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M-241 リバイアサンに帰ろう


 1830時。俺達を乗せた軽巡洋艦は、巡洋艦2隻、駆逐艦5隻に守られた兵員輸送船2隻と輸送船3隻の艦隊と共に出発した。

 ヴィオラとガリナムは19時に出発するとのことだった。

 

 さすがに軽巡洋艦だから昔のヴィオラを思い出すような士官室だ。2段ベッドと小さなテーブルセットがあるだけだからね。

 明後日までの辛抱だから、我慢することになるのかな。


「兄さん達は真直ぐ北に向かうのかしら?」

「たぶんそうなるんじゃないかな? 明後日にリバイアサンに到着したなら、星の海の東を調査して欲しいと指示されてるぐらいだから」


 狩りをしながら隠匿空間に向けて少しずつ近付くのだろう。

 俺達は前と同様に星の海、隠匿空間それに砂の海の西を三角形に移動する予定だ。星の海近くに移動した時に、残った調査区域を調べれば良いし、砂の海を東に向かう時にはヴィオラ周辺の魔獣の状況を調べることになるんだろうな。


「だけど、最初はかなり広い範囲で調べるつもりだ。俺達だって魔獣狩りをしないと、リバイアサンの乗員にヴィオラ並みの報酬を払えないからね」


 メイデンさんの駆る戦闘艦と戦機輸送艦を組み合わせれば、機動攻撃ができるんじゃないかな?

 戦機は俺を含めてリバイアサンには3機あるが、ローザとリンダが頼りだからねぇ。

 どちらかと言うと獣機の護衛になってしまいそうだ。

 さすがに、大型チラノは狩れないだろうけど、中型魔獣の多くは狩れるに違いない。


「砲弾は確保したんでしょうね?」

「軍の方で用意してくれたよ。少なくとも1門あたり100発はありそうだから、しばらくはだいじょうぶだろう。獣機や戦機の銃弾も同じ位、渡してくれたとレイドラが言ってたからね」


 軍の方も補給が大変だと思うが、先ずは騎士団を先にしてくれたらしい。それだけ騎士団に助けられたと思っているのだろう。

 参加した騎士団もそれなりの謝礼を貰ったらしいから、一か月に及ぶレッド・カーペット対応によって潰れる騎士団はいないはずだ。

 

「兄さんがボートのカタログを持ってたわよ」

「さすがにクルーザーで島から漁村には行けないからね。数kmの海を渡れるだけの小さな船を購入してくれるんじゃないかな」


 あちこちに住まいがあるのも考えものだ。

 一応、リバイアサンのプライベート区域が俺達の本拠になるのだろう。隠匿空間のログハウスは、一般向けと言うことになるはずだ。あの島の別荘は、とりあえず他者を招かぬようにしておけば良い。

 ログハウスはシンプルだからね。誰が見ても別荘そのものだ。

 リバイアサンは、あまり人を招くとは無いけど、初めて見た人は、その豪華さに驚いている。

 フェダーン様がここを住居にせよと言ったのが、この頃ようやく理解できるようになってきた。


 軽巡洋艦の2日間は、たまに甲板に出るぐらいでほとんどを狭い士官室で過ごす。

 巡洋艦の方が士官室は大きいらしけど、この軽巡がフェダーン様の御座船だからなぁ。さすがにフェダーン様の部屋はこれより大きいんだろうけどね。


 2日目の昼過ぎにリバイアサンが見えてきた。

 数kmに近付いたところでドックの装甲板を開放して、斜路を伸ばす。

 全てはアリスが行ってくれるから、俺は状況を眺めているだけだ。だけど俺の後ろで双眼鏡を覗いている士官達は、俺が魔法を使ったと思っているんだろうな。


「これでドックに入れるよ。このまま真っ直ぐに向かうのかい?」

「この艦が先に向かい、その後ろに駆逐艦が1隻続きます。その後に貨客船が2隻続くと聞いております」


 巡洋艦と駆逐艦は周辺警戒に入ったようだ。船団から少しずつ離れていく。


「ブリッジでフェダーン様がお待ちしています」

「この後の話ってことかな? 申し訳ないが、案内を頼むよ」


 後ろで状況を見守っていた若い士官が進み出て、俺をブリッジに案内してくれた。

 船体構造は似てるんだけど、その艦を使う責任者達が自分達で使い易いように結構内部を変更している。

 3階に向かえば良いんだが、その階段を中々探せない時だってあるぐらいだ。ましてや、フェダーン様の御座船ともなれば専用のエレベーターもあるぐらいだからね。


 狭い船内通路を少し巡りながら階段を上がっていくと、ブリッジに入ることができた。

 艦長席の隣に同じような豪華な椅子があるのに気が付いた。


「リオ閣下をお連れ致しました!」

「御苦労。リオ殿夫人達に下りる準備を伝えてくれ」

「了解です!」


 とりあえず、フェダーン様の隣に立つと、軽く頭を下げる。

 

「ようやく帰ってきたな。我も、何時の間にかリバイアサンが自分の宮殿に思えてきたぞ」

「変な噂が立ちますよ。とはいえ、やはり王都は肩が凝りますね」


 うんうんとフェダーン様も頷いている。


「このままリバイアサンの右ドックに軍艦2隻と補給船1隻が残る予定だ。左ドックは戦闘艦と戦機輸送艦が2隻だったな?」

「既に戦機輸送艦は入ってますから、戦闘艦だけが入れば終了します。貨客船はその後になるでしょうね」


「リバイアサンの乗員を全て下ろして、商会の荷物を運び終えるのは夜になってしまいそうだ」

「大所帯ですからねぇ。エミーは搬入を終えたところでレッド・カーペット前の哨戒を考えているようですよ」

「しばらくは魔獣狩りと言うことだな。了解だ。リオ殿には、星の海の状況もお願いするぞ」


 とりあえず頭を下げておこう。

 確認しておきたいところもあるんだが、ブリッジには士官達が大勢詰めているからなぁ。フェダーン様が本音を語ってくれるとは思えない。


 軽巡が斜路をゆっくりと登っていく。

 そのままドックの奥に進み、左手の桟橋に接岸した。

 ブリッジから、エミー達が下りていくのが見える。5つトランクを並べて若い士官が後に付いている。

 あのまま、プライベート区画まで運んでくれるに違いない。俺達のトランクは3つだったから、残りの2つはフェダーン様のトランクなんだろう。


「失礼して、先に降ります」

「ご苦労だった。後ほど会おう」


 遅いとフレイヤに文句を言われそうだからね。急いで軽巡を下りると、上に向かうエレベータへと走っていく。

 エレベーターを乗り継いで、プライベート区画に着いた時には、エミー達がソファーで寛いでいる。


「遅かったわね。やはりここが一番落ち着くわ」

「作業状況を見守っているのですが、出発を急ぐこともなさそうです。今回はフェダーン様の直営が2艦だけですし、ドックに入っていますから」


「確かに急ぐ必要はないだろうね。明日の朝食前に周囲を偵察して来るよ。ヴィオラの方も情報を欲しがっていたからね」


 ヴィオラは大河を越えたところで東に向かうらしい。

 大河まではもう2日は掛かるだろうから、大河の周辺までを見てくれば良いだろう。

 

「今夜は野戦食だとマイネが言っておりました。食糧庫の整理が間に合わないとのことです」

「お湯を入れれば食べられる奴だね。それに果物で十分だよ。第二離宮では毎日がご馳走だったからね。少し太ったんじゃないかと心配してたんだ」

「リオもリバイアサンの中を走ったら? ロベルさんは毎日走ってたわよ」


 外周回廊を一巡りするだけで2kmはあるんじゃないかな?

 そこまでしようとは思わないけど、確かに有効だろうな。大型艦であれば甲板を走るのを日課にしていると聞いたことがある。


 フレイヤが入れてくれたコーヒーをマグカップで楽しむ。フレイヤ達は紅茶のようだ。淑女はコーヒーを飲まないのかな?

 ビスケットを更に盛らずに、箱からそのまま頂いているを見ると、ヒルダさん達の教育がまだ足りないのかもしれない。


 俺から遅れること時間程で、カテリナさんとフェダーン様が一緒になって現れた。

 テーブル越しのソファーに腰を下ろした2人に、紅茶を運んできたのはエミーだ。フレイヤも一緒に席を立ったんだけど、カウンターの方で何かをしているみたいだな。


「やはり、ここはゆったりできるわね。フェダーンも王都を離れてほっとしてるんでしょう?」

「さすがに疲れる場所だ。私には戦場が一番だな」


 それもどうかと思うな。少なくとも女性から聞かされる言葉とは思えない。


「どうやら出発は明日になりそうです。その前に周辺の偵察は行ってきます」

「今度はリバイアサンでも狩りをするんでしょう?」

「メイデンさんとローザが居れば容易に狩れますよ。それに戦機輸送艦も使えますからね」


 リバイアサンから20km以下の距離で狩りをしていたんだが、今度は30kmを越えてもだいじょうぶだろう。

 とはいえエミー達のことだから、最初は近場で行うに違いない。


「とりあえずは北に向かうことになるでしょう」

「隠匿空間近くまで北上して、そこから南東に移動する予定です」


 エミーが補足してくれた。三角形の形で哨戒する予定だな。

 足跡が聞こえてきたかと思ったら、ローザとリンダが姿を現した。

 ローザがフェダーン様の隣に腰を下ろしたところで、リンダが俺達に頭を下げる。

 一緒に座れば良いと思うんだけど、ローザの後にいつも立つんだよね。


「今度は魔獣狩りじゃな。 我に任せておけば大丈夫じゃ」

「獣機の守りは重要だ。」きちんと役目をこなすのだぞ」


 フェダーン様が釘を刺している。あまり前に出るなと言ってくれれば俺も心配は無くなるんだけどねぇ。


「1か月後には各国が隠匿空間に戦姫を送ってくるそうよ。ローザにも協力してもらうことになるわ」

「軍に組み込むことはできぬと父様が言っておったぞ。となると……、ヴィオラ騎士団の桟橋となるのじゃな?」


「半分正解。少なくとも歩けることで隠匿空間を出られるはず。それまでは歩行練習の反復になるわ。上手く行けば1年以内にローザといっよに魔獣狩りができるわよ」


 カテリナさんの言葉に、フェダーン様が驚いた表情に変わった。

 そこまで改善するとは思えなかったのかな?


「可能なのか?」

「やってみないと分からないわ。でも、たぶんかなり改善することは間違いないでしょうね」


 まさかと思うけど、戦姫部隊を使って一気にハーネスト同盟軍を壊滅させようなんて考えていないだろうな?

 やってくる騎士は、騎士とは名ばかりの子供達に違いない。

 子供に戦をさせるのは、大人としてどうかと思うんだよなぁ。


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