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M-223 獣機の強化は可能なのか


 軽い食事を頂いての会食を終えたところで会議が終わる。

 フレイヤがフェダーン様とマクシミリアンさんをマクシミリアンさんの別荘に送り届けるのを甲板から一同でお見送りをする。


 ボートの人物の見分けが付かなくなったところで、広間に戻り皆で今後の話をすることになった。

 直ぐにフレイヤが戻ってきたのは、欠席裁判になりかねないと思ったのかな?

 1番の問題は、マクシミリアンご婦人の開催するサロンに誰が出向くことになるかなんだが、エミーは確定的だろうな。

 カテリナさんは絶対に出ないだろうし、サンドラ達は他人事でニヤニヤしながらアレクとワインを飲み始めた。

 さすがにレイドラは参加しないだろう。残ったのはフレイヤとドミニク、それにクリスの3人になりそうだ。


「レイドラはちょっとね。他人が多いところはダメみたいだから、5人が対象になるわ」

「エミーは決まりでしょう? となるとフレイヤになるんじゃなくて?」


 ドミニクの言葉に、クリスが追加している。

 その言葉を聞いて勢いよく首を横に振っているけど、一応リオ夫人ってことになるから、エミーと同格の筈だ。


「やはり騎士団長が参加するべきだと思うの。王都のサロンとなれば、それなりの立場が必要なんじゃないかな?」

「フレイヤ様もリバイアサンの火器管制の統括でしょう? 十分に資格を持っていますよ」


 懸命な抗議も、エミーに軽くあしらわれているみたいだ。

 だが、騎士団長が参加するというのも、サロンに新たな話題を提供しそうに思える。


「ところで、サロンって会員制クラブみたいなものだと思うから、会員の枠があるんじゃないかな。全員資格があるとは言ってたけど、サロンに出入りできる人数を確認した方が良いんじゃないかな?」

「そうね。ヒルダのサロンは20人以下の筈よ。貴族の中には50人を越えるサロンもあるらしいけど、噂話でお茶を飲むだけではねぇ……」


 カテリナさんの話からすると、かなりアバウトではあるみたいだ。

 中には慈善事業や、商会と組んで商売に手を出しているサロンまであるらしい。

 

「マクシミリアン公爵夫人たちのサロンは、学府でもたまに話題になったことがあるわ。奨学金の一部を頂いているの。もっとも、その見返りに学府の見学を度々行っているわ。使えそうな学生を見付けるのが目的ね」


「それもお金の有効な使い方でしょうね。ある意味投資と言えるかもしれません。見どころのある学生には別途援助してるんじゃありませんか?」


「その通りよ。それでサロンのおおよその見当は付くでしょう?」


 人材育成ということか。

 ウエリントン王国はまだまだ栄えるんじゃないかな。

 自分達の夫のためになれば一番良いが、そうならなくとも王国の為にはなるということだろう。

 となると、人物を見る目をサロンの御婦人方は持っているということだ。

 フレイヤが出掛けて行ってもだいじょうぶなんだろうか? と心配になったけど、農園の出身でも気立ては良いんだよな。面倒見は良いし、何でも率先して行う性格だ。

 生まれや、地位を云々するようなサロンでは問題かもしれないが、マクシミリアン婦人達のサロンはかなり違うようだ。

 やっていることはフェダーン様も理解しているということなんだろう。「人材の発掘」を口にするぐらいだからね。


「やはり、エミーとフレイヤは欠かせないだろうね。3人でも良いというなら、ドミニク達が交互に出れば良いと思うんだけど」

「我は参加できぬのか?」


 ローザが残念そうな口調で俺に問い掛けてくる。

 サロンって、夫人の集まりなんだよね。お嬢様は参加できないんじゃなかったか?


「ローザも遅かれ早かれサロンを持つことになるでしょう。エミーの付き添いで行くのは構わないと思うわ。でも正式な参加ということはヒルダが許さないと思うわよ」

「見学と言うことじゃな。一応母様にも確認しておくのじゃ」


 派閥争いになりかねないということか。

 エミーは降嫁により王位継承から外れているが、ローザは今でも何番目かの継承権を持っているからだろう。

 王女様もいろいろと制約があるようだ。

 俺達と一緒に行動しているのも、そんな柵から抜け出したかったに違いない。


 貰った島に向かうのは明日になりそうだ。

 さすがに夜間航行荷が重いだろうからね。

 船内の部屋を適当に使って貰おう。フレイヤがサンドラ達と一緒に下に降りて行った。

 さすがにローザを下には置けないから、2階の客室の1つにリンダと一緒に過ごして貰おう。


「潮は悪いんだが、何かは釣れるだろう。夕食前に楽しんでみるか?」

「オカズを1匹釣ればマイネさんが喜んでくれると思いますよ。ところで。まだ魚料理はダメなんですか?」

「さすがに手を付けることはできるんだが……、やはり肉が良いな」

 

 前進は見られるってことだな。アレクなりに頑張ったんだろう。

 船尾の甲板でアレクと釣竿を出す。

 釣り名人を自称するだけあって、俺が1匹釣る間に4匹を釣り上げるんだよなぁ。

 腕の差はどうしようもない。

 獲物をマイネさんに預けると、テーブルに着いてアレクと酒を酌み交わす。


「来年には、戦鬼をベラスコに譲りたい。本来ならリオに渡したいが、そうもいくまい」

「まさか、新しい島で暮らそうなんて贅沢を考えてませんよね。出来れば獣機を率いて欲しいんですが?」


「まだ引退するには早いからな。その辺りはドミニクに従うことにする。一応、3人まとめて戦機を下りることになる。新たな騎士探しを始めるようだが、ベラスコのような騎士を上手く見つけられれば良いが……」


 アレクやベラスコを見付けられたんだから、案外ドミニクは運が良いのかもしれない。

 俺も、その中に入るのかな?

 俺のせいで、だいぶヴィオラ騎士団が変ってしまったけどそのことに文句を言う者はいないんだよなぁ。

 たまに昔は……、と思い出を仲間と話している連中がいるけど、今の暮らしに不満を持っているわけではないようだ。

 12騎士団にも一目置かれる存在と言うことに、誇りを感じているようにも思える。

 この先、どんな騎士団になっていくのだろう? 俺にもさっぱり分からないけど、騎士団の活動を止めても、のんびりすることはできないだろうな。


「フレイヤには話したんですか?」

「薄々感じてはいるようだ。それで、相談だ。獣機は汎用性が高く、人体への浸食が無い。あれならまだまだ乗ることができる。

 今回のレッド・カーペットでは、魔気のボンベを増やすことで活動時間を伸ばしていたが、それだけでなく獣機本体を強化することはできないか?

 さすがに大型魔獣と直接交戦しようとまでは考えていないが、小型種なら獣機で狩れるんじゃないか?」


 狩りの範囲を広げようということなんだろうか?

 戦機輸送艦より一回り小型の輸送艦を作れば、獣機の迅速な展開が可能だ。

 今までの狩りのように落とし穴を掘って待ち伏せるにしても、その横に陸上艦を停める必要は無くなりそうだ。

 だけど獣機単独での狩りは危険ではないかな?


「メイデンの戦闘艦と組めば、3つ目の狩りのパーティが作れるんじゃないか? あの戦闘力なら、獣機が蹂躙されることは無いだろう」

「可能でしょうね。メイデンさんも端なる哨戒よりはやる気が出るとは思いますが……」


 既に作戦まで考えていたのか。

 従来の獣機を越えても、戦機を越えることがないから、需要があるとは思えないな。

 だけど、カテリナさんや導師なら獣機の強化を1度は考えたはずだ。

 実現できなかったのは何か理由があるんだろうか?


「少し考えてみます。でも実現は難しいと思いますよ」

「考えてくれるだけでもありがたい。リオができないなら、他の連中には不可能だろう」


 グラスにブランディーを注いで、美味しそうに飲んでいる。

 アレクの希望ってことだから、叶えてあげたいんだけどなぁ……。

                ・

                ・

                ・

「相談って、そう言う話ね。……そうねぇ、私も考えたことはあるし、導師もいろいろとやっていたわね。だけど、形にできなかった。何故だと思う?」

「獣機の素体はホムンクルスでしたね。頭の無い人造人間ということですから、大型化することができなかったんじゃありませんか?」


「鋭いわね……。その通りよ。人間ではなくトラ族の細胞を培養して作られたの。それでも身長8mを越えることはできなかったわ。

 それ以上の巨大化は、人型を取れずに肉の塊になってしまうの。

 人体を使った実験でないから、私達の利論実験も学府内の実験の失敗として表には出なかったけどね」


 成長を一定にする遺伝子が働くってことかな? それを無理に抑えるとどこまでも暴走してしまうようだ。

 遺伝子が関わるとなると、この世界では無理な話になりそうだ。そもそも遺伝という認識はあるんだが、細胞を作る遺伝子を特定できるような生物化学は無いからなぁ。


『ホムンクルスを大きく作るという試みはあったようですが、その逆の例はあるのでしょうか?』

「アリスも聞いてたのね。……そうねぇ。無かったんじゃないかしら。強いてあげるなら、大怪我で治療魔法でも復元できないような場合に、ホムンクルスの体を利用した医療があるけど……」


『治療対象者の体の大きさに合わせられるなら、その技術は使えるでしょう。ホムンクルスそのものを使うのではなく、ホムンクルスを強化した外骨格で覆うことで現在の獣機を越える機体を作るのは、可能ではないですか?』


 アリスの言葉を呆然とした表情で聞いていたカテリナさんが、突然椅子を蹴飛ばすような勢いで立ち上がった。


「出来るわ! できるわよ!!」

 

 凄い勢いで広間を駆けだしたけど、だいじょうぶなんだろうか?

 パタパタと足音を立てて階段を登っていく様子を眺めながら、残ったコーヒーを飲む。

 外骨格と言うことになれば、ますます騎士に似た姿になってしまうんじゃないかな。


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