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M-278 陸港に集合


 10日間(俺にとっては8日間)の休暇が終わり、バルシオスに全員が乗り込んで王都の港に向かっている。結局マイネさんに用意してもらったハンモックで1度も昼寝をすることが出来なかった。

 昨日の夕暮れ前にマイネさんが畳んでいるハンモックを恨めしそうに眺めているしか無かったのだが、次にやってくるときは是非とも昼寝をしなければと夕日に向かって固く誓ったんだよなぁ。


「これでしばらくは、魔獣狩りの日々になりそうだな。次にやってくるのは2か月ほど先になりそうだ」

「俺の方は、何時になるか分かりませんよ。少なくとも砦の形にならないとリバイアサンを移動できませんからね」


 船尾の甲板で俺達男性だけでワインを楽しむ。

 昼食は先ほどサンドイッチを摘まんだから、今夜の夕食は王都のホテルということになるんだろうな。


「メイデンさんがいるんですから、少し遠出も出来るんじゃないですか?」

「メイデンさんは、ドミニク達と行動を共にすると言ってたよ。あの機動だからねぇ、ドミニクも安心できるんじゃないか」


 ベラスコの問いに答えたら、アレクが驚いている。

 どうやら、俺達の方に留まると思っていたらしいんだけど、ドミニクにメイデンさんを移動すると昨夜離してくれたからなぁ。

 じっとして魔獣を待つなんて、確かにメイデンさんには苦手だろうし、飛行機と戦闘艦を使った偵察なら、安全な狩りをすることができるだろう。


「変わった魔獣がいたら、写真を撮っておいてくださいよ。北の回廊の魔獣というのも興味があるんですよねぇ」

「確かに、それは必要かもしれん。できれば図鑑並みの情報にまとめて欲しいところだ」


 俺が行わなくとも、アリスが分類までしてくれそうだ。

 確かにじっとしているよりは面白そうな仕事になりそうだな。


「ところで、星の海には大きなカニが棲んでいるんですよ。ローザ達がドックの斜路を開いてクレーンを使って釣り上げていたんですが、珍味だと言ってました。砦の建設予定地に着く前に一度釣ってみようと思っているんですけど……」


 俺の話に、2人が興味深々な表情で俺に顔を向ける。


「カニは煮るのが一番だ。是非とも釣り上げてこい。隠匿空間ならアリスで一飛びだろう」

「カニですか……。しばらく食べてないんですよ」


 別荘で散々エビを食べてた気がするんだけどなぁ。アレクもカニやエビなら食べられるというんだから、魚の何が嫌いなのか良くわからなくなってきた。

 ここは頷いておこう。ローザに釣れるんだったら、俺にだって釣れそうだからね。


 王都の港に到着して、クルーザーを下りる。

 事務所に係留手続きをしに出掛けたレイドラが戻ってきたところで陸港近くのホテルへと馬車で移動する。

 部屋に荷物を置いたところで食堂に向かったのだが、大人数だからということで第2食堂に案内された。

 俺達のテーブルマナーは決して良いとは言えないから、こっちとしても大助かりだ。

 各自思うがままに夕食を取り、最後のワインを飲みながら明日の予定をドミニクから聞くことになった。


「ホテルのチャックアウトは10時になるわ。各自自分の船に16時までに乗り込んで頂戴。リバイアサンの乗員は20時までに陸港の第1桟橋の第1待合室に集合。士官クラスが第1で、兵員クラスは第2を使うらしいわ。マイネさん達は第1で問題ないとフェダーン様の許可を得ているから、皆と一緒で大丈夫よ」


 となると、明日は買い物ということになるんだろうな。

 夕食も食べておいた方が良さそうだ。

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              ・

 翌日はフレイヤ達に連れられて、陸港の焦点を巡ることになった。

 全員が魔法の袋を2つ持っての買い物のようだけど、そんなに買うものがあるんだろうか?

 俺はタバコをたっぷりと仕入れて、少し高価なワインと蒸留酒を数本買い込んでおく。マイネさん達がプライベート区画用に仕入れているはずだけど、たまには部屋で飲みたいからね。

 その他に新しいサングラスと雑貨屋に飾ってあった三脚付きの望遠鏡を手に入れた。

 接眼レンズを変えることで、10倍と20倍になるらしい。リビングのデッキに置いてあちこち眺めるのも面白そうだ。


「リオの魔法の袋にはまだ入るのかしら?」

「俺も2つ持ってきたからね。1つはまだ何も入ってないよ」

「なら、これをお願い!」


 女性達の荷物次々と入れられたから、直ぐにいっぱいになってしまった。

 まあ、これ以上買い物があるわけでは無いからなぁ。

 魔法の袋をくるくると丸めて、腰のバッグの中に入れておく。


 途中で大荷物を持たされたベラスコに合ったけど、彼女の方もフレイヤ達と同じみたいだな。となるとアレクもどこかで荷物板をしている気がするなぁ。


 18時を過ぎたところで陸港のレストランで夕食を取る。

 ゆっくり食べても、集合時刻には第1待合室に到着できそうだ。

 レストランの料理は、マイネさん達の料理よりは少し落ちるけど量は十分だ。

 休暇の出来事を話しながら、食事を終えるとすでに19時を過ぎている。

 さて、行ってみるか。あまり遅いと文句を言われそうだからな。


 陸港の案内図を見ながら桟橋に出ると、桟橋に併設してたくさんの待合室が並んでいる。第1というだけあって、最初の待合室が目的の場所だ。

 受付の女性兵士に所属を告げると、直ぐに中に案内してくれた。数人が据われるテーブルセットが10セット以上置いてある。

 その中の一番大きなテーブルに案内されたのだが、先に座っていたのはフェダーン様とファネル王子達だった。

 慌てて姿勢を正して挨拶すると、フェダーン様が笑い声を上げている。


「ハハハ……。沿いかしこまらずとも良い。我等はリバイアサンの客なのだからな」

「それはそれというやつです。騎士団ですから礼儀が成っていませんが、それなりに王族には敬意を払わねばなりません」


「とりあえず席に着くが良い。……ファネル殿、リオ殿は辺境伯という爵位を持ってはいるが、騎士団の騎士としての誇りをいつも持っている。王宮貴族とかなり異なるが、それは気にせずとも良いぞ」

「ファネルとお呼びください。戦姫の騎士であるなら地位は私を凌ぐでしょう」


「ファネル様と呼ばせて頂きます。御覧の通り警護も礼儀もなっておりませんが、そこは中規模騎士団であるということで納得して頂けると幸いです」

「そうもいきませんよ。ある意味義兄弟でもありますからね。長いお付き合いになると思いますから、私を上手く使うことに心掛けて頂けたらと思います」


「殿方のお話は済みまして? 私達も同行することにしました。リオ殿の奥方は大型艦を動かしておられるのですよね。一度その姿を見せて頂けないでしょうか」

「きっと驚きますよ。窓のない場所で動かしているんですから」


 エミーの言葉に、ファネル様まで驚いている。

 フェダーン様が笑みを浮かべているところを見ると、リバイアサンの画像を見せたことが無いのかな。


 エミーが元王女だとは知っているみたいだな。ファネル様も盲目時代のエミーを気の毒に思っていたのかもしれない。降嫁後に視力が回復した話を聞いて自分の事のように喜んでいる。

 愚王にはならないだろう。どんな貴族が周辺に群がるか分からないが、トリスタンさんのような優秀な片腕を国王陛下達が見繕っているに違いない。


「副砲が片舷に16門……。軍の戦艦と同クラスということでしょうか?」

「正しくは2連装砲塔が16基だ。副砲ではあるが軽巡洋艦の主砲に並ぶ口径だぞ。主砲は口径で表すのが難しいな。だがハーネスと同盟艦隊を一撃で足止めできるほどの代物だ」


「軍の戦艦を超える大きさだと?」

「桟橋に停泊してある私の軽巡を見ただろう? あの軽巡がリオ殿の乗る陸上艦には数隻搭載できるのだ。古代帝国の遺産をヴィオラ騎士団が発掘して動かしておる。発掘した品物は発掘した者の所有物。騎士団には過ぎたものと思うが、動かすことができるのはリオ殿が古代帝国の文字を読み解くことができたため。他者が力づくで奪っても動かすことなどできぬからな」


フェダーン様の話を聞くうちに、だんだんとファネル様の目が輝いてきたのが分かる。ロマンを求める性格なのかな? 隣の奥さん達が冷ややかな目でファネル様を見ているんだけど、気が付いていないようだ。


「ところで、リバイアサンはまだ隠匿空間の南に置いたままなのか?」

「すでに自動航行の途中です。軍の拠点近くにやってきたところで乗り込んで拠点の北部に停止させるつもりです」


「荷の搬入を考えればあまり離したくはないが、あの巨体だからな。拠点から1ケムほど北に留めて欲しい」

「了解です。今夜にでも現在地を確認しておきます」


 俺とフェダーン様の会話にファネル様は目を見開いたままだ。


「確かに父王陛下が言われる通りですね。常識でリオ殿を判断することは難しそうです」

「確かに常識をどこかに忘れているような騎士ではあるが、貴族達よりも民衆を考えていることは確かだ。国王陛下がリオ殿に与えた領地はどの貴族もその位置を知って首を振っていた。だが、10年後には彼らが羨むに違いない。領地経営も常識外れもいいところだ。ヒルダがその話を聞いて笑みを浮かべていたほどだ」


「ヒルダ様がですか! それは、将来が楽しみですね」


 とりあえず数年後の黒字を見込めれば十分だろう。

 神殿から和解金をたっぷりと貰ったからね。


「ファネル殿付きのメイドは2人。マイネ達と合流しているはずだ。旗艦の2階層がリオ殿の館になるのだが、客室の広さは離宮を超えるぞ。リオ殿の爵位は辺境伯、王族を招くのに十分であろう」

「おほめ頂いて恐縮ですが、暮らしているのは爵位に無頓着な騎士団員です。お見苦しいこと多々あると思いますが、その辺りは笑って見過ごしていただけると幸いです」


「義弟の館にお邪魔するのは私達の方ですから、あまりお気遣いなきようお願いいたします。妻達もリオ殿の奥方と語らうのを楽しみにしてますから」


 エミーはともかくフレイヤの方は直ぐにメッキが剥がれそうだ。

 大人しくしていてくれると良いんだけどね。


 帝國を0分ほど過ぎたところで、フェダーン様に全員が揃ったとの報告が入ってきた。

 2日間は軽巡の仕官室で大人しくしていなければならないな。

 フェダーン様の副官の案内で、ファネル様達の後ろに続いて軽巡へと向かう。


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