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M-264 乗船には時間が掛かる


 子供達にとっては、ローザは姉のような存在になるのだろう。

 たくさんの妹と弟が出来て嬉しそうな顔を俺達に見せてくれる。最初にあった時のような少し尖った感じは無くなっているし、他者の言葉も真摯に効くことができるようになってきたんじゃないかな。

 フレイヤ達を反面教師にして学んだのかもしれないけど、だいぶ変わったと思っているのは俺だけではないと思う。


「明日から出掛けるのであろうが、今回は同行できぬ。何時もの哨戒ならば兄様がいれば問題あるまい。狩りはメイデンに任せるのじゃな」

「次の休暇は、隠匿空間に寄らずに真っ直ぐ軍の駐屯地へ行くけど、ローザ達はどうするの?」


 出発を明日に控えて、珍しくローザが別荘にやって来た。

 子供達と寝食を共にしているのだが、エミーとしばらく会えなくなるからやって来たんだろう。


 食後のワインをフレイヤ達と一緒に飲んでいる。

 リンダが迎えに来るまで、エミー達と話を楽しむつもりのようだ。


「私も残ることにしたわ。さすがに、このまま離れるわけにもいかないでしょうし。でも、しっかりと子供達の脳下部に出現したわ。さすがにローザよりは小さいけれど、さほど違いはないから、戦機並みに稼働するとおもう。様子を見て、子供達に変化がなければ合流するわ」


「何か支障が出る可能性があると?」

「先例のローザを見る限り問題は無さそうだけど……」


 治験例が人間ではローザだけだからなぁ。その前は鼠で2例試したそうだ。ある意味マッド・サイエンティストそのものだからなぁ。


「やはり、将来は戦姫は稼働できなくなりそうですね」

「それは予言かしら?」


「そう思っただけです。かつては動かせたということなんでしょうが、それを動かせる人間が少なくなっているということは、将来は動かなくなるんじゃないですか?」

「どの王宮も、それを危惧しているわ。今回の成果を知ってどの王宮も沸き立つでしょうね。それは2度は起こらないと告げるのも気の毒ではあるんだけど……」


 俺の血液を使って、戦姫を動かす脳内リンクを作り上げようなんてよくも考えたものだ。

 結果的にはローザで実証されたのだが、今回の施術結果を見ると各王国からカテリナさんを見る目が違ってくるだろう。

 大金を積んで抱え込もうなんて考える王国も出て来るんじゃないか?


「ガネーシャが是非とも教授願いたいと言ってきてるんだけど、封印した方が良さそうね。リオ君の命を削っての施術と言えば納得してくれるんじゃないかしら」


 怪しい注射の中身は俺の血液らしいからなぁ。

 そんな言い方もできるのだろうが、そうなると俺が絶滅危惧種並みの扱いになりそうだ。


「ヴィオラ騎士団に迷惑が掛からないようにお願いします」

「もちろんよ。我が子の騎士団だし、リオ君だっているんだから」


 何となく怪しく思える言葉だけど、俺達に実害がないようにして貰えば問題は無いだろう。

 だけど……、ローザを含めて、子供達の将来が戦姫の稼働によって決まってしまったことも確かだ。かなり束縛を受けそうに思えて仕方がない。


 翌朝は、商会の貨客船まで動員してリバイアサンへの乗船が行われる。

 ドミニクとクリス達とはしばしの別れだ。

 俺にキスをして各々の陸上艦に乗り込んでいったから、フレイヤ達の表情がこわばっている。


 そんなフレイヤに「頑張れよ!」と言ってアレク達も乗り込んでいった。

 アリスはヴィオラを離れて亜空間で待機している。そろそろ俺達もでかけないとな。

 リバイアサンのドックを開放しないと入れないからね。


 桟橋から離れて人気がない場所に行くと、アリスのコクピット内に転移する。

まだ亜空間らしいから、リバイアサンの上空に移動して貰い素早く周囲100kmの範囲の状況を確認した。


『南、80km地点にチラノが3体だけです。各艦への伝達を終了しました』

「御苦労さん。リバイアサンの意着陸台を展開して、着陸してくれないか。それとドックへの受入れを始めて欲しい」


『離着陸台の展開を始めました。ドックへの陸上艦収容シーケンス開始を生体電脳に指示。生体電脳によりドックが開かれます。……ヴィオラより連絡。「南のチラノの詳細を知らせ」以上です。早速狩りを始めるのでしょうか?』

「そうじゃないか。とりあえず調べてこよう。陸上艦2隻だからね。チラノ3体は容易に狩れると考えたに違いない」


 離着陸台でのんびりしてようと考えたんだが、そうは上手くいかないようだ。

 アリスを駆って南に向かうと、3体の2足歩行で歩く肉食魔獣の姿を上空から監視する。


『アウロスのようですね。体高は16m程あるようです。この種としては大型になります。移動方向は南南西に毎時12km。星の海を囲む緑地帯までは200kmほどありますから、明日早朝に狩ることになると推察します』

「情報をレドニアに送ってくれ。早速狩りの打ち合わせを始めるんじゃないかな」


『情報を送りました。……返信「感謝する」以上です』


 回廊を出てきたヴィオラが、真っ直ぐ無波に向かって進んでいく。

 騎士団は魔獣を狩るのが仕事だ。

 リバイアサンは魔獣狩りには大きすぎるが、搭載した陸上艦を使って広範囲に魔獣狩りを行うことができる。要は使い方ということだろう。

 メイデンさんもいるし、戦機輸送艦を使って獣機を数十km範囲に素早く移動ができるからね。

 今回は資金集めをするために、魔獣を狩るようエミーにお願いしておこう。


 離着陸台に下りて、アリスを何時もの待機架台に移動する。誰もいないからアリスのコクピットがガラいたところで床に飛び下りた。

 乗船状況を離着陸台からタバコを咥えながら見ていると、ドック近くに駆逐艦が停泊している。どうやら桟橋の端にある昇降デッキまで使って乗船しているようだ。

 千人近い乗船だから、ちょっと大変だな。

 軽巡は先に入ったのだろう、貨客船乗船しようとドックに向かって動き出したようだ。


 エミー達は戦機輸送艦で先行しているはずだから、プライベート区画のリビングで待っていよう。

 エレベータを乗り継いでプライベート区画に向かう。


 まだ誰も来ていないけど、コーぐらいは自分で入れられる。

 お湯を沸かして、マグカップにコーヒーを注ぎ、ソファーでドック周辺の状況を確認しながら頂くことにした。


 遠くに見える駆逐艦は、周辺監視ということになるんだろう。

 一応、周囲の状況は伝えてあるけど、フェダーン様がいるからには最低限の警備ということなんだろうな。

 コーヒーを飲み終える頃。マイネさん達が大きな荷物を運んで現れた。


「エミー様達の荷物は下まで運んでもらったにゃ。後で部屋に運んでおくにゃ」

「申し訳ないけど、お願いするよ。ところで昼食はどうなるのか聞いてない?」


「お弁当を運んできたにゃ。食堂は夕食から営業するらしいにゃ」

「夕食までには動き出すだろうな。でもまだ時間が掛かりそうだ」


 どうやら乗船が終わったらしいけど、まだ配置に付くには時間が掛かるに違いない。

 動き出すには、もう2時間程掛かるんじゃないかな。


 リバイアサンが南東に向かって動き出したのは、隠匿空間を出て5時間後だった。

 これを長いと見るか、短いと見るか……。

 現状では、許容できる時間ということになるんだろう。リビングのデッキからは南西方向の荒れ地が見えるだけだ。

 毎時15kmほどの巡航速度で10日程進み、西に回頭して星の海に進む。

 さて、明日は狩りができるかな?

 メイデンさん達は、準備を進めているに違いない。


 夕食時間になると、夜間当直に操船を任せてエミー達が帰ってくる。

 フェダーン様も一緒だが、今日はカテリナさんがいないから食事が終わるとおr達とワインを1杯付き合って指揮所に戻っていった。

 フェダーン様も北の回廊計画の準備で忙しいようだ。


「魔獣がいたら狩りをするんでしょう?」

「エミー達の判断に任せるよ。朝食が終わったら、リバイアサンとヴィオラの周辺状況を広範囲に確認してくるつもりだ。詳細な情報は飛行機を使って欲しいな。彼等もじっとしていると腕が鈍るだろう」


「基本は戦闘艦と戦機輸送艦を使うつもりですが、狩りの時には待機してくださいね」

「それぐらいは言われなくともやるつもりだよ。戦機が今回は無いからね」


 フェダーン様もリバイアサンに搭載していた戦機を隠匿空間に置いたままだ。北の回廊計画実施時に故障など起こさぬよう、隠匿空間の軍の工廟で点検をするらしい。

 ヴィオラ騎士団の戦機は、カーゴ区域でいつもドワーフ族が点検をしているけど、軍の点検と内容が異なるのかな?


「10日後の回頭後は西に進み、その後南南東に進む計画です。カテリナ様は15日後に飛行船を使ってリバイアサンへやってくると、午後に連絡がありました」

「星の海へは、一緒に行きたいってことだね。ローザ達は巡洋艦を使って移動するのかな?」


「案外、飛行船かもしれませんよ。老師の事ですから、大型飛行船の改良を進めていると思います」


 確かに……。

 この頃、あまり姿を見せないけど、カテリナさんの師だけあって、いまだに探求心が衰えることがない。

 王宮ではできないことも、隠匿空間なら人知れず研究に打ち込めるだろう。

 あのロボットを1台進呈したのは不味かったかもしれないな。


 エミー達を連れて大きなジャグジーで体を休める。

 火照った体を私室のデッキで冷ましながら、冷たいワインを頂く。

 体が冷えたら、再びジャグジーに戻れば良い。

 リバイアサンは、大きいけれど便利な場所だ。


 翌日。朝食を終えるとアリスでしょおへんの状況を確認する。アリスがリアルタイムでリバイアサンに情報を提供しているから、後はエミー達に任せよう。

 次に南に向かったヴィオラを追い掛け、周囲200kmの魔獣の状況を確認する。


 丁度アレク達がアウロス3頭を狩ろうとしているところだった。戦機の数が増えて、陸上艦が2隻だか、アレク達には容易な狩りだろう。

 上空でアリスの手の中で一服しながら見物する。

 獣機が魔獣の解体を始めたところで、ヴィオラのカーゴ区画に入り、ドミニクに周辺の状況を報告する。


「ありがとう。これなら、昼過ぎにこのトリケラの群れを狩れそうね」

 

 俺の報告を聞いて魔獣の位置を地図へ記入しているレイドラを見ながらドミニクがつぶやく。

 運んでもらったコーヒーを飲みながら「無理はしないように」と言ったんだけど、ドミニクは笑みを浮かべるだけだった。


「風の海から3日程離れた位置を探ってみるつもり。他の騎士団もいるでしょうから、魔獣の状況も教えてあげるわ」

「大規模騎士団になってしまったからなぁ。中規模騎士団の狩りも気にすることになってしまうんだよなぁ」


「持ちつ持たれつの関係になりそうね。尊敬される騎士団になるよう頑張らないと……」

「13番目の騎士団。中々スタンスが難しいね」


 コーヒーのお礼を言って、早々に立ち去ろう。

 うかうかしているとアレクにたっぷり飲まされそうだからなぁ。


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