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M-245 クジラが動くとは思えない


「リバイアサンは自動化が進んでいるように思えるんですが?」

「そうねぇ。確かに進んでいるわね。それが可能なのは生体電脳が全体調整を行ってくれているからなのよ。生体電脳を使わずに動かすことは可能でしょうけど、リバイアサンの乗員が3千人を超えるんじゃないかしら」


 エミーの問いにカテリナさんが答えてくれたけど、その考えで間違いあるまい。

 現場にも制御盤があるけど、状況確認を行っているぐらいだからな。

 アリスのおかげで、生体電脳に俺達の言葉を教えたから普段の言葉で指示を出すだけで動いてくれる。

 操舵にしても、舵輪の動きよりも操舵手の声で指示通りに動かしているように思える。舵輪を操作するのは、動く上でのトリガーのような物かもしれない。


「臨機応変に軌道を行い、かつ砲撃を加える……。そのような事をせずに、制御室で指示するだけでリバイアサンを動かせるのだからな。帝国の遺産とは恐ろしいものだ」

「俺が気になるのは、リバイアサンが作られた時期ですね。帝国が平和であったならこのような兵器をつくるのは愚策も良いところです。帝国に暗雲が立ち込めてから、滅びるまでに数百年の年月があったようですけど、前期、中期、それとも後期のどの時期かと悩んだことがあります」


「それなりに、答えを出したんでしょう?」


 カテリナさんが面白そうに笑みを浮かべて俺に問い掛けてきた。

 何度かアリスと議論したことではあるんだが……。


「たぶん中期と言うことになるんでしょう。リバイアサンには科学文明と魔道科学の泰明紀の技術が使われています。

 初期であるなら、魔道科学は使われていなかったでしょうし、後期であれば科学技術が使われていない筈です。

 となると、オルネアとリンドラムの時代が気になるところです。

 何体かのオルネアをリンドラムが統率することになれば、魔道科学では対応できそうに思えません。科学技術の進んだ時代となるでしょう。

 魔獣を率いるということから、魔獣は獣機と考えていたのですが……。リバイアサンより前の時代であるなら、全く異なる機体となる可能性があります」


「科学技術の進んだ前期に作られたとなれば、我等で動かすことはできぬと思うが?

「逆です。容易に動かせる可能性が出てきます」


 生体電脳の性能が問題だが、リバイアサンを越えるものであるなら相手の言葉を理解することができるんじゃないかな?

 だが、これには前提がある。オルネア、リンドラムが休眠から目覚めた状態でなくてはならない。

 動力源は何を使っているか不明だが、5千年を超えるような眠りから覚めなければならない。

 いくら起こそうとしても、そもそも動力炉が動いていなければ何もできないからね。


「リオ殿のように、意志を向けることで目覚めることもあり得ると?」

「はい。とはいえあくまで仮定の話です。5千年もの眠りから目覚めるためには、細々と生体電脳を生かすための手段が必要になってきます。それが途切れていたなら……。いくら優秀な生体電脳でも再び起きることはありません」


「動力の枯渇はあるのかしら? リオ君の話からすれば、内戦当初の代物なら動かないということになるんだけど、中期以降なら魔気を使えるんじゃなくて?」

「そこで気になるのは、オルネアの率いる魔物です。魔獣でもなく獣機でもありません。もし、中期以降に大量に使われたなら、戦機以外にも発掘されていると思うんですが」


 それに獣機は戦機を真似て、後の王国の魔導師達が作り上げたものだ。

 戦機は鉱物で作られたゴーレムだとカテリナさんが教えてくれたことがある。ゴーレムを作れないから、ホムンクルスで素体を作ったとも言ってたんだよな。


「鎧を纏った魔物……。確かにそんな物を発掘した話は聞いたことがないわ」

「すると、リオ殿は見付けたとしても動かせないと考えているのか?」

「たぶん……」


 フェダーン様の問いには、想定での答えしか持ち合わせていない。

 たぶん原子炉で動いていたに違いない。増殖炉であれば小型化も可能だ。魔物はロボットのような自動殺戮兵器ではないのだろうか? 駆動源は高性能のバッテリー辺りじゃないかな。

 体表を金属で覆えば、堅固な鎧にも見えるに違いない。導師のような姿だったんじゃないか?


「脅威は低いということだな。とはいえ、確認するまでは動くと想定した方が良かろう。戦略を練る時には、物事を悪く考えておいた方が良いだろうからな。 リオ殿には済まぬが、偵察をしばらく継続して貰いたい」


 とりあえず頷いておく。

 俺の仕事なんて、リバイアサンではほとんど無いからね。


「ところで話は変るんだけど、水の魔石を取る方法を思いついたんだ。

 星の海にはたくさん島があるんだ。その中で、直径1ケム(1.5km)ほどの島にたくさんの水棲魔獣が集まってたんだ。形は……、こんな奴だ」


 プロジェクターで水棲魔獣の姿を映し出した。

 体長8mほどのワニにような姿をしているんだが、画像の中だけでも100頭を越えている。


「アルゴルね。確かに水の魔石が取れるわ。アルゴルなら魔石は3、4個は持ってるはずよ。確率5割で中位魔石が出るわ」

「これだと落とし穴なんて掘れないわ。かなり危険じゃないの?」


 ヴィオラ騎士団の狩り方ならそうなるんだが、俺達はリバイアサンに乗っていることを忘れてないかな?


「島を沖合から砲撃する。と言っても、大砲を使う訳じゃないよ。ドックの装甲板を開いて、斜路を下ろさずにドックの床から獣機と戦機で狙撃すれば良い。ドックまでの高さを魔獣の体長以上に確保すれば安全に狙撃できると思うんだけどね」


「アルゴルは歩く速さもそれほどないみたい。水中での運動はかなりなものよ。頭も45度以上に上げられないはずだから、リオ君の案ならたくさん狩れそうね」


 カテリナさんがエミー達にけしかけているけど、当の2人は少し悩んでいるようだ。

 スコーピオ戦の弾丸の残りはたっぷりあるはずだから、演習がてらに狩をしても良いと思うんだけどなぁ。


「星の海は湖沼地帯を見られるぐらいだ。一面の海をリバイアサンの乗員に見せてあげるのも良さそうだな」


 フェダーン様の場合は、自分が見たいのかもしれないな。確かに広々とした湖があるからね。

 エミーとフレイヤは制御室の幹部達と協議するようだ。

 元騎士団の団長や、退役軍人が揃っているから、俺の思い付きのような狩りの仕方をもう少しまともな狩りの方法に修正してくれるだろう。

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 朝夕のヴィオラとリバイアサンの周辺偵察、それに星の海を昼に2往復が俺の日課になってしまった。

 それで魔獣に遭遇するリスクを低減することができるし、魔獣狩りも比較的安全委行えると、ドミニクが喜んでいるようだ。

 リバイアサンも、最初の回頭を行う前に1度狩りをしたんだが、メイデンさんの駆る戦闘艦と戦機輸送艦が砲撃を加えると、ローザ達の仕事がないみたいだった。

 残念そうな顔をして、俺にもっと大きな魔獣を探してくるように訴えてる姿を見て、フェダーン様達が笑いを堪えるのに必死だったからなぁ。


「ローザ、ちゃんとリオ様はローザの事を考えてましたよ。このまま南東に向かって5日目に西に回頭します。少し早めに西に向かうのは星の海で狩りをするためなのです。星の海での狩りではさすがに戦闘艦や戦機輸送艦は使えませんから、ローザが指揮する獣機部隊が主役ですよ」

「姉様、本当じゃな! さすがは兄様じゃ。ちゃんと我等の見せ場を作ってくれるとはのう、リンダもよろしく頼むぞ!」


 笑いたいのを必死にこらえながらリンダが頷いている。直ぐに俺達から去って行ったから、自室で大笑いをするんじゃないかな。

 こっちでも、とうとうフェダーン様とカテリナさんが連れだってデッキに向かって行った。あれも笑いを堪えられなくなったということに違いない。


「かなり面倒な場所だ。フレイヤから作戦を詳しく聞いておいてくれ。俺も参加したいところだが、万が一に備えて待機を仰せつかってる」

「兄様が出張らなくとも上手くやれる作戦なのであろう。獣機部隊は誰が率いているのじゃ?」


「軍の方はゴランド少尉、ヴィオラ騎士団はローガスになるわ。魔石の分配についてはフェダーン様の了承も得ているから軍の方もかなり士気が上がっているみたい」

「作戦は後で聞くとして、相手は何じゃ? それと数は?」


 ローザの質問に、エミーが仮想スクリーンを開いて教えているようだ。

 島を拡大した途端にローザが目を見開いている。


「あれを狩るのか?」

「あれを狩るの!」


 ちょっと声が震えているようにも思えるけど、武者震いなのかな?

 まあ、数が多いことは確かだ。形が形だから凶悪な魔獣に見えたのかもしれない。だが、フェダーン様は反対しなかったし、俺にバックアップをお願いしてきたぐらいだ。

 ローザの功績を積み上げたいというところなのかもしれない。

 既にお年頃なんだから、エミー達と一緒に作法の練習をしていた方が良いと思うんだけどなぁ。


 西に回頭して7日後。 リバイアサンから星の海の周囲を囲む緑が遠くに見えてきた。

 風の海の茶褐色な風景と違って、ホッとする気分になれるんだが、実際には未知の水棲生物が棲んでいる物騒な場所だ。

 あの緑周辺でさえも、野生の草食動物を獲物にする肉食獣や魔獣の群れが、砂の海より濃いぐらいだからね。

 滅多な事では騎士団も近づかない。近付いたとしても、見通しの良い草原地帯に限られている。

 そんな魔境とも言える地帯ではあるのだが、水の魔石を持つ魔獣を狩れる場所でもある。

 砂の海での狩りでは水の魔石の出現率が1割以下だから、水の魔石は高値での取引が行われているようだ。

 星の海の湖沼地帯に生息する魔獣からは5割以上の確率で水の魔石が取れるとなれば、一攫千金を狙いたい気持ちも理解できるところだ。


「明日は星の海ね。やはり夕日が少し変わって見えるわ」

「航路はしっかり把握しているのであろうな? 一面の湖であったなら目標などない筈じゃ」

「リバイアサンは自分の位置をしっかりと導き出しているから問題はないの。原理はカテリナさんにも理解できないらしいけど、何時も間違いなく目的地に到着してるでしょう?」


 それが俺にも不思議でならない。アリスは月に秘密があるのではないかと言っていたけど、電波を受信しているわけではないらしい。

 高精度の時計を使って月の位置と方位を確認しているのだろうか? それでも誤差はkm単位でありそうに思えるんだけどなぁ。


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