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M-282 昼前には出発できそうだ


 目が覚めたら世界は金色だった。その上、体が動かない。

 両側からフレイヤとエミーに抱き着かれているらしい。俺の顔に掛かっているのはエミーの長い金髪に違いないな。

 2人を起こさないようにカテリナさんとベッドに入ったんだが、いつの間にこうなったんだろう?

 フレイヤの寝相の悪さは相変わらずだけど、エミーはいつもはきちんと寝てるんだけどなぁ。

 どうにか2人の腕を解いて、体を起こしベッドを抜ける。どこにもカテリナさんの痕跡が無いから自分の部屋へと戻ったに違いない。

 そのままシャワーを浴びると、きれいに畳まれた衣服を身に着ける。黒のツナギはリバイアサンの制服でもある。動きやすいし、なんといっても気軽に着られるからね。

 装備ベルトを着けて、部屋を出るとリビングにはフェダーン様とファネル様がコーヒーを飲んで談笑していた。


「おはよう。いつになく早いな。雨が降らないことを祈りたい気分だ」

「おはようございます。たまには早起きしますよ。そうしないと寝坊助と思われそうですからね」

 

 ファネル様とも軽く挨拶を交わす。奥さん達はまだ寝ているらしい。時計を取り出して時間を確認すると7時前じゃないか! もう少し寝ていた方が良かったかもしれない。


「早起きにゃ……」


 マイネさんが、朝の挨拶の後に、ポツリと呟いた。マイネさんには寝坊助認定されているみたいだな。

 とはいえ、頂いたコーヒーはいつも通りの味だ。やはりマイネさん達が淹れるコーヒーは別物だと感心してしまう。

 

「ところで、エルダー作の望遠鏡を手に入れたとか。さすがはリオ殿ですね。銀貨5枚で手に入れたとは運だけでは語れませんね」

「名ではなく性能を聞いて購入しました。貴重品ではあるのでしょが、普段使いをしようと考えてます」


 俺の話を聞いて、うんうんと頷いている。勝手に解釈しているようだけど、とりあえず置いておいても問題は無いらしい。


「国王陛下の笑う姿が目に浮かぶぞ。とはいえ、エルダー作が現れたのは30年ぶりかもしれんな。好事家が押し寄せて来そうだが、さすがにリバイアサンに把来られまい」


 フェダーン様が笑みを浮かべているけど、笑いをかみ殺している感じだ。目に涙が浮かんでいるからね。


「あまり評判になるようなら、国王陛下に同じような望遠鏡と交換しますよ。しばらくは砦作りをここで眺めることになりそうですからね。たまに工事の状況を見てみようと思ってます」

「そうであったな。ファネルは双眼鏡を持ってきておるのか?」

「妻たちの分も用意してきました。『指揮所でも双眼鏡が役立った』と提督に教えて頂きましたので」


 スクリーンの画像が細密だからなぁ。エミー達も制御室にオペラグラスを用意しているぐらいだ。


「話を変えるが、現状でおよそ9割近い荷を積み込んでいる。残りは2隻分になるし、最後の2隻は高速輸送船だからそのままリバイアサンの桟橋に停泊させることになる。昼過ぎには出発できそうだぞ」


 それまでにはエミー達も起きてくるだろう。

 ようやく出発できるか。8日ほど掛かりそうだから途中で気晴らしも兼ねて、例の島で魔獣狩りとカニ釣りを楽しもうかな。


「ところで、星の海で1つやりたいことがあるんですが……」

「リオ殿の船だ。気晴らしでもするつもりか?」


「ブリアント騎士団も乗船していますから、例の島で水棲魔獣を狩りたいと、そこで釣れるカニをローザが珍味だと言ってましたので……」

「魔石と食材補給か。1日遅れるぐらいは問題なかろう。ファネル殿もよろしいかな?」

「騎士団の魔獣狩りは見たことがありませんから是非とも見たいところです。ところでローザはカニを食べたのですか?」


 前回の魔獣狩りの話をすることになってしまった。フェダーン様も食べられなかったらしい。ローザがゲテモノ食いをするとも思えないから、ちょっと楽しみなんだよね。


 朝食が9時過ぎだったのは、少し反省するべきかもしれない。だけどファネル様の奥さん達もリビングに顔を見せたのは9時少し前だった。同じタイミングでフレイヤ達も現れたから、どうにか体裁を取り繕うことができた感じだな。

 

「ん? カテリナはまだ寝ておるのか」

「魔導師ですからねぇ。遅くまで研鑽を積んでいるのかもしれません」


 どちらかというと、今起きてきたら俺達が赤面しそうだからなぁ。すぐに着替えれば良いんだけど、パジャマを着て現れる時がある。


「しばらくはカテリナの仕事もあるまい。リオ殿の予定は?」

「ヴィオラ艦隊の周囲を偵察してきます。真っ直ぐに隠匿空間に向かっているはずですが、狩りができるならそれに越したことはありませんから」


 1時間も掛からなそうだけど、今の俺にできることはそれぐらいだろう。

 帰ったら、学生達の参考になりそうなことをアリスと考えてみようかな。


 10時にコーヒーを切り上げて、プライベート区画を後にする。

 エントランス広場に、キックボードがいくつかあるのを見て、ファネル様が首を傾げているんだよなぁ。

 リバイアサンが広いからこれを利用していると教えると、目を輝かせている。


「これは、私も練習しなければなりませんね。ルシアとエメリーは使ったことがあるのかい?」

「幼少時代に遊びましたわ。フェダーン様、何とかなりませんか?」

「確か、軍用にいくつか購入してあるはずだ。指揮所で手配させよう」


 さすがに俺達だけが使うわけにも行かないので、フェダーン様やフレイヤ達は今回は使わないみたいだな。

俺だけ駐機台に向かうことになるので、皆に断ってキックボードで先に向かうことにした。

 リバイアサンでは結構普及しているみたいだな。たまに回廊をコースにして障害物競争をしているのを見かけることがあるぐらいだ。

 駐機台に到着すると、忙しそうにドワーフ族の若者達が戦機の点検を行っている。何度も点検はしているのだろうが、日々の日課ってやつだな。

 

「おはよう!」と互いに挨拶を交わしアリスに乗り込むと離着陸台が大きく開いていく。

 赤と緑のバトンを持ったドワーフ族の若者の指示に従って離着陸台へと向かい、その場から上空へと飛び出した。

 すでにアリスが空を飛べることが分かっているから、この頃は驚く連中もいなかったんだが、離着陸台に集まってアリスを眺めている連中は砦建設のために新たにフェダーン様の旗下に加わった連中なんだろう。


『戦機が12機です。スコーピオ戦に参加した戦機6機を確認しました』

「残りは、ハーネスと同盟軍に相対していた軍団の戦機ってことだろうね。軍の中には戦機で1度も魔獣と戦ったことがない騎士もいるらしいから、フェダーン様なりの配慮だろうな」


 砦建設ともなれば何度か魔獣を相手にすることにもなるだろう。

 魔獣を相手に勝利したことを示す軍功章もあるみたいだからな。軍人がいくつも小さな徽章を着けているのは、己の実力を一目で相手に知らしめるためでもあるようだ。

 階級が同じであれば、軍功の差ということなんだろう。

 とはいえ、フェダーン様は全くそんなものを着けていないし、ローザも同じだ。いつも一緒にいるリンダの方が偉く見えるほどだからなぁ。


「ヴィオラ艦隊周辺を300kmの範囲で偵察すれば良いだろう。その後にヴィオラⅡでコーヒーをご馳走してもらうつもりだ」

『了解です。それでは一気に飛びますよ!』


 1時間も掛からずに、ヴィオラ艦隊の周囲の偵察を終えると、今度はヴィオラⅡへと向かう。


『レイドラ様との交信完了。「歓迎する。右舷装甲板を開く」とのことです』

「開き始めたね。開いたら、『乗船許可』を確認してくれ」


 同じ騎士団ではあるけど、アリスはリバイアサンの戦姫として使っているからね。他の陸上艦へ移動するときはそれなりの手続きが必要になってくる。

 とはいえ同じ騎士団同士だし、アリスを見誤るような団員もいないからなぁ。形式だけってことのようだ。

 開け放たれた装甲板から光の点滅が見える。

 準備完了、乗船を許可するとの信号だ。アリスも体の一角から光信号を出して応えているに違いない。


 アリスが高度500mほどの高さから矢が放たれるような勢いで、一気に船内へと飛び込んだ。

 それなりに暮らしていた船だからなぁ。今でもアリスの駐機台が残してあるぐらいだ。

 駐機台にアリスが停止すると、直ぐに会議室へと向かう。


 コンコンと扉を叩き会議室に入ると数人の男女が俺を待っていた。

 皆コーヒーを飲んでいるのに、1人だけコーヒーカップにワインを入れて飲んでいるのはアレクなんだよなぁ。

 まぁ、いつもの光景だから誰も気にしていないようだ。


「リバイアサンはまだ動きださないの?」

「昼過ぎを予定しているようです。このまま砦建設位置に直進する予定ですが、例の島で魔獣狩りを計画しています」


「確かカニも釣れると聞いたぞ?」

「何匹か釣り上げたいですね。たくさん釣れたらお土産を運んできます。それで、周辺状況ですが……」


会議室の壁に映し出された魔獣の種類と数の分布を眺める姿は、まるで先ほどとは別人だ。すぐにレイドラが艦隊進路をどのように変えるかを画像近くで1mほどの指示棒を使って説明を始めた。


「ディリーズ10頭なら問題はないんだが、北のサベナスが問題だな。足の速い戦機だけで倒すことも考えるべきじゃないのか?」

「戦機と戦闘艦で倒せるなら、この小さなディリーズの群れは私達で狩れるんじゃないかしら?」


 クリスは飛行機でやってきたんだろう。2機搭載されているから連絡機としても使っているようだ。


「そうね……。あまり無理はしない方が良いんでしょうけど、魔獣の種別と数が分かるのはありがたいわ。明日もお願いね」


 ドミニクの言葉に頷くと、目の前のコーヒーを頂く。

 まだ議論が続いているな。30kmほど先の獲物だから、戦機の調整を始めたみたいだ。

 30分ほどお邪魔したところで、リバイアサンへと帰投する。

 まだ12時前だから、軍の拠点を出発してはいないだろう。


「リバイアサンの進路図はアリスも見てるんだろう? 昼過ぎには出発できるということだから、進路方向の偵察をやっておこう」

『了解しました。大河周辺部までの偵察を行います』


 アリスが北西に進路を変える。

 音速に近い速度だから、それほど時間は掛からないに違いない。


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