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M-219 マクシミリアンさんとフェダーン様がやってくるらしい


 満潮時刻に釣りを始めるのではなく、その前後が狙い目らしい。

 夕食を終えると後片付けが始まる中、俺とアレクで夜釣りの準備を始める。


「釣竿はたくさんあるぞ。リオの釣竿はこれだな。フレイヤの竿もあるし、予備の竿もあるから皆で楽しめるだろう」

「でも、かなり飲んでますよ。だいじょうぶでしょうか?」


「向こうで食いついてくれるから問題ないさ。あまり流暢に構えていると釣り針を飲み込まれてしまうんだが、外す道具もあるからだいじょうぶだ」


 釣竿だけで10本は運んだろう。俺の竿はどれかな?

 リールのところに名前が書かれた木札が下がっていた。2本あるから前に使っていた竿がフレイヤ用で良いはずだ。


「たくさん釣るのよ。クロネルさんが楽しみにしてるんだから」


 アレクに頼るというのもねぇ……。確かに格安ではあるんだよな。

 餌の切り身が更に並べられると、そのまま食べてしまいそうだ。

 ワイン片手のカテリナさんの目が皿に注がれているから、気を付けておかないといつの間にか無くなってしまいそうだ。


「我はどれを使えばよいのじゃ?」

「これで良いだろう。竿の後ろに付いている紐を柵に結わえてくれよ」

「分かっておる。大きいのが釣れたら、竿が持っていかれてしまうからのう」


 ニコニコしながら、アレクから竿を受け取っている。

 リンダが仕掛けを付けてあげている。エミーが皿から魚の切り身を2枚持ってきたようだ。針にローザがチョン掛けすると、仕掛けを投入した。

 浮きをジッと見ているけど、直ぐに掛かるとは思えないんだけどなぁ。


「私達も始めましょう!」

「そうだね。ローザより先に釣り上げたいところだ」


 結構対抗意識が出て来るんだよなぁ。

 次々と竿がデッキの手摺りに並び始めた。さて、どの竿に食い付いてくるのだろう。

 タバコに火を点けると、アレクの横に座って竿の列を眺めることにした。


「我が最初じゃ!」


 ガタガタと竿が踊り出したのを見て、ローザが竿に向かって走っていった。

 竿を掴むと、直ぐに竿を立てようとしてるんだが、中々引きが強いようだ。これは見ていた方が面白いんじゃないか?

 リンダが介添え人として参加してみたいだけど、引き上げるまでは苦労するんじゃないかな。


「大物みたいだな。サンドラ、上手く取り込んでくれよ」

「了解よ。逃がしたらローザが悔しがりそうだものね」

 

 アレクの後ろで飲んでいたサンドラが席を立ったようだ。あの大きなネットを持って来るのかな。

 

 ん! 今度は俺の竿だ。


「俺のが来ましたね。群れが来たみたいですよ」

「大量になりそうだな!」


 アレクの竿も踊り出した。

 さて、少なくともローザより大きいのを釣るか、それとも数を釣るかしないと、兄貴としての矜持があるからなぁ。


 3時間程すると、当りがなくなる。

 どうやら群れが去ったようだ。引き潮では釣らないと言っていたから、明日の昼と核に再び釣りをすることになるんだろう。


 マイネさん達も釣りを楽しんだようで、獲物を捌きながら笑みを浮かべている。

 たっぷりと氷を詰めた箱に入れて、別荘の入り口近くに作られた保冷庫に運び込んだ。


 全て終わったところで、皆でワインを酌み交わす。

 大漁だったから皆が笑みを浮かべているんだよなぁ。

 ドミニク達も嬉しそうだ。


「今夜はこれでお開きだ。明日も頑張って欲しい」


 アレクの言葉に頷いたところで、各自が部屋へと向かう。

 アレク達のプライベート以外には部屋が3つだからなぁ。適当に部屋を割り振ったけど、マイネさん達は小さめの客室を使うようだ。

 何時もの部屋に入ったけど、エミーとフレイヤ、それにドミニクとクリスまでもが付いてきた。

 ベッドが足りるのかな?

 

「ベッドが大きいから4人で寝られるわ。リオはこのソファーを使ってね」

「4人も寝られるの?」

「何とかなるわ。寝相は皆良いと言ってるし」


 他の3人は分かるけど、問題はフレイヤだと思うんだけどなぁ。何度蹴落とされたか分からないぞ。

 シャワーを浴びて魚臭さを無くす。

 皆が次々と入ってくるから、シャワー室で身動きが取れなくなってしまうほどだ。

 それでも何とか汗を流したところで、脱いだ水着をシャワーで洗い、テーブルに乗せて干している。

 明日の朝までには乾くだろう。


 翌朝。体の重さに気が付いて目を覚ましたら、クリスが俺の上にいた。やはりフレイヤに落とされたに違いない。

 ぐっすりと眠っているから、もうしばらくこのままクリスを抱いていよう。


 クリスがぱっと目を開く。

 笑みを浮かべているけど、クリスを抱いて体を起こし、そのままシャワー室に向かった。

 冷たいシャワーで眠気が冷めたところで、水着を着こむ。


「やはりフレイヤに落とされたのかい?」

「寝相が悪いのね。でも、リオと一緒に眠れたから問題は無いわよ」


 まだ寝ている3人を置いて1階に向かうと、ローザ達がサンドイッチを食べていた。


「兄様にしては朝が早いのう? フレイヤに蹴飛ばされたようじゃな」

「ベッドが小さかったですからね。今夜は船で眠ることにします」


 テーブル越しにクリスと腰を下ろすと、マイネさんがマグカップに入れたコーヒーを運んできてくれた。


「サンドイッチを作ってるにゃ。出来たら運んで来るにゃ」

「バラバラに起きて申し訳ありません」

「だいじょうぶにゃ。だいぶ慣れてきたにゃ」


 慰めに聞こえないから、それなりに苦労を掛けているようだ。

 大皿に作って用意しておいてくれても良いんだけど、マイネさんは滅多にそんなことをしないんだよね。

 やはり王宮務めが長かったからなんだろうな。


『マスター。マクシミリアン様がこちらに向かったようです』

『だいぶ急な話だね。それほど急ぐことなんだろうか?』

『フェダーン様から追伸です。昼に飛行機で向うとのことでした』


 それって、かなり問題じゃないのか?

 早くアレクに知らせたいけど、まだ起きてこないようだ。

                ・

                ・

                ・

「公爵とお妃様が来るとなると、この別荘と言う訳にもいかないだろうな。やはりあの船に乗せた方が良さそうだ」

「ボートはあるけど、アレクの別荘には桟橋がないのよねぇ。マクシミリアン公爵の別荘は隣なんでしょう? フレイヤ、桟橋があるかどうか見て来てくれない?」


 フレイヤが腰を上げると、ローザも一緒に席を立った。ボートに乗ろうというのかな? 慌ててリンダも後を追いかけて行ったぞ。


「桟橋が無ければ、マクシミリアン公爵の別荘を借りることになりそうね。重要な会議が自分の別荘で行われるのは貴族にとって名誉らしいから、それでも問題はないはずよ」


 カテリナさんの言葉で少しは気が楽になる。


「それにしても何の話だ? またハーネスト同盟軍が動いたとなれば俺達の休暇も終わりになりそうだが?」


 アレクの言葉に、皆に詳しく説明することになってしまった。


「たぶん西の領地の話だと思います。漁村が1つと言うことで、あまり役得も無いんですが、島はありがたいと思ってます。

 同じように、あの時叙勲が行われた軍人の多くが国境近くの領地を手に入れました。一番大きな場所はマクシミリアンさんになるんですが、飛び地も良いところです。

 この先ハーネスト同盟軍が再び侵攻を開始するとなると、その対応いかんでは責任追及がなされることに成ってしまいます。そこで……」


 新型兵器の訓練場をマクシミリアンさんの領地に作る。東西南北に道路を整備して、緊急時の兵員移動の迅速化を図る。更に、安い私兵として退役軍人の再雇用を行う等の計画を披露した。


 アレクも珍しくコーヒーを飲みながら、真剣な眼差しで俺の話を聞いている。

 ある程度ドミニク達には話したんだが、12騎士団との調整は話してなかったな。

 かなり先の計画に少し驚いていたけど、反対ではないようだ。


「驚いた。兵力増強と開墾を一緒にするのね」

「あまり資金を使いたくありませんから、開墾した土地は開墾者の土地と言うことにしようかと。アレクの農場の半分ほどの土地であれば100区画以上作れると思っています」


「その数倍は可能だろう。土地は彼等の物として、出来た作物を売る手段は?」

「12騎士団と俺達です。軍の方もそれなりに欲しがるでしょうが、俺達の領地で採れた品物は騎士団専用に販売しようかと考えています。さすがに無税には出来ないでしょうから売値の10%を税金としたいですね」


「その税金も領地の運営に使うんでしょう?」

「漁村を大きくして見ませんか? 将来的には他の騎士団にも魚を供給できそうです」


 他の領地では放牧もお願いしたいところだ。

 騎士団や機動艦隊専用の、一大食料供給基地ができると思うんだけどなぁ。


「王都の商会からクレームが来ないかしら? それに大量に食料生産が行われたら王都周辺の農園の収入が減ることも考えられるわよ」

「現状ではそうなるでしょうね。ある程度は住み分けが必要だと考えてます。より商品価値が高い作物を作って王都の住民に供給し、我々は品質より量を得ようかと。騎士団や軍の胃袋は大きいですからね」


 何といても、距離が遠いからなあ。同じ品質でも王都の市場に到着するころには、近隣農家の品と確実な差ができてしまう。

 2、3割の安値が最初から付いてしまいそうだ。


「隠匿空間に卸すだけでも喜ばれそうね。商会への根回しは未だなの?」

「どれぐらいの生産量になるか皆目見当もつかないからね。隠匿空間の商会ギルドと調整したいと思ってるんだけど」


 ちょっと悩みながらドミニクが頷いてくれた。

 これで、面倒な事を商会の連中に丸投げすれば問題ない。


「それにしても、西は物騒だな。やはり侵攻してくる可能性は高いのか?」

「直ぐにと言うことは無いでしょう。サーゼントス王国の王侯貴族がウエルバン王国に亡命しているぐらいですからね。しばらくはサーゼントス王国領内の内乱鎮圧と、領地の切り取りで忙しいと思ってます。それが済んで落ち着いたらやってくるんじゃないかと……」


 全く迷惑な隣国だ。

 東を向かずにそのまま西に向かって欲しい。

 それができない理由もあるのだろうが、一番危惧すべきはウエルバンとガルトスの両王国が交戦を始めた時だ。

 どちらが勝ったとしても、大きな国ができてしまう。

 当然軍事力もウエリントン王国を凌ぐことになるから、数で来られると対処できなくなりそうだ。

 さすがにレッド・カーペットのようにはいくはずもない。

 雌雄を決するような戦が始まってしまうんだろうな。


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[気になる点] 3時間程すると、当りがなくなる。  どうやら群れが去ったようだ。引き潮では釣らないと言っていたから、明日の昼と核に再び釣りをすることになるんだろう。 [一言] 誤字報告
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