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M-240 休暇が終わる


 生物学では、動植物の分類の基本を教え、物理学では重さと力の関係を実験で試すということまでやったんだが、学生達は興味深々で結果の原因を考えているみたいだった。

 直ぐに役立つ研究なんてどこにも無いから、長い目で化学を発展させてもらいたいところだ。

 カテリナさんの古い友人に改良型通信機の使い方を教えてあげたから、学生達の疑問はカテリナさんを通して俺達にも伝えられるだろう。

 どんな形になるのか皆目見当つかないんだが、とりあえず歩み始めたことは間違いない。


「ワシは、先に隠匿空間に向かうことにするぞ。フェダーン殿より飛行船を改良して欲しいとお願いされておるからのう」

「今後ニーズは増えると思いますが、大型の検討もよろしくお願いします」


 学府でたまたまあった、導師との話は短いものだった。

 飛行船でピンと来たのは、国境の監視と、北の回廊だ。早めに手を打っておきたいからに違いない。今から設計するとしても1年は掛かりそうだからなぁ。


 どうにか休暇が終わろうとしているけど、俺にとってはリバイアサンでのんびりしていた方が心休まる気がしないでもない。

 フェダーン様からの依頼金も受け取っているから、星の海の再調査をまた始めることになる。アリスと一緒にお宝探しがまた始まるのか……。


「次は何時頃休暇が取れますの?」

「それはドミニク次第になってしまいますが、2か月は先になってしまいそうです。魔獣狩りはリバイアサンを中心に行えますし、短期間の休暇であれば隠匿空間が利用できますから」


 エミー達の荷物の整理にマイネさん達までが借り出されている。

 色々と買い込んだからに違いないが、明日も陸港で買い物を計画してるんだよなぁ。

 それだけリバイアサンに余裕があることは確かなんだが、入団したてのヴィオラでの暮らしが時々懐かしくなるんだよなぁ。


「私からの贈り物は陸港に届けてありますから、皆さんで味わってくださいな」

「何時も申し訳ありません」

「リオ様の計画は私にもメリットがありますから、あれぐらいは容易いものです。サロンの皆さんもヴィオラ騎士団を好意的に見ているようです。何人か打診を受けましたが、それなりに評価しませんとお話できません」


 名声だけで近寄るのでは、後々問題になりそうだ。

 少しぐらい癖があっても、きちんと物事をこなす人物が良いんだけどね。

 

 休暇を過ごした第二離宮の最後に夕食は、何時もよりも豪華だった。フレイヤが上品に食べているのが印象的だ。

 最初から最後まで同じナイフを使うのが俺だけだったとは……。


「リオも少し覚えた方が良いんじゃない?」

「いや、マイネさん達の苦労を考えると使う食器は少ない方が良し、料理だって一度に出した方が良いんじゃないのか」


 そんな俺の言葉にヒルダ様が、口元を隠して笑っている。


「そうですね。私もリオ殿はそのままで良いと思いますよ。サロンの御婦人方がリオ殿を尊敬しているのは、そのスタンスを貫いているからでしょうね。

 辺境伯ではなく、騎士団の騎士としての立ち位置を変えずに他者と接しているのが、眩しいのでしょう」


 そうかなぁ? 俺の不作法を騎士団の騎士と言うことで誤魔化しているのが本音なんだけど……。


「おかげで貴族の派閥争いにも一歩引いているのが、誰にも理解できるのでしょう。結構面会希望者がありましたのよ。全て断っておきましたが、次は2、3方をⅡあって頂くことになりそうです」


「私に政治は分かりませんし、特定の派閥に入るのも問題のように思えるのですが?」

「派閥の勧誘であれば私が断りますから大丈夫です。勧誘と言うよりは相談でしょうね」


 俺はアドバイザーではないんだけどなぁ。

 それにヒルダ様を仲介するような、問題に俺が答えられるとは思えないんだけど……。


 翌日。朝食を終えた俺達はヒルダ様が用意してくれた2台の馬車に乗って、陸港に向かった。

 後ろの馬車にはマイネさん達と荷物が乗っているんだけど、荷物が馬車の荷台に乗せきれなくて、馬車の中にも乗せられているようだ。

 どうやらマイネさん達も、ショッピングを楽しんでいたみたいだな。


 1時間も掛からずに、陸港に到着する。

 桟橋への通路途中で俺達を待っていたのは、マリアンとライズの2人組だった。

 彼女達の傍にはテーブルが2つに椅子が4つある。男女が3人座っているのは、リバイアサンや陸上艦の乗員の確認をしているのだろう。


「早かったですね。乗船は、2番桟橋の軽巡洋艦です。そのままリバイアサンに向かってください。マイネさん達も一緒ですよ」

「荷物が多いんだけど……」


「軽巡のカーゴ区域に搭載してください。トランクはそのまま船室に運んでも良いですよ。荷物にロープを通して、これを付けてください」

 

 ライズが細い紐と10cm四方の金属板を渡してくれた。TAGってことかな?

 金属板にはヴィオラ騎士団、騎士リオと刻印が打たれてある。

 後ろから、マイネさんがちょこちょこと出てくると、俺の手から、紐とTAGを受け取って、俺達から離れていく。


「馬車はかりものですから、荷物を早めに移動しに行ったのでしょう」

「俺達の荷物は……、このトランク3つになるのか。それで、何時までに乗船すれば良いのかな?」


「18時までにお願いします。私達は商会が準備してくれた貨客船になりますから、少し遅れるかもしれません」

「少しは遅れても大目に見てやって欲しいな」

「予定時間の30分までは待つことにします。それ以上遅れるような人物では困ります」


 ある意味軍隊に似た組織だからなぁ。時間厳守ってことなんだろうけどね。

 まだ昼前だから、陸港で荷物運びのアルバイトをしている少年を呼び止めて、トランクを運んでまらうことにした。


 トランクを3つ運ぶだけで、銀貨1枚なんだから、嬉しそうな顔をして引き受けてくれる。

 

「あの軽巡ですね。軍でも最速を誇っていると聞きました。部屋まで運ぶことでよろしいんですね?」

「それでいい。よろしく頼むよ。俺達の乗船時刻を聞かれたら夕食後に乗船すると伝手てくれ」


 3つのトランクをロープで繋いで桟橋へと歩いて行く少年に手を振ると、フレイヤ達を連れて陸港の商店街へと向かう。


 先ずは、通りに張り出したテラス席に座ってコーヒーを楽しもう。

 ベラスコ達や、アレク達もやってくるだろうし、ローザ達だってやってくるんだからね。


 途中でタバコを大人買いして、腰のバッグに納める。魔法の袋があるから、これだけでトランク1個分は収納できる。

 珍しい果実の蒸留酒やブランディ―の上物を買えば、俺の買い物は終了だ。


「あそこなら、やってくれば直ぐに分かるはずよ」


 フレイヤが見つけた、喫茶店に入り、テラス席の一角に陣取る。

 コーヒーを飲みながら、通りを歩く連中を眺めると、顔見知りがたまに通り掛かる。

 互いに軽く手を上げて挨拶をしていると、ベラスコ達がやってきた。


「ここにいたんですか! とっくに来てると聞いて急いできたんです」

 

 ベラスコが店に入ると、直ぐに俺達のテーブルにやってきた。6人は座れる大きなテーブルだからそのままテーブル越しに座り、店員に注文を告げている。


「領地はどうでした?」

「色々と問題がある場所だったけど、島は素敵だったよ。次は一緒に行こう。アレクが大喜びだったからなぁ」

「釣りが楽しめるということですね? 次は絶対にご一緒します」


 嬉しそうな顔をしてるけど、すっかりアレクに感化されている気がしてならない。

 アレクが、騎士を辞めればベラスコが筆頭になるんだけど、アレクは十分にその任に堪えると言っているんだよなぁ。

 見た感じは、その辺りを歩いている若者と変わりないんだが……。


「いよいよ魔獣狩りに戻れますね。勘が鈍ってなければ良いんですけど」

「だいじょうぶよ。あれだけのスコーピオを相手に奮戦できたんだから」


 ジェリルもフレイヤ達と、今後の市議とに話を始めたようだ。

 リバイアサンも、メイデンさんや獣機部隊、それにローザ達がいるからね。やはり2手に分かれての魔獣狩りになりそうだな。


「スコーピオ戦で使った銃を魔獣狩りで使うつもりです。やはり弾数が多いのが魅力ですね」

「アレクもそうするのかな? だがあれは駆逐艦の艦砲そのものだから、威力があり過ぎるんだよなぁ」

「きっと持ち出しますよ。でも、そんな代物を持って後ろにいてくれるなら、俺達も安心できることは確かです」


 安心が買えるなら、問題は無いだろう。

 アレクも滅多にぶっ放そうなんて、思っていないに違いない。

 たぶんだいじょうぶだろう……、だと良いな。


 昼を過ぎたところでサンドイッチを頼んでみた。

 大皿に盛り付けられた各種サンドイッチを摘まみながらコーヒーを飲んでいると、ローザが俺達を見付けたようだ。


「ここにおったのじゃな。 我も一緒じゃから、ここで時間を潰すのも良かろう」


 そう言って、リンダに小さく耳打ちをしている。

 リンダが軽く頷いて席を立ったのは、何か頼むのかな?

 しばらくして椅子を2つ運んできた。ローザがジェリルの隣から新しい椅子に場所を替えている。


「1か月後には例の子供達がやってくるそうじゃ。リバイアサンが賑やかになりそうじゃな」

「例の話って?」


 すかさずフレイヤが俺に問い掛けていた。


「戦姫を動かそうという計画だよ。総責任者はカテリナさんだ。指を動かせる程度らしいんだが、ローザの話が同盟内で知れたってことかな」


 動くと良いんだけどね。

 戦機並みに稼働できる戦姫が6機あるとなれば、ハーネスト同盟軍も、枕を高くは出来ないに違いない。


 アレク達が現れたのは、14時過ぎだった。

 場所を変えて今度はレストランになる。シーフードレストランだから、サラダを注文してワインを飲みながら頂く。

 このまま夕食を取って軽巡に向かえば丁度良いな。アレク達とはしばらく一緒になれないから皆で騒ぐのはしばらくできないに違いない。


「例の話は?」

「国王陛下の耳に入りました。どうやら近衛兵部隊に長期休暇が下されるみたいです」


 ほう! と感心した表情を俺に向ける。

 

「追い落とすつもりだな。全く碌な奴じゃないだろうからそれで十分だろう」

「もう少し真面目なら、男爵家が続くんでしょうけどねぇ」


「本人に自覚がないんだろうな。自分達の暮らしがどうして成り立っているのか、分かっていないんだからどうしようもない。零落していくだけだろう」

「どうやら、政治改革を行うつもりかもしれません。俺をダシにするのは問題なんですけど」


「仕方あるまい。丁度良い人材がおるのだからのう。それなりの報酬は受け取っているのであろう?」


 そう言われると、何も言えないんだよなぁ。

 おかげで、騎士団主体の開拓団が作れる見通しが出来たことも確かだ。


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