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M-220 バルシオスに招待しよう


 フレイヤが偵察から帰ってきた。

 桟橋があるようだから、マクシミリアンさんの方はボートで迎えに行けば良さそうだ。


「問題は、フェダーン様の方だな。さすがにこのデッキに着陸するのは問題だぞ」

「通りが広がったんでしょう? 荷馬車がすれ違えると聞いたけど?」

「そうは言っても、荷馬車より飛行機は大きいんじゃないか? まあ、下りられるだけの技量があれば良いんだが……」


 ギリギリらしいな。

 その時は、ハシゴを使って下りてくるぐらいは思想に思えるんだよなぁ。

 結構活動的なお妃様だからねぇ。


「先に船に戻って準備をするにゃ!」


 フレイヤの操縦でマイネさん達が先行することになった。一緒にカテリナさんとドミニク達が乗って行ったけど、ここにいてもしょうがないと思ったのかな?


「迎えに行くのは、リオ達で良いだろう。フレイヤが戻ったら俺達も船に行ってみよう。荷造りは終えたし、竿も用意した」

「先ずは偵察じゃないですか?」

「だから、海の偵察だ」


 放っておこう。少なくとも島の周囲の地形は分かるだろう。

 自慢の釣竿を布で手入れをしているアレクを眺めながら一服をしていると、娘さんが来客を俺達に教えてくれた。

 さて、どっちだろう?


 恐る恐る玄関に向かうと、フェダーン様が副官を連れて立っていた。


「だいぶ早いお越しですね。どうぞこちらに」

「良い場所に別荘を建てたものだ。確か筆頭騎士のアレクの所有と聞いたが?」


「クルーザーを頂いたので、アレクを誘って島に向かおうということになりまして……」

「そう言うことか」


 笑っているところを見ると、見せびらかそうとやってきたことを知ってるみたいだな。

 さすがに飛行機は速いということになる。

 マクシミリアンさんは馬車だと聞いたから、もうしばらく掛かるんじゃないかな。


 リビングに通して、ソファーを勧める。

 正面にはアレクとサンドラ達だ。水着姿なのは休暇中ということで大目に見て貰おう。

 副官が少し驚いているけど、気にしたら負けだからね。


「はるばるお越しいただき恐縮です。生憎と休暇中の別荘暮らし。突然のお越しに着替えもままなりませんでした」


 アレクとサンドラ達が立ち上がって騎士の礼をする。

 様にはなってはいるんだが、生憎と水着姿だからねぇ。


「気にせずとも良い。私の方が押し掛けてきたのだからな。だが、別荘だとすれば会議室も無かろう? マクシミリアンが隣に別荘を持っているそうだが、そちらに移るのか」

「頂いたクルーザーに広間がありますから、そこを使おうかと。ドミニク達が先行して準備をしています」


 とりあえず、エミーがワインを運んできてくれた。

 副官にもw身を浮かべて渡しているから、恐縮して受け取っている。

 元王女様だからねぇ。身分違いが大きいってことなんだろうな。


「ローザも一緒と聞いたが?」

「先ほど、クルーザーに向かいました。ここまでローザが舵を取っていたんですよ」


 ちょっと目を大きくしてフェダーン様が驚いている。

 

「船員を雇わなかったのか?」

「自分達で動かそうってことで……。何とかなりました」

「さすがは騎士団と言うことか。それにしても……」


 呆れてるんだろうな。俺だってかなり無茶だと思ってたんだよなぁ。


「それで、マクシミリアンの願いとは何だ? たぶん裏で動いているのはリオ殿であろう」

「領地の開発と西への備えを、同時並行で進めたいと思っています。マクシミリアン殿の帖地に設ける訓練所は新兵の訓練施設とするのではなく、新たな武器の習熟を図る訓練所にして頂きたいと……。更に軍の退役兵を私兵として雇いたいと考えていますが、可能であればトラ族それにネコ族に限定して頂きたい」


 ワインを口にしながら、窓の外に見えるバルシオスを眺めている。

 俺の計画がどんな影響を及ぼすかを考えているのだろう。


「さらに追加があるのではないか?」

「分かりますか。道路の整備です。訓練所への道を作って頂ければ、南北に連なる道を俺達で整備するのはそれほど難しくはないでしょう」


「農業を始めるのだろうが、王都周辺の農園とは価格競争で負けるのではないか? まさか騎士団に直接販売しよう等と考えておるまいな?」

「そのまさかです。騎士団以外に軍にも供給できるかと。とは言っても、成功したら出の話ですから、しばらくは隠匿空間の商会へ卸そうかと考えています」


「王都での販売となれば利権が絡むだろうが、隠匿空間なら問題あるまい。騎士団も野菜の入手には苦労しているだろうし、軍もそれなりだ。

 とはいえ既存の利権にも影響しそうだな。その辺りは商会ギルドとの調整が必要だろう。ヒルダの耳に入れておけば勝手に調整してくれるはずだ」


「ところで、西の侵攻はいつ頃と予想しているのでしょうか?」

「軍機だが、リオ殿なら問題あるまい。3年以内は不可能だろう。5年となれば局所的な衝突が起こる可能性も出てくる。10年以内には確実にやってくるに違いない」


 平和な3年間でどこまでできるかが試されそうだな。

 局所的な戦が問題だが、威力偵察ならば監視網の構築で進行方向を特定できるだろう。

 最初にやることは、監視線の構築になりそうだ。


 それを考えると、小型の飛行船が欲しいところだ。導師に強請ってみるか。


「例のロケット弾発射装置を搭載した駆逐艦は、訓練所においても良さそうだな」

「カテリナさんの作る新たな兵器の試射場も兼ねるようですから、それがよろしいかと」

「読めてきたぞ。なるほど良い案に思える。出来るだけの協力をしよう」


 まあ、防衛兵器の開発とその習熟が主体になってしまうんだが、中隊規模の精鋭が駐屯することになることは間違いあるまい。

 国境線を守る貴族の私兵を合わせれば1個中隊を越えるだろうから、足止めは十分にできそうだな。


「リオ! お客さんよ」

「やってきたようだな。行くが良い。我は、一足先にクルーザーに行けそうだ」


 ボートがやって着るのが見える。この場所からだとハシゴを下りることになるんだけど、フェダーン様はそんなことには気にも止めないんだよなぁ。

 さて、挨拶に行ってくるか。


 玄関にいたのは、若い士官だった。

 マクシミリアン邸への招待ということだったが、丁寧に辞退してこちらへ招待することを伝える。


「マクシミリアン邸への訪問は1度しているんだ。良い機会だから、今度はこちらに招待したいと思っている。

 桟橋にボートを向かわせると伝えてくれないか。既にフェダーン様がいらっしゃっているとも言づけて欲しい」


「了解しました。桟橋には直ぐに向かった方が良いでしょうか?」

「そうだな。20分後と伝えてくれないか? そうそう、俺達は休暇中だから、こんな格好なんだ。その辺りはあらかじめ言っておいてくれないか」


 ツナギぐらいは着て欲しいんだけど、暑いからなぁ。ボートも

それぐらいには戻ってくるだろう。

 士官が綺麗に騎士の礼をして、帰っていった。


「これで来客は終わりかしら?」


 サンドラの問いに頷くと、玄関にカギを掛ける。

 保冷庫は玄関の外にあるから、昨夜の釣果はクロネルさんの配下が運んでくれるに違いない。

 

 戻ってきたボートに今度はアレク達が乗り込んだ。

 俺だけが残ってしまったけど、マクシミリアンさん達を迎えに行かねばならない。

 とりあえず、上にTシャツのようなシャツを羽織ったけど、ラフも良いところだ。

 マクシミリアンさんなら大目に見てくれるだろうが、他の貴族達がいたら顰蹙ものだろう。

 その時は、休暇中だと開き直るしかなさそうだ。

 デッキで一服をしながら待っていると、直ぐにボートが引き返してくる。


「今度は、マクシミリアンさんでしょう? 乗って頂戴。それと、誰もいないのよね?」

「ああ、誰もいないよ。さて、行ってみるか!」


 フレイヤがボートを動かせるとは思わなかったけど、簡単なのかな? 俺も運転出来たら良いんだけど……。

 5分もせずに、隣の別荘が見えてきた。なるほど桟橋があるな。ボートを持っているのは釣りをするためなんだろうか?


「桟橋で待ってるみたいだね。待たせてしまったかな?」

「さすがは貴族ね。ショートパンツに襟の得るシャツを着ているわ」


 俺達ほどラフではないけど、それなりに合わせてくれたんだろう。

 隣の2人は女性だが、奥さんなのかな? その後ろにも2人の男性が立っているが、マクシミリアンさんと同じような姿だ。案外マクシミリアンさんの服を借りてるのかもしれないな。


「遅くなって申し訳ありません。先にフェダーン様を乗って頂きましたので、この時間になってしまいました。どうぞお乗りください」

「あれが、例のクルーザーかい? 楽しみだね」


 手を取って、嫁さん達を1人ずつボートに乗せると、その後にマクシミリアンさん達が乗り込んだ。

 笑みを浮かべながらフレイヤが後ろを向くと、軽く頭を下げる。全員が席に座っていることを確認したところでボートを桟橋からバックさせると、大きく回り込むように進路を変えた。


 ちょっと乱暴だけど、これぐらいは構わないだろう。

 直ぐに船尾にある桟橋のような場所に到着した。

 

 カタマランの真ん中にボートの船首が入るような感じだから、ちょっと冷や汗が流れてしまう。

 とはいえ、これで適正な位置のようだ。クルーザーの船尾が海面から50cmほどにあるから、直ぐにボートから下りられる。


「後は俺達がやるから、リオは案内を頼むぞ!」

「了解です。よろしくお願いします」


 俺とアレクの会話にマクシミリアンさんが笑みを浮かべている。


「リオ殿が、いつも騎士団の騎士を強調しているのはこういうことですか」

「ヴィオラ騎士団の騎士ですからね。筆頭騎士との関係は良好ですよ」


 酒さえ飲まなければねぇ……。何故か、アレクの代理が多いように思えるんだよなぁ。

 先にボートを下りて、マクシミリアンさんの奥さん達の手を取って乗船を手伝って上げる。

 2人が乗船したところで、先に甲板に上がることにした。

 船尾のボートを寄せる場所は3人が立つのがどうにかだ。


「あまり豪華なおもてなしはできませんが、どうぞこちらに!」


 軽く頭を下げると、2人の先に立って階段を上る。

 甲板にはフェダーン様達が待ち構えていた。



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