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M-281 鑑定眼があるのかな


 拠点に戻る輸送船に2式の回答書をカテリナさんに届けてもらえるようマイネさんに頼んだから、拠点にいるカテリナさんに届いたに違いない。

 カテリナさんから、王都に戻る軍艦を経て学府の連中に渡るだろう。次はどんな質問が舞い込んでくるか少し楽しみだな。

 リバイアサンへの積み込みは、ドックの移動桟橋まで使って積み込みを急いでいるようだ。

 次々とやってくる輸送船からの荷下ろしで、桟橋はお祭り騒ぎなんじゃないかな。

 

 マイネさんとファネル様達と一緒にやってきた2人のネコ族のお姉さん達が腕を振るってくれたおかげで、いつもより豪華な食事になった。

 

 食事を終えて、リビングのソファーでくつろぐ俺達のところに、フェダーン様の副官がやってくる。どうやら状況報告ということらしい。


「ご苦労。現時点で12隻目か……。かなりペースが速くなったように思えるが?」

「資材の大型梱包ばかりですから。食材の第2陣は、2300時からを予定しております」


「長時間の作業だ。兵員たちの休憩は適宜取っているのだろうな?」

「2時間おきに30分を与えています。夜間は拠点の兵員を動員することで半数を休ませます」


 副官の答えにうんうんと頷いている。

 最後に「ご苦労」と声を掛けると、副官は足早にプライベート区画を去っていった。

 

「済まぬな。まだ指揮所が出来ておらぬ。明日には、指揮所で状況監視ができるであろう」


 スコーピオ戦の指揮所として有効に使えることが分かったから、それを元に少し機材などを変えたかもしれないな。

 その内に、お邪魔することになるだろう。


 俺達が手伝えることは殆どないから、早めにジャグジーに入ってベッドに入る。

 だいぶ荷下ろしに慣れたようだから、明日は本当に出発できそうだ。


 翌日の昼過ぎに、ヴィオラ艦隊が軍の拠点を後にして一路北へと向かっていく。

 アレク達が拠点の獣機たちと一緒になって輸送船への積み込みを手伝っていたらしい。ちょっとしたお小遣い稼ぎになったんじゃないかな。

 アレクの事だから、さっそくワインでも買いこんでしまったんだろうけどね。


 リバイアサンのデッキから手を振ると、ヴィオラⅡの船尾のデッキでアレク達も手を振ってくれた。離れ離れになっても同じヴィオラ騎士団員であることが俺達の誇りでもある。


「行ったようだな。我等も夜遅くには出発できそうだぞ」

「あまり急ぐことも無いように思えるんですが……」


「何を言う。星の海の西岸から遥か彼方の大陸の端……。誰もが夢見る土地だ。我等の代でその足掛かりができるのだからな。ブラウ同盟だけでなく、コリント同盟からも援助の話が来ているぞ」


 確かにこの大陸の東については、山岳地帯を除いてそれなりの探索が行われているようだ。もっとも、地図がいい加減なんだけどね。

 西には東とは違う何かがありそうな気がするのかな?

 あったとしても、古代帝国の遺産やまだ誰も知らない獣や魔獣なんだろうけどなぁ。

 案外、フェダーン様もロマンチックな人物であるようだ。


「そうそう、カテリナがやってくる。子供達の治療はすでに終えているそうだ。リンダとローザに今後の訓練についていろいろと話をしていたらしい」

「カテリナさんには通信機を頼んでいたんですが、そうなると誰が組み立ててくれるんでしょう?」


「カテリナの事だ。かつての弟子たちを使うのだろう。上手く行かぬ時にはリオ殿を頼るかもしれんぞ」


 そうなるよなぁ……。カップの残りのコーヒーを飲んだところで、リビングにとぼとぼと歩き出した。

 新たなコーヒーをマイネさんに頼んで、先ずは一服することにした。


「指揮所の方も何とか形になった。副官がファネル殿に操作を教えている。何日か過ぎれば自分で操作することも出来よう」

「ブリアント騎士団の連絡員も指揮所に詰めているのですか?」


「ブリアント騎士団の役目は少し先になるが、指揮所になれなくてはならんからな。副団長を含めて3人が詰めておる。大型スクリーンで桟橋の状況を食い入るように見ていたぞ」


 指揮所から桟橋と斜路周辺の様子、それにリバイアサンの監視所からの画像を見ることができる。砦建設の状況なら、指揮所から動かずとも十分に把握できそうだ。


 18時を過ぎると、皆が集まってくる。テーブルを囲むのは俺とフレイヤにエミー、ファネル様御夫妻とフェダーン様にユーリル様だ。

 王族で無いのは俺とフレイヤだけだからなぁ。とはいえここは俺達の船でもある。テーブルマナーは期待しないでもらいたいところだ。


 作業の進捗状況を話し合いながら食事をしていると、大きなトランクを持ってカテリナさんが現れた。

 荷物を自分の部屋に運ぶとテーブルに椅子を運んで座り込む。


「こちらに来ても大丈夫なのか?」

「ローザがいるから問題はないわ。それに1か月後には砦にやってくるわよ。戦機よりは期待できると思うわ」


「さすが、カテリナ様ですね。これで6王国の戦姫が動くのですね」


 ファネル様の奥さんの1人が、笑みを浮かべてカテリナさんを褒めている。あまり褒めるとその気になって次に何かを始めるんだよなぁ。


「さすがにローザを超えることはないでしょうね。でも戦機よりは遥かに優れた機動よ」

「ローザのお相手を探すのが難しくなりそうだな……」


「あまり政争に加わるのもどうかと……。ローザなら自分で相手を見つけるかもしれませんよ」

「リオ殿が、もう少し若ければと父王陛下が零していましたよ」


 長笑いを浮かべながら、ファネル様の言葉を聞き流す。さすがに俺とローザでは無理があるからなぁ。兄として頼られる存在でありたいところだ。


「リオ君の回答は届けたわ。多分老師も欲しがると思ったから、複写をして学府に預けておいたわよ」

「あれで答えになれば良いのですが……」

「さらに疑問がわくことになるでしょうね。でも、少しは彼らに考えさせることも必要だわ」


 直ぐに質問が来るわけではなさそうだ。

 どんな質問が来るか、一番楽しみにしているのはアリスかもしれないな。


「さて、私は指揮所に向かうとしよう。ファネル殿も就寝前に1度顔を見せるが良いだろう。リバイアサンの風呂を楽しむのも良いぞ。王宮の風呂とはいささか異なっておるがな」


 そういえばこのプライベート区画にはたくさん風呂があるんだよなぁ。大浴場が2つもあるし、各部屋にだってあるぐらいだ。

 だけど、部屋のふろは、あまり使われていないらしい。風呂は大きい方が良いってことなんだろうな。


「私が案内してあげましょう」

「叔母殿が案内してくれるなら、是非とも向かわねばなりませんね。それでは、明日またお会いしましょう」


 ファネル様達がユーリル様に連れられて、階段に向かった。入るのはジャングル風呂ってことだな。

 明日の夜は、この階の大きな風呂になるのだろう。なら俺達は、石像が並んだ風呂に向かおうか。


「ところで、そこにある古びた望遠鏡はそのままにしておくの?」


 フレイヤが早く片付けて欲しいのか、強い口調で言ってきた。


「陸港で見つけたんだ。デッキでこれを使いたかったんだよね」

「へぇ~、骨董品なのかしら? 中々品は良さそうね」

 カテリナさんが席を立って近くで眺め始めた。俺の玩具なんだけどなぁ……。


「えっ! まさか!! ……リオ君、これいくらで買ったのかしら?」

 音がするような勢いで、カテリナさんの顔を俺に向けられた。


「確か、銀貨5枚でしたよ。俺の持ってる双眼鏡は低倍率ですから、少し倍率が高い物が欲しかったんです。それだと接眼レンズで倍率を変えられますし、三脚も付いてますからね」

「銀貨5枚……。店の店主も価値が分からなかったんでしょうね。これはエルダーの作品よ。フェダーンなら知ってるでしょう?」


「名工エルダーの名はウエリントンだけでなく、ナルビク王国にも知られているぞ。父王陛下もエルダー作の拡大鏡を玉座の近くに置いていたのを覚えている。まさか、その望遠鏡がそうだというのか?」

「ええ、間違いないわ。魔法陣の中にエルダーの名が刻まれているの。自分の名を刻み込んでも魔法陣の効果がそのままなんだから、名工と言われるだけのことはあるわね」


 魔法陣なんて物が刻まれていたとは知らなかったな。全体を細密画のような彫刻が刻まれているのは分かっていたんだが結構汚れていたからなぁ。汚れの中に埋もれていたんだろうけど……。


「高価……、なんですか?」

「オークションにかけるなら、金貨100枚から始められるわ。運が良いというか、怖いもの知らずというか……」


「それなら、片付けなくとも問題なさそうだな。エルダーの作品を普段使いするとは……」

 フェダーン様が笑い出した。そのまま席を立ってエレベーターに向かって歩き出したけど、まだ笑っているぞ。

 そんなにおかしな話なのかな?


「作者名を金属プレートで作ってあげるわ。その望遠鏡に下げておきなさい」

「そんなに有名な作者なんですか?」

「知らないことは、まったく知らないのね? でも良いわ。これからしっかりと教えてあげる!」


 4人で、お風呂に行くことになったけど、湯船につかって教えを聞くとは思わなかったな。

 でも、エミーもフレイヤも名は聞いたことがあるらしいけど、エルダー氏の業績についてはよくわからなかったらしい。

 カテリナさんの話を、2人が湯あたりするまで聞く羽目になってしまった。


「あらあら、リオ君。2人をベッドまで運んでくれない?」

「カテリナさんの話を真剣に聞いてましたからね。それにお湯も少し暑かったんじゃないですか」

「仕方がないわね。続きは明日に話してあげましょう」


 まだまだ続くんだろうか? 少なくとも1時間以上湯船に浸かってたんだよなぁ。

 バスローブに包んでそのままベッドに運んであげた。

 少し髪は濡れたままだがタオルを巻いておいたから、枕が濡れることはないだろう。


 俺とカテリナさんはバスローブ姿でデッキに出ると夜風で火照った体を冷やしながらワインを楽しむ。

 リバイアサンのドックから漏れる明かりが周囲を明るく照らしている。荷下ろし作業はまだまだ続くんだろうな。


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