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M-243 クジラを探しているようだ


 少し早いけど、昼食を終えたところで星の海へ偵察に向かった。前のように重力場と金属反応を調べることにしたから、高度は500m程だし速度も時速500kmほどだ。

 さて、今日も何も無いことを確認することになるのかな。


「高度が低いから、見通し距離もそれほどないね」

『左右50km程度ですね。有効測定範囲は左右30kmです。帰りは北に20km移動して測定を重複して精査します』


 重力反応も金属反応もかなり小さな値だからなぁ。アリス以外に、そのわずかな違いに気が付く者はいないだろう。

 いや、その前にそんな方法で探そうなんて考える者はいないだろうな。

 速度を出せないから、このままだと1往復で終わりになりそうだ。

 最後に、高度を上げて、少し北を知らべてみるか……。


 夕暮れの中、上空1万mを音速の2倍で飛行する。

 これ以上速いと、星の海の状況が分からなくなりそうだ。艦隊がいるならその航跡を見ることぐらいはできるだろうし、アリスの地上レーダーも頼りになるからね。


『見つけました。高度を落とします。西から接近しますから太陽の反射で気付かれることは無いでしょう』

「あれか……。朝方見付けた艦隊とは規模が違うな」


 巡洋艦の改造型が3隻に、かつて見付けた調査船のような陸上艦が5隻もいる。

 高度を下げて拡大すると、更に小さな陸上艦までいるようだ。


『こっちが本命なのでしょうか?』

「良く分からないな。だけど、真っ直ぐ北に向かっているようだ。昨日の艦隊は、北東方向に進んでいたよね? 合流するわけではないから、やはり調査途中という感じがするな」


 ちょっと気になったので、そのまま西に向かって進んでいく。

 ハーネスト同盟の帝国の遺産探しは、必ずしも星の海だけとは限らないはずだ。亜俺があるという文書を見付けても、どこにあるとまでは分からなかったに違いない。

 となれば、星の海の西に対しても同じように調査艦隊を派遣しているんじゃないかな?


 星の海を抜けて200kmほど進み、今度は北に向かって進む。

 山裾からのブル尾根が見えてきたところで、今度は星の海の西端を南に飛んでいた時だった。

 巡洋艦4隻に周囲を囲まれた2隻の輸送船を見付けた。その周囲を6隻の駆逐艦が囲んでいる。

 単なる魔獣に対する哨戒なら、輸送船など随伴しないはずだ。

 やはり長期的な探索を目的にしている艦隊、と言うことになるのだろう。


「国力を挙げての探索だな。やはり何か情報を掴んでいると見るべきだろうな」

『巡洋艦の2隻は改造されているようです。砲塔の主砲が駆逐艦と同じですし、3連装砲塔になっています。ブリッジはかなり前に移動していますね。砲塔は前部甲板基に2基ですし、船尾は平らですから、飛行機の離着陸を可能にしていると推察します』


 あの大きさなら2機は搭載しているだろう。

 朝晩飛ばして、周辺偵察を行っているに違いない。


「さて、俺達はどうするかだな。やはり遺産はあるのだろう。となればハーネスト同盟よりも早く見つけたいところだけどね」

『リバイアサンのような形で残されているなら発見も容易でしょう。ですが、水底や砂の中となると中々見付けられないと推察』


 それにどんな遺産なのか、皆目見当がつかないからなぁ。

 大きさぐらいは知りたいところだ。

 

『マスター、「オルネア」という言葉を聞いたことがありますか?』

「いや、人の名前かな?」


『2隻の輸送船相互の魔道通信内容を傍受しました。「オルネア」という存在がハーネスト同盟艦隊が探している帝国の遺産のように思えます』


 推察は出来ないってことか……。アリスが『思う』と言葉を弱めるのも珍しいことだ。


「帰ったら、カテリナさんに聞いてみよう。俺達はこの世界にそれほど詳しくは無いからね」


 場所が分かれば、明日も見付けることができるだろう。

 夕暮れが始まってきたから、急いでリバイアサンへと亜空間移動を行った。


 プライベート区画に着いた時は、デッキの外は真っ暗だった。

 距離がかなり離れていたからなぁ。夕食も既に終わってるらしく、マイネさんが俺1人のために料理を運んできてくれた。


「遅くなって済みません」

「仕事なら仕方ないにゃ。でもなるべく一緒に食事をして欲しいにゃ」


 マイネさんに頭を下げている俺を見て、フレイヤ達が笑っているんだよなぁ。

 ちょっと時差を考えなかったのが悪いんだろうけど、笑うことは無いと思うんだけどねぇ……。


 夕食を終えたところで、ワインを手にソファーに移動する。

 適当に座っていたようだけど、俺が席に着くと両側にエミーとフレイヤが移動してきて腰を下ろした。


「それで、どうだったのだ?」

「2つ見付けました。今、お見せします」


 プロジェクターで仮想スクリーンを2つ立ち上げると、星の海の地図に見つけたポイントをマーキングで示す。隣の仮想スクリーンには艦隊の姿を映し出した。


「星の海だけではなかったのか!」

「気になって、星の海の西を調べた時に見つけました。ところで『オルネア』という言葉を知っていますか? 何かの名前のようですけど……」


 びっくりした顔付で、フェダーン様とカテリナさんが顔を見合わせる。


「どこで聞いたの? その名は禁忌であり、一般には知らされていないわよ」


 俺を厳しい目で睨んでいるフェダーン様も、カテリナさんの言葉に小さく頷いている。


「昔、何かあったのでしょうか?」


 俺の手を強く握りながらエミーが問い掛けてくれた。


「かつて、この世界には7つの神殿があったの。信徒を先導して泰明期の王国を乗っ取ろうとしたことで、その神殿は徹底的に破壊された……。その神殿の崇める神の名が『オルネア』と呼ばれていたの」

「その姿はどのように伝えられているんですか?」


「巨大なクジラだ。町をも飲み込む口を持ち、頭には多くの目を持つと言われている。更に海の魔物を従え、その魔物が纏う鎧は槍おも通さぬと伝えられている。ウエリントンや我の母国にはそのような伝承や書物は皆無だが、若き頃にサンビアに留学していた時期がある。その時、神殿の神官長に禁忌の書物だと言って見せて貰った……」


 禁忌の書物を見せて貰ったということは、帝国時代の調査でもしていたんだろうか?

 だが、これで少し目途もついた感じだな。

 大きな躯体、その中に自律兵器を多数持つ存在と言うことになるんだろう。


「アリスが、この2隻の輸送艦の交信を傍受しました。その中に『オルネア』という言葉が何度も出てきたと教えてくれました」


 再び、フェダーン様とカテリナさんが顔を見合わせている。

 しばらく見つめ合っていたけど、言葉に出さずとも意思を伝えられるのかな?


 緊張に耐えられなくなったのか、フレイヤが席を立ってカウンターに向かった。こひーを入れてくれるのかな?


「ハーネスト同盟が探しているのが、オルネアとはな……。リオに機動要塞を先に発見されたことで、次を探し始めたのだろう。 

 そうなると問題になるのは、オルネアの大きな口と、従える魔物対策負いうことになるのか?」


「大きなものと言うことなんでしょうね。でも大きな口と言うのは直接的な話かしら?

 一口に……、と言うことは一瞬でとも取れるわよね。ドラゴンブレスのような代物化もしれないわよ。

 槍も通らない魔獣は、獣機に近いものなのかしら?戦機は帝国の遺産でもあるけど、戦機が1個大隊なんて考えたくもないわ。

 リオ君。こっちは私達が何とかするから、何としてもハーネスト同盟の艦隊より先に見つけ出すのよ!」


 席を立って大声を出しながら、腕を伸ばして俺に指を突き付けてきた。

 思わず「はい!」と答えたけど、そうでもしなかったらテーブルを跳び越えて、俺の胸倉をつかんで引き上げるぐらいはしたんじゃないかな。


「カテリナ、そう興奮するな……。由々しき事態ではあるが、ハーネスト同盟の探す者が朧げに分かっただけでも良しとしよう。

 リオ殿は言っておったな。起動できて制御は難しいと……。相手が先に見つけたなら、起動前に破壊すれば良い」


「はい! 甘いものでも飲んで少し落ち着いたら? イライラしてたら良い考えも浮かばないわ」


 フレイヤが持って来たのはココアだった。思わず皆で顔を見合わせてしまったけど、この場所でココアを飲むのは初めてじゃないかな。

 とりあえず、皆でフーフー言いながらココアを飲むことにした。


「先ほどのフェダーン様の話の中で、1つ気になることがあったのですが……。

『口』という表現は、その手段が1つしかないと感じてるんです。それに『町をも飲み込む』という言葉にはその破壊の大きさが町の規模であるとも取れますね。『王都をも飲み込む』と言うのであればとんでもない規模になりますけど」


「確かに口は1つだ。『腕の一振りで』と言うなら、手段を2つ持つことになる。なるほど、主砲は1つと言うことだな。しかもその規模はリバイアサンより小さいということになるだろう。そうなると、『頭に多くの目をもつ』と言うのも、リバイアサンのような監視体制が構築されていることを言ったのだろう。

 残りは、『槍をも通さない魔獣を従える』と言うことになるが、これは戦機に近いものであろう。

 古代の伝承と言うものもおもしろいものだ。このリバイアサンにしても、見た者がいたならそのような詩的表現が出てくるのであろうな」


「さすがねぇ。そうなると見付けやすいということにならない?」

「どうでしょうか? リバイアサンは水上にありましたが霧の中でしたよ。怪物クジラであるならと星の海を探しているのでしょうが、水中ともなれば見付けるのは難しいですよ」


 カテリナさんに「がんばってね!」と言われてしまった。フェダーン様は苦笑いをしているんだよなぁ。

 

「1つ、フェダーン様に了解して頂きたいのですが?」

「ん! リオ殿の頼みならば、可能であるなら善処するぞ」


 それって、考えてみるって奴だ。 だが、ここは判断して貰いたいところなんだよね。


「万が一、オルネアをハーネスト同盟が先に見つけたなら、破壊しても構いませんか?」

「我等に牙を向けるなら破壊しても構わぬぞ」


 良し、言葉質は取ったぞ。これで、万が一の時にはいつ破壊しても問題は無い。

 それにしてもクジラとはねぇ……。陸上も進むんだろうか?


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― 新着の感想 ―
[一言] 空飛ぶクジラ…空にいたりしてね~^^ いつも楽しく読ませていただいています。 頑張って下さいね~v 返事はいりませんよ(一応明記します。)
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