿らしい。5人の子供がおり、奥さんは3人とのことだ。その奥さんの1人はナルビク国王の末の妹になるとのことだ。


「貴族と言うことですか?」

「男爵位を持っているが、リオ殿と同じで騎士団長をいつも名乗っているぞ。案外意見が合うかもしれんな。子供の3人は男子で各艦長として活動している。娘の1人は騎士で、もう1人は王国内の騎士団事務所を仕切っているらしい」


 こちらにやって来るのは次男と3男が指揮する軽巡洋艦らしい。10機の戦機と2個分隊の獣機を搭載してくるとのことだ。


「リバイアサンに乗船したなら、皆を率いて挨拶をせねばなるまい。さすがに指揮所にリオ殿を呼ぶのは後々に問題になりかねん」


 ちょっとしたセレモニーと言うことかな?

 リバイアサンの出発時に行えば都合も良さそうだ。


「会議室で、出発前でよろしいでしょうか? オズエル殿下に出発を宣言して貰えたなら幸いです」

「おもしろそうだな。それで構わんだろう。確か、あの会議室では大きな画像見ることが出来たはずだ」

「制御室と指揮所それに前方の風景を同時に映すことが出来ます。ただ動き出すだけですし、しばらくはウエリントン王国の領土内ですから進路を妨害するものは無いと考えます」


「指揮所に詰める必要も無さそうだな。それで十分だ。となると、昼食は会議室と言うことになる。普段通りの食事で構わんぞ。無理をするようでは後の私が陛下から叱責を受けてしまいそうだ」

「無理のない範囲にします。建設は長く続きますからね。毎日というわけにはまいりませんが、俺達にも矜持があります」


 強がっては見たものの、後で誰かに相談しないといけないだろうな。

 そんな相談に乗ってくれる人物が、俺の周りにいるのだろうか? 場合によっては

ヒルダ様に相談することになりそうだ……。


「リバイアサンへの資材搬入は予定通り明後日の午後からになる。王都からの移動は軍の巡洋艦を使って欲しい」

「エミー達をお願いします。俺は一足先に向かって受入れ準備を始めます」

「迎えをこの館に送ろう。よろしく頼んだぞ」


 館の外まで一緒に向かい、去り行く馬車を見送る。

 リビングに戻ると、直ぐにメープルさんが飲み物を運んで来てくれた。


「まさか、メープルさんが一緒に着てくれるとは思いませんでした」


「王宮は色々と面倒にゃ。早く引退したいけど後継が育ってくれないにゃ。私がいなければ少しは努力してくれるに違いないにゃ」


 なんかちょっと希望が入っているなぁ。

 とは言っても、メープルさん並みのネコ族なんて何人もいるとは思えないんだよなぁ。何とか王宮内の裏を仕切れる人物に育ってくれれば良い、という親心なのかな?

 1人でダメなら2人で掛かれば良いだけだからね。


「ライムさん達と上手くやって頂けたらありがたいんですが……」

「昔少し鍛えてあげたにゃ。鈍ってたら鍛え直してあげるにゃ」


 思わず天を仰いでしまった。

 ライムさんに恨まれないかなぁ……。

 さすがに闇討ちはされないと思うけど、コーヒーに塩を入れそうな気がするんだよねぇ。


「あまり波風を立てないようにお願いします。それと、フレイヤを見て分かると思いますが……。俺達の住居で暮らす人達の行儀が……」

「多少の事には目を瞑るにゃ」


「多少ではないんですよ……。少しは騎士団としての矜持を持って欲しいところですが、やはり自分の家と言うことで安心しているんでしょうね。その辺りも目を瞑って頂けるとありがたいです」

「了解にゃ。リオ様は苦労してるにゃ」

 

 したり顔をしてうんうんと頷いている。

 どんな納得をしたのか聞いてみたいような気もするけど、藪蛇にも思えるからねぇ。とはいえ一番の問題児はカテリナさんなんだよなぁ。

 あの人は全く自由奔放だからねぇ。


「メイドもライムたち以外に増えたと聞いたにゃ」

「リバイアサンの部屋数が多いんですよ。3千近いと思います。新たに5人を雇っていますが、中々ライムさんの目に適うほどの成果が出てないようです」

「なら、行儀見習いの娘を何人か連れて行くにゃ。ひたすら掃除をさせるにゃ」


 嫌になって里に戻ってしまいそうだ。

 何とか穏便な着地点を決めておかないと、俺達の前に大きく聳え立ち脅威になりかねん。

 これは誰に相談すべきだろう?

 ドミニクに相談したら、リオの隙にしなさいと言われるのは目に見えている。


「あら? リオ様御1人なのですか」


 リビングに入ってきたのはユーリル様だった。

 学府で天文学を学生と共に研鑽を積んでいたのかな?

 テーブル越しの席に座ると、小さなノートをバッグから取り出した。何か疑問点が出て来たに違いない。

 でも、その前に……。


「ユーリル様。実は、リバイアサンにメープルさんが着てくれるとのことなのですが……」

「兄上の計らいだけど、裏は貴族達の疑いが出てきたということになるんでしょうね。リオ様に預けたと言うことにして、マルク収めたいみたいね。リオ様はこの館に出入りするでしょうから、一緒にメープルが付いて来ても何ら問題にはならないわ」

「とは言っても、俺達の生活はあの通りですよ。メープルさんの鉄槌が下るのが見え見えです」


 俺の言葉を聞いて、おもしろそうに眼を細めている。それだけでは済まないようで靴元を隠しながらクスクスと小さな笑い声を上げているんだよなぁ。


「私から言い聞かせるわ。さすがにカテリナを闇討ちすることはないと思うけど、本人にも少しは気を遣うように言わないといけないでしょうね。もっとも、魔導師が人の意見を素直に聴くとは思えないんだけど」


 待てよ。カテリナさんが頭を上げられない人物と言ったら、導師がいるんじゃないか?

 一度ゆっくりと説教して貰おうかな。あんな性格になったのは、導師にも少し責任があると思うんだよなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ