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M-261 領地はどうなってるんだろう


「早ければ1か月後には建設が始まるのね」

「建設期間中は、リバイアサンを尾根の入り口に置きたいと言っていたよ。契約はドミニクに任せると言って帰ってきた」


 しょうがないなぁと言う顔をしているけど、ヴィオラ騎士団長はドミニクの筈だ。


「停止させておくなら、何もすることが無いんじゃない?」

「そうもいかない。周囲の偵察は必要だろうし、輸送艦隊の安全も図る必要がある。それに魔獣が来たら退散させるぐらいはしないといけないんじゃないかな」


「常に制御室で待機することになりそうね。火器部門も砲塔区画で待機と言うことになりそうだわ」

「それに見合った金額と言うことになるんだろうけどね。あまり欲を出しても良いことは無いんじゃないかな」


 夕食を終えて、ソファーでワインを楽しむ。

 フェダーン様との打ち合わせに付いて報告すると、直ぐに今後の対応についての話し合いが始まった。

 決めるのはドミニクだから、皆の話を聞いていれば良いだろう。


 3つの砦が完成すれば、星の海の西に砦の建設が始まる。

 何年先になるかは分からないけど、それまでにローザ達は戦姫を動かすことができるのだろうか?

 上手く動くなら、西の砦の防衛はかなり容易になる。その砦を起点にさらに西へ魔獣狩りを進められそうだし、補給と整備、それに魔石の売買で賑わうだろうな。

 できれば星の海を取り巻く緑地帯の外れに作りたいものだ。

 荒れた大地を眺めるより、緑とその奥に広がる星の海は荒くれ揃いの騎士団の団員の心を静めることもできるだろう。


「契約の詳細は私の方で行うけど、実際の対応はリオに任せるわ。リバイアサンの収支は魔獣狩りの分を上回っているから、建設現場でドン! と構えていても問題は無いと思うし、ヴィオラ周辺の状況は今まで通り定期的に知らせて頂戴」


「今まで通りってことかな。建設現場に近付く魔獣は、メイデンさんに任せても良いよね?」

「魔獣狩りを行うの? その辺りはエミー達の判断に任せるわ」


 これで、メイデンさんのガス抜きもできそうだ。エミー達も状況監視に力を入れてくれるだろう。


 彼女達の話題は尽きることが無いようだ。

 先にジャグジーで汗を流そう。


 ジャグジーでのんびりと池の波紋を眺めていると、バシャンと飛び込んで俺に体を合わせてきたのはカテリナさんだった。

 

「1人とは珍しいわね」

「次の航海の計画を話しているようですから、俺は余り……」


「子供達5人だけど、改善の兆候が表れたわ。今日で2日。後3日措置を行って状況を見守るつもりだけど、戦機ぐらいにまでは動くんじゃないかしら」

「そうなると、急に動きが加速するんじゃないですか?」


「そうね……。騎士団も時代に乗り遅れないようにしないと、いつまでも東の砂の海から離れられないかもしれないわね」


 そう言って俺の体をひっくり返すと、自分の体を乗せてくる。

 まだ誰も来ないようだからしばらく付き合うしかなさそうだ。カテリナさんの肩に手を伸ばして引き寄せる。

 すぐ目の前にカテリナさんの顔がくると、笑みを浮かべてさらに近付いてきた……。

               ・

               ・

               ・

「そろそろやってくるかしら? さて、明日もあるでしょうから……」

 

 最後に軽くキスをすると、ジャグジーを出て行ってしまった。

 ネコ並みの気紛れ屋だと思ってしまう。

 

 ジャグジーを出て、デッキでワインを飲んでいると、アレクがグラス片手に現れた。

 テーブル越しに腰を下ろすと、今日の釣りの成果を教えてくれた。


「結構育っているな。あれなら食堂に出しても問題はない。こっちは上手く言ってるが、領地の方はどうなってるのか気になるところだ」

「漁船を渡してるんだから問題は無いと思うけど、確かに状況は伝わってきませんね。明日にでも状況を見てきますよ」


「仮にも辺境伯だからな。経営を他人任せにするようでは王都の貴族と変わらん。領民と一緒に汗を流すのが名君だぞ」


 笑いながらだから、説得力はないと思うんだけど……。

 気にはなるよなぁ……。やはり一度様子を見て来るか。ついでに軍の訓練所の様子も気になる。

 何と言っても、ハーネスト同盟軍の侵攻を遅延しなければならない。

 侵攻阻止は現状の国力では不可能だが、遅延なら可能だ。

 その貴重な時間で、ブラウ同盟艦隊の派遣ができるだろう。


「次の休暇は長いだろうし、王都に向かうはずだ。今度は大物釣りが出来そうだな」

「クロネル部長が期待してるんじゃないですか?」


「ハハハ、そうだろうな。だが、例の話もあるんじゃないか? 12騎士団もそれなりに期待してるだろう」


 ある意味騎士団の食料基地だからねぇ。

 だけど、そんなに早く軌道に乗るとは思えない。数年先を期待すべきじゃないかな。


「直ぐに生産が始まるとは12騎士団も思っていないだろう。だが、彼等も来たの回廊計画とリンクしているのは感ずいているかもしれないぞ。

 さすがはリオだな。長期計画を立てて周囲の流れを上手くリードしている。

 中規模騎士団とは名ばかりの騎士団をここまでにしてくれたんだ。その動きの中で活躍できたことは俺の誇りでもある。

 まだまだ現役だ。西の大地で魔獣狩りができる日を楽しみにしてるぞ!」


 腰を上げてテーブルに身を乗り出したアレクが俺の肩をポン! と叩くとデッキを出て行った。

 酔ってたのかな?

 だけど、かなり本音のところがあったはずだ。

 北の回廊ができることで、西の広大な大地で狩りができると皆も期待しているのだろう。


「ここにいたのね! もう、だいぶ遅いのよ。明日も忙しいんだから」

「分かったよ!」


 フレイヤに手を引かれて自室に向かう。

 明日も休日の筈なんだが……、あの後で何か仕事の相談があったんだろうか?

 両側から美女に抱き着かれるのは、嬉しいんだけど……。


 翌朝は何時もの通り俺が一番先にベッドを出る。

 すっかり寝入っているから、シーツを掛け直してシャワーを浴びた。

 リビングに向かうと、優雅にお茶を飲んでいるフェダーン様と目が合ってしまった。


「おはようございます」と挨拶をして、何時ものソファーに腰を下ろした。


「子供達が戦姫を動かせると、カテリナさんから聞きましたが」

「とは言っても、かなりぎごちないことは確かだな。あれでは足手まといになりかねん。

 カテリナは訓練次第と言ってはいるが……」


 否定的な話をしているけれど、顔がほころんでいる。

 予想以上の結果と言うことなんだろうが、そうなると欲も出て来るんだろう。

 

「午前中はカテリナの措置があるが、午後はローザが訓練をしてくれる。良い王女に育っているな」

「そろそろ相手を……、なんて考えていませんか?」

 

「ローザが4年早く生まれておったらと考えぬ日は無かったぞ。……だが、今ではこのままで良いと思うようになった。

 無理な輿入れの話はしまい。ローザの思いのままにが。国王陛下の望みでもある」

「とはいえ、制約が1つ……」


「それは仕方あるまい。その柵の中での自由ということだな」


 マイネさんが運んできたマグカップはまだ熱そうだ。

 その前にタバコを取り出すと、火を点けた。


 ローザの自由は、ウエリントン王国内でと言うことだ。これはさすがに致し方あるまい。戦姫を自在に操るまでになってしまった。

 他国にローザが輿入れすれば、一気にその王国の戦力が上がってしまう。


「今更ながら、平民で良かったと思ってます」

「今は辺境伯。そうもいかぬぞ」


「例の話はドミニクと調整してあります。契約はドミニク、動くのは俺になります」

「了解だ。これで輸送が始められる。次の休暇が終えた時が工事の開始となろう」


 砦建設は全て王国側の仕事になるから、俺達が準備する物がないのが良いところだ。


 マイネさんが用意してくれた朝食を頂き、領地を見て来るとマイネさんに告げて別荘を出る。

 視察時間より、アリスのところに往復する時間の方が長いんじゃないかな?

 自走車もあるんだが、運転したことがないからなぁ。

 事故でも起こしたら大変だから、歩いて行くしかないんだよね。


 散歩する人達と、すれ違う度に軽く頭を下げる。

 騎士団の桟橋に着いたところで、事務所にアリスを外に出すことを告げた。

 桟橋を登って、ヴィオラの船内に入るとカーゴ区画に向かう。既に舷側扉が開かれているところを見ると、待機中のドワーフに連絡が行ったんだろう。


「2時間程で戻ってくるよ」

「たまに入り口近くまで魔獣がやってくるそうですよ。もっとも、今朝の連絡では周囲に異常はないそうです!」


「了解だ!」 ドワーフの若者に答えると、タラップを上り、アリスのコクピットに納まる。


「南西の領地を見てこようと思う。ついでに訓練所とハーネスト同盟艦隊の動きもね」

『了解しました。回廊を出て直ぐに上昇します』



 舷側の扉から外に出ると、地上滑走モードで隠匿空間の出口に向かってゆっくりと滑空していく。

 陸上艦の専用道路は横切る人がたまにいるのだが、今日はアリスを見て立ち止待って見上げているようだ。

 この世界で最高の性能を誇る戦姫だからだろうな。それにロールアウトしたばかりのように機体の光沢を失っていない。

 人々が戦姫と聞いて思い浮かぶ姿そのものと言うことなんだろう。

 だけど、アリスの話ではこの世界で言われている戦姫とは異なるようだ。たまたま似ているということになるのだろう。


『回廊を抜けます。そのまま上昇しますので体を固定します』

「任せるよ。先ずは領地の方からだ!」


 シートが少し深くなり、体尾包むようにシートが動き出した。

 右手のジョイスティックを引くと、体に強いGが掛かってきた。全周スクリーンに映し出された足元の光景がどんどんと遠ざかる。

 一気に高度1万mに上昇したところで、音速の3倍の速度で南西を目指して飛行する。

  

 亜空間移動も可能なんだが、やはりあちこち見ていきたい。

 たまに陸上艦が見えるんだが、騎士団の様だな。ブラウ同盟艦隊は俺の飛行経路にはいないのかもしれない。


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