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M-249 ヘビを見付けた


 テーブルの傍に仮想スクリーンが現れる。

 プロジェクターをテーブルに乗せると自動的に現れたから、アリスが解析と推測を終えたということなんだろう。


『これが振動解析の結果です。やはり地中に何かありそうですね』


 島の中心より南に細長い物体が周囲の青や紫の中で赤く浮き出していた。


「大きさはどれぐらいかしら? かなり大きそうに見えるけど」


『三次元画像に切替えます。このような形状で地下30メルト(45m)付近に埋もれています。推定体長120メルト(180m)直径20メルト(30m)ずんぐりしてますがヘビのような形状です』

「ここにも遺産か……。深い場所ではあるが島ということであるなら発掘も可能に思える。カテリナ、どうする?」


 2人が過去を見合わせて考えているようだけど、かなり深いんだからそう簡単に見つかるとは思えないんだけどなぁ。


「一番の問題は、リオ君の疑問をハーネストの魔導師達が感じるかどうかになりそうね。それに、先ほどのリオ君の話もかなり意味深ではあるわ」

「ダウジングが可能な深さ……? いや、なぜアルゴルが集まるかということか!」


「まだ生きているのよ。発掘することで寝た子を起こしかねないわ」

「しかし、魔道大戦でヘビのような魔獣の話は聞いたこともないぞ」


「それだけ、後期と言うことになるんでしょね。もしくはそれほど大戦への影響が無かったのかもしれないけど、いまだに周囲に影響を与えているとなれば魔気を使った動力で稼働していたと考えられるわ。導師の見解を確認した方が良いのかもしれないわ。オルネアの事もあるし、リバイアサンに来てもらいましょうか?」


 導師には大型飛行船を作って貰いたかったんだけどなぁ。

 カテリナさん達は、導師をかつての恩師とも思っていないように思えるんだよなぁ。

 でも、帝国の遺産がこれほど見つかったとなるなら、直ぐに飛んできそうにも思える。

 老境に入っているんだろうけど、いまだに研究熱心だからねぇ。


「とりあえずは、当初の予定通りにオルネア周囲に散在する物体の回収ということで問題あるまい。ハーネスト同盟の調査艦隊が、この島とオルネアの沈んでいる海域に到達するには1年以上先になりそうだ」


 まぁ、現状でも問題は無さそうだ。

 だけど、仮眠しているのが気になるんだよなぁ。未だに一部の機能が動いているとなればリバイアサンと同じように、帝国内縁の中期以降に作られたもので間違いは無さそうだ……

 待てよ? リバイアサンの記憶槽に記録があるかもしれない。

 あるとするなら、リバイアサンと同じ時期、無ければさらに後の代物と言うことになる。


「アリス、リバイアサンの電脳にコンタクトして、この情報が記憶槽に無いかを確認してくれないか?」

『了解しました。……照合中、……照合中……。見付けました。若干の経常相違はあるようですが、この機体の改良型と推測します』


 仮想スクリーンに現れたのは、やはりヘビのような機体だった。

 大蛇は肉食獣でさえ獲物にするらしいから、このヘビもかなり凶悪な感じがしてくる。


「なるほど……、シルエットが似ておる。だが、リバイアサンの記憶槽にその情報があったということは」

『2度の交戦記録が残っています。映像は無くなっていますが、武装はドラゴンブレスと似た兵器のようです。無人兵器で、十数体が1つの部隊として稼働していたとの記録が残っていました』


 撃ち漏らしが、土砂に埋もれてしまったのだろうか?

 

「破壊した方が良さそうだな。掘り出して動きだしたら面倒な事になりそうだ」

「かなり深い場所にあるわよ。そう簡単に破壊できそうにないけど?」

「距離を取って、ドラゴンブレスで土砂を吹き飛ばせばよい。最終的にはドラゴンブレスで破壊できるのではないか?」


『ドラゴンブレスの破壊力はリバイアサンの百分の一らしいですから、リバイアサンのドラゴンブレスの直撃で破壊できると推察します』

「なるほど……、それだけ破壊力に相違があるなら問題ない。自らの主砲に打ち勝つことが装甲の基本だからな」


 フェダーン様が納得しているのは、陸上艦の主砲と船体の装甲ってことなんだろうが、その関係をそのまま適用できるのだろうか? ちょっと疑問だけど、やってみれば分かるだろう。


『マスター、一つ問題があります。あの蛇の動力源ですが、どうやら融合炉を持っているようです』

『リバイアサンと同じもの?』


『いえ、トリチウム融合炉です。そちらは停止しているのでしょうが、起動した場合暴走する可能性がありそうです』

 

 休眠状態での動力は魔道機関を使っているらしい、魔道タービンとも異なると聞くと興味が出て来る。

 何とか、その魔道機関だけでも手に入れたいな。


『主動力炉と補助動力装置の位置は記録に残っているのかな?』

『交戦時の映像記録はありませんでしたが、構造図は残っておりました。融合炉は、中央付近、補助動力装置は後方三分の二の位置です』


 何とかなりそうに思えてきた。作業途中で取り出すことができそうだ。


「破壊の時期は何時頃に?」

「ローザ達の狩りが出来なくなるようでは、リオ殿としても心細かろう。ハーネスト同盟の調査艦隊がここを探しあてる前なら問題あるまい。だが、動き出すようであれば直ぐに破壊して欲しい」


 破壊時期は俺達で決めて良いということなんだろう。

 じっくりと破壊手順を考えてみよう。

 互いに思うところがあるんだろうな、笑みを浮かべてワイングラスを傾ける。


「それにしても、星の海は鬼門のようだ。帝国の遺産がかなり埋もれているようだぞ」

「ハーネスト同盟が星の海に拘るのも、それを知っているからかもしれないわ。そうだとすると……、既に何体か発掘している可能性もありそうね」


 カテリナさんの言葉に、フェダーン様の顔色が変わる。

 しばらくカテリナさんの顔をジッと眺めていたのだが、おもむろに立ち上がると俺達から去って行った。


「王宮と密談でしょうか?」

「諜報機関は国王直轄、どんな話を聞きだすか楽しみになってきたけど……、それはフェダーンに任せておけるわ。さて、久しぶりに……」


 俺の手を握って立たせると、俺の腰に腕を絡ませて歩き出した。

 向った先は、大浴場……。

 しばらく利用しなかったが、だいぶ姿が変っていた。

 大理石の列柱が囲んだ湯船には観葉植物の鉢がいくつも置かれ、まるで森の中にいるような錯覚さえ生まれる。

 

「いつの間に?」

「フェダーンの趣味のようね。ここを気に入っているみたいだから。もっとも世話をしているのはマイネ達だけど、マイネ達もここで良く泳いでいるみたい」


 確かにプールみたいなお風呂だからねぇ……。

 服を脱ぎ捨てて、湯船に浸かる。

 やはり風呂は大きな方が良いな。私室のジャグジーも直径3mと大きいんだが、皆で入るからちょっと狭く感じる時がある。


「それで、アリスと何を話していたのかしら?」


 俺の胸に乗りかかりながら、笑みを浮かべた顔を近づけてくる。

 やはり知られていたか……。

 そのままカテリナさんを抱きしめて耳元に顔を近づける。


「あの遺産の補助動力を手に入れようと……」


 カテリナさんが俺の手を振りほどくようにして体を起こす。そんなことをするから、目の前に大きな胸の谷間が見えるだけになってしまった。


「呆れた! 何時もそんなことばかり考えてるのね。でも、おもしろそうな話じゃない? もう少し詳しく話してくれないかしら……」


 お風呂で体を重ねながらするような話ではないと思うんだけど、カテリナさんはそうではないらしい。

 少し深い風呂だから、しっかりとカテリナさんを抱いていないと体が離れてしまうんだよなぁ。それにやたらと体を動かさないでほしいところだ。

 何度か風呂の縁から落ちかけてお湯を飲んでしまった。


「……そういうことね。確かに興味があるけど、あえて主動力炉を狙わない理由はあるのかしら」

「暴走事故でも起こすとちょっと面倒です。かなり広範囲に影響を与えかねません」

「リバイアサンの動力も同じ融合炉ではなかったかしら? 危険性は同じだと思うんだけど」


「リバイアサンは魔石の対消滅炉ですよ。原理は俺には理解できませんが、かなり異なっているようです」

「いろんな炉があったみたいね。でもエネルギーの取り出し方には相違はないのかしら?」


『基本的には4種類に分類できそうです。魔道タービンを使って発電機を回す方法、炉から出る蒸気でタービンを回して発電する方法、磁性流体を使って発電する方法、最後は生体発電を応用する方法です』


「融合炉はどれに当たるのかしら?」

『磁性流体を使っているようです。リバイアサンと同じになります』


「あの蛇より良い物があるから、いらないってことね? そうなると補助の動力装置が気になるところね」

『融合炉の燃料はまだ残存していると推測します。融合炉が起動する恐れは低いと思われますが、そのままドラゴンブレスで破壊した場合大きな爆発を伴いかねません。破壊した場合、最低でも10年間は島への上陸は出来なくなりそうです』


 ひょっとして、ドラゴンブレスのプラズマが核融合の引き金になりかねないってことか?

 さすがにそれは不味いんじゃないかな。


『マスターの推測通りです。解放された核融合が起こるでしょう。その影響を少なくするために、本体近くまで土砂を取り除いた時点で、レールガンによりトリチウムタンクを破壊します。天然核種ですから拡散しても影響はないと推測します』


「そんな危険な代物を動力炉に使っているの?」

『核分裂炉から比べれば危険性は少ないです。ある意味、物理学で行える錬金術そのものですから』


 元素が変るんだから確かに錬金術ではあるんだが……。そんなことを言うと、試そうなんて奴らが出てきそうだ。

 科学者なんて、後のことは余り考えないところがあるからね。この世界の魔導師もそんなところがあるんじゃないかな?

 カテリナさんや導師の言動を考えると、マッド・サイエンティストそのものだからね。


「やはり、たまには2人で体を重ねないといけないようね。エミー達に遠慮してたんだけど、私の時間も欲しいところだわ。相談してみようかしら」

「穏便にお願いしますね……」


「あら! 何度か話し合ってるわよ。夜はダメだと言われてるけど……」

 

 この世界の風俗習慣が理解できなくなってくる。

 俺の考えが反社会的なのかな?


「さて、戻りましょう。そろそろフェダーンの方も終わる頃よ」


 衣服を整えて、大浴場を出る。

 次に来る時はどんな風に変わってるんだろう? たまにエミー達とも利用してみよう。


 ソファーに向かうと、まだ誰もいないようだ。

 俺をソファーに座らせると、そのままカウンターに向かってカテリナさんが歩いて行く。

 次に現れた時には、アイスコーヒーを持って現れた。

 湯上りだからね。冷たい飲み物がありがたい。


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