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M-244 自動化はどこまで可能なのか


「オバケクジラですって? 全く、昔の人は何を考えてたんだか……」

「やはり互いに大きさを競い合ったのでしょうか?」

「どうだろうねぇ……。威嚇にはなるんだろうけど、リバイアサンでさえアリスの敵ではない。性能の優劣が決め手だとは思うんだけど」


 のんびりジャグジーに漬かりながら、フェダーン様の話を3人で振り返る。

 冷えたワインを飲みながらだから、悪酔いしそうな気もするな。

 こんなことをしても、誰からも文句を言われないのがリバイアサンの良いところだ。


「3艦隊が探しているのであれば、見つかるのは時間の問題と思うんですが?」

「そうでもない。あの辺りを上空から調べてみたけど、それらしいものは無かったよ。

俺としては、湖の底、もしくは砂に埋もれてるんじゃないかと思ってるんだ」


 湖の底で泥に埋もれているなら、先ずは見付けることはできないに違いない。

 問題は砂に埋もれている場合だ。たまに吹く、強い風で砂が動くようなことがあれば、何かが地上に現れてもおかしくない。

 戦機の多くが、そのようにして見つかるようだからね。

 風は偉大だ、ということになるんだろうな。


 ジャグジーを出ると、バスローブ姿でデッキに向かう。

 そこには既に先約がテーブルセットを占領していた。


「あら? だいぶ遅かったわねぇ」


 カテリナさんに言葉に、フェダーン様が笑みを浮かべて俺達を手招きしている。

 逃げることはできないから、そのままテーブルセットの椅子に腰を下ろすことになったんだが……。


「明日も偵察に出てくれない? できれば、艦隊の先を見てきて欲しいんだけど」

「事前に探るってことですか? 構いませんが、その前にヴィオラとリバイアサンの進行方向を調査してからで良いでしょうか?」


 カテリナさん達がかを見合わせて頷いている。

 かなり偵察を重視しているように思えるんだが、やはり気になるんだろうな。


「導師に通信を送ったわ。『オルネア』と聞いて、驚いたみたい。導師も伝説を知っていたようね。もう1つ重要な事を教えてくれたわ。『オルネアは群れを作る』と言ってたの」


 戦機の揚陸艦のような代物なんだろうか?

 リバイアサンにも戦機は搭載しているが、1個中隊規模にはならない。どちらかと言うと、戦艦と空母を合体した様な代物だからなぁ。

 だが揚陸艦だとすれば、打撃を他の艦種で補う必要があるんじゃないか?

 脅威としてはリバイアサンを越えることは無いだろう。

 待てよ……。彼等はオルネアと同時に打撃艦種を探しているのかもしれない。揚陸艦なら大きいからそれなりに発見しやすいと考えて、それが見つかったなら周囲を入念に探して本来の艦種を見付けようとしてるんじゃないのか?


「出来れば、導師に確認しえ頂きたいのですが……。『群れるオルネアを率いる者は何か?』、その答えが欲しいところです」

「統率艦がいるということか!」


 いきなり俺に近付いて、厳しい表情の顔を向けてくる。

 

「群れるのであれば、総指揮を誰かが何処かで執る必要があります。『オルネア同士で語らう』と言うのであれば、問題はないんですけど……」


「リオ君の話も、想定としてはあり得るでしょうね。私から通信を送っておくわ」

「そうしてくれ。全く面倒な隣国だな。リオ殿がこちらにいなかったならハーネスト同盟の野望は成就したかもしれぬ」

 

 そこまで酷いことにはならないと思うけどね。

 そもそも隠匿空間には入れなかったろうし、リバイアサンだって星の海の魔獣のリスクがあることを知っていながら霧の中に入っていくとは思えない。

 見付けたとしても、入りようがないだろう。


 2人を連れて、自室に下がる。

 軽く頭を下げると、2人とも笑みを浮かべて手を振ってくれた。


 翌日は、マイネさんが持たせてくれた昼食のバスケットを持って、アリスと共に周辺偵察に向かう。

 リバイアサンとヴィオラの周辺500kmの偵察を終えたところで、魔獣の状況をそれぞれの艦に伝達する。

 これで、今日の魔獣狩りの計画をアレクやフレイヤが考えるだろう。

 あまり大きな群れではないが、トリケラタイプがそれぞれ近くを移動していた。


『大きな島に行けば水棲魔獣も狩れるでしょうね』

「少なくとも直径1km以上でないと難しいだろうな。東岸は小さな沼沢が多いから難しいんじゃないか」

『あの島辺りなら、適当ではないでしょうか?』


 眼下の島は確かに大きいな。直径1.5kmはありそうだ。問題は近くまでリバイアサンを移動できるかだが……。


『島の片側にリバイアサンを停泊させて、砲塔で一斉攻撃ができそうです。ドックの装甲板を開放しても斜路を作らなければ、ドックに入ることはできません』

「囮は俺達で、ってことか? それでやってくるのかな……」


『あれを見てください!』


 島の拡大画像が新たな仮想スクリーンに現れる。

 ワニに良く似た魔獣がたくさん上陸しているようだ。あれなら落とし穴が十分に使えるな。


『全長8mと言うところです。帰ったら相談ですね』

「そんな奴がいたら、すぐに狩りたいってことになりそうだな。ヴィオラの魔獣狩りが芳しくない時にはやってみるか」


 星の海は、変化に乏しいからなぁ。たまに島があるんだが、そんなに大きいのは稀のようだ。

 星の海を抜けると、東と同じように荒涼とした砂漠地帯になる。今にも狩れそうな緑がたまに見えるんだが、小さな水場でもあるのかもしれないな。


『そろそろ回頭して東に向かいます』

「それなら、昨日見付けた2つの艦隊の様子を探れそうだな」


 北に200kmほど移動すると、右手に昨日の艦隊が見えてきた。まだ北上しているようだな。

 少し高度を取って、上空から艦隊間の魔石通信を傍受してみる。


『周辺警戒を厳重にするようにしているようです。小型の野生動物ですら報告の対象となっています』

「魔獣のリスクがたかまっているからなぁ。それ以外では?」

『輸送船に、魔導士がたくさん載っているようですね。魔獣を見付けても刺激をしないようにと通信しています。乗っているのは前方の輸送船のようです。万が一の場合は、後の輸送船を破棄すると言っていますから、無人艦なのかもしれませんね』


 輸送船の操船を無人化することができるんだろうか? そんなことができるならスコーピオ戦の時にもっといろいろな手段が使えたろうに。


「後ろの輸送船の画像を拡大してくれないか?」


 直ぐに仮想スクリーンに拡大された画像が現れた。

 その甲板を注意深く見ていると、やはり脱出用の飛行機を乗せているようだ。無人化というよりも高度な自動化と言ったところだろう。操船だけをブリッジの少人数で行って、万が一の時には、飛行機で逃げ出す気のようだ。


「少なくとも飛行機が3機甲板にあるみたいだな。少人数で操船しているようだ」

『他の軍艦も同じでしょうか?』

「分からない。だがそうだとすればブラウ同盟軍よりも技術はあるのかもしれないな」


 魔道科学で高度な操船がどこまで可能なのかは、帰ってからカテリナさんに聞いてみよう。

 2度ほど星の海を往復して星の海の東端で昼食を取る。

 さすがに野獣が怖いから、地上に降りてもアリスの手の上での昼食だ。

 サンドイッチにコーヒーだけだけど、帰れば美味しい夕食が食べられるに違いない。


 食後の一服を楽しんだところで、再び星の海を往復する。

 リバイアサンに戻る前にヴィオラと、リバイアサンの周囲を再度確認してドミニクとフレイヤに状況を伝えておく。


 プライベート区画で俺を待っていたのは、カテリナさんとフェダーン様それに改良型の魔道通信機を足元に置いた女性の副官だった。


「お帰りなさい。何事も無かったようね?」

「艦隊より200ケム(300km)先まで調査しましたが、何も見つかりませんでした。それで、導師の回答は?」


「その前に、コーヒーを飲んだら? 色々と分かってきたわよ」


 スイっと、目の前のテーブルにマグカップが置かれた。

 マイネさんが運んできたのが見えたんだろうな。だけど、まだ熱いから直ぐに飲めないんだよねぇ。

 タバコを取り出して火を点けた。アリスのコクピット内では吸えないからなぁ。ここなら安心して楽しめる。


「導師はリオ君を絶賛してたわよ。『オルネア』の言葉と共に、『リンドラム』の言葉が文献の近くに必ずあると言っていたわ。『触手を通して意志を伝え、その触手で浮かび、そして移動する……』と続いていたらしいわ」


 まるで、アメーバかクラゲだな。

 浮かぶというからクラゲみたいな形なんだろう。そうなるとやはり星の海ってことになるんだろう。


「リオの思惑通り、オルネアを操る存在と言うことになりそうだ。だが、見つかるのがオルネア、リンドラムどちらにしても危険であることに変わりはない」

「その通りです。それと、今日の偵察で分かったのですが、砂の海を進んでいる艦隊の輸送船の1隻をお見せします……。このように、甲板を大きく帆布で覆っているんですが、どうも飛行機のようですね」


「帝国の遺産を見付けようとしているのだ。飛行機ぐらいは当然に思うが?」

「巡洋艦の後部甲板は飛行機の離着陸台になっているようです。2機搭載しているなら、都合8機ですよ。それだけで十便の筈です。それと、通信傍受を下時に、場合によってはこの輸送船を囮にするような口ぶりでした。

 そうなると疑問が出てきます。この輸送船は何員で動かしているのだろうと?」


 2人が顔を見合わせて何も言葉を出さない。

 俺が言わんとしていることが理解できたようだ。


「魔道機関の応用で、かなりの自動化ができると思うわ。さすがに緊急対応は不可能だから、多重化はしてるんでしょうね。随伴するだけなら可能かもしれないわ」

「尻尾切りができるのか? 駆逐艦クラスで取り入れることができれば面白そうだが?」


「さすがに戦闘は出来ないわよ。荷物運びぐらいなら可能でしょうけど、あまりお勧めはしないわ。結局ブリッジには数人必要だし、緊急事態には停船しかできないから」


 荷馬車的な使い方なら問題ないってことか。

 カテリナさんが勧めないってことは、それ以外にもいろんな問題があるのかもしれないな。後でじっくり聞いてみよう。

 リバイアサンだって、結構自動化されている。

 その自動化と、魔道科学の自動化の違いに原因がありそうな気がするんだよね。


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