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M-215 動かせるのかな?


 1番桟橋がどこか分からないと言ったら、事務所から出て波止場まで案内してくれた。

 どうやら東から、桟橋に番号を振っているらしい。


「あの白い船ですよ。反対側に停泊している船が、王族所有の『アイネ・クランツ』です」

「ありがとう。俺達の船らしいけど、頂いた船だからねぇ。見るのも初めてなんだ」


 案内してくれた事務所のお姉さんに手を振って、波止場を東に歩いて行く。

 それにしても大きな船だ。全長30mはあるんじゃないか?

 それに、異様に横幅がある。ひょっとしてカタマランかもしれないな。

 

 白い船体に蒼のストライプが入っている。中々おしゃれな船だけど、一体いくらぐらいするんだろう?

 反対側の船よりはさすがん小さいけど、結構大きな部類に入るんじゃないかな。


「ここは王室に関わる桟橋だよ。見学ならここから先は通せないんだが」


 セーラー服姿の警備兵が、俺の前に現れた。

 不審人物と思われたかな?

 黒の上下に、帽子だからなぁ。しっかりと武装してるとなれば、警備兵がやってくるのも無理はない。


「レクトル王国より、バルシオスを頂いたリオと言います。どんな船を頂いたのかとやってきました」

「リオ閣下でしたか! 御婦人方は先程乗船しています。今夜出掛けられるのですか?」


「動かせるかどうか……、やってみないと分からないんだよねぇ。騎士団だから陸上艦の操船なら先に乗船した女性達ができるんだけど、陸と海では勝手が違うから、無理だと判断した時には明日帰ることにするよ」


 呆れた表情をして俺の話を聞いていたけど、俺だって呆れてる1人なんだよなぁ。

 フレイヤ達は動かそうと努力するんだろうけど、港の中なら大事故にはならないだろう。沈没したら桟橋から誰かがロープを投げてくれるんじゃないかな。


「もし船乗りが必要であれば、声をお掛け下さい。数日あれば用意できると思います」

「ありがとう。とりあえずやってみるよ。でもダメな時はお願いしたいね」


「それじゃあ!」と片手を振って、甲板へのタラップを登って行った。

 甲板は板張りだ。このクルーザー自体が木造なのかもしれないな。

 船内に明かりが点いている。

 とりあえず扉を開けて船内に入ったんだけど、そこはホールのような空間が作られていた。

 床は船尾のデッキにまで伸びている。パーティ用の部屋ってことかな?

 船首方向にテーブルセットが4つ並んでいるから、ここで食事もとれるんだろう。

 船首方向に扉が2つある。右の扉を開けると調理室があった。左は船首方向に通路が作られ、左手に扉が2つある。

 左手の扉を開けると、トイレがあった。前方の扉の先にあったのは、ソファーセットが置かれている。

 ここでコーヒーを飲めたら、さぞかし気分が良いに違いない。


 皆はどこに行ったんだろう。船尾デッキにはいなかったから、下かそれとも上なのか……。


「遅かったわね! 皆こっちにいるわよ」


 広い部屋の船首に作られた階段の上からフレイヤが現れた。

 上だったようだ。ブリッジで操船の仕方を確認してたのかな?


「今行くよ! それで動かせそうかい?」

「何とかなりそうかな? 騎士団長が2人もいるんだもの。それぐらいはできないとね」


 フレイヤの頭の中では、陸上艦と会場を進む船は同じなんだろうな。


「2階にはスイートルームと客室が2つあるだけよ。リオの荷物はスイートルームに運んであるわ」

「1階がパーティルームだとすれば、その他の乗客は2つの船の中ってこと?」


「2段のシングルベッドルームが6つにダブルが6つよ。その他にメイドルームが1つと船員用の部屋が2つあったわ」


 やはり操船を行う船乗りは必要だということじゃないのかな?

 ちゃんと出来るんだろうか?


「ここがブリッジよ」


 通路の突き当りの扉を開けると、広いブリッジが現れた。陸上艦よりも広い気がするな。

 中央の舵輪のすぐ隣に地図を広げる机まで付いていた。

 地図が広げられているけど、たぶんウエリントン王国の近海図だろう。後ろの方には地図を丸めて入れて置けるホルダーがあった。


「……動力は陸上艦と同じです。動かすことに問題はありません」

「スクリューが4つあるのよねぇ……。メインのスクリューは分かるけど、横にあるのが良く分からないわ」


 バウスラスタ―にリアスラスターがあるのか!

 使い方が理解できないのだろう。後で教えてあげよう。


「何とかなりそうかい?」

「何とかするのが騎士団でしょう? とりあえず港を出れば色々できそうね。バックして、桟橋を離れれば回頭して出航できそうよ」


 さて、どうなることやら。

 かなり破天荒な休暇が過ごせそうだ。


「ところで食事はどうするの?」

「マイネ達が食材を持って夕暮れ前にやってきます。明日が楽しみですね」


 楽しみかなぁ? ……そうだ!


「もしも、自由に操船できるなら、アレクの別荘に行ってみないか? アレクだって新たな釣り場なら喜びそうだ」

「それもおもしろいわね。ところでどこに別荘を作ったの?」


 地図を確認して半島を探す。半島の付け根に漁村があったな……。


「ここだ。直線距離なら50ケム(75km)程度じゃないか」

「この船の巡航速度は毎時18ケム(27km)あるらしいわ。3時間も掛からないのね」


 俺達の貰った島までは200ケム(300km)ほど離れているようだ。だいぶ時間が掛かりそうだな。


 1階に下りてテーブルに座ったけど、レイドラはマニュアルをまだ読んでいるようだ。

 いろんな設備があるけど、かなりのところで自動化が行われているように思える。化学技術は無くとも、それに代わる魔道科学が発達しているおかげなんだろう。


「飲み物があったわよ。ワインが20本も棚に並んでいたわ」


 クリスと一緒に調理室を探していたようだ。

 コーヒーの方が良かったんだが、しばらくは諦めることになりそうだ。


 とりあえず乾杯はしたものの、明日を考えると気が重くなってしまう。


「やってきたわよ! マイネ達も一緒よ」


 カテリナさんがやってきた。直ぐに俺達と共にテーブル席に座ったけど、大きなトランクを持って来ている。その後ろから、少年達と共にマイネさんがやってきた。食材が入ったカゴを5つも運んできてるんだよなぁ。今夜が楽しみになってきた。

 運び終えた少年達に、フレイヤがチップを渡している。

 笑みを浮かべて受け取っているところを見ると、少し奮発したのかな?


「これなら問題ないにゃ。今夜はサッパリしたものを作るにゃ」


 調理室から出てきた、マイネさんが俺達に告げる。

 迎賓館でこってりした食事をしてきたからね。あんな食事を続けたら直ぐにメタボになってしまいそうだ。


「マイネさん。コーヒーが欲しいんだけど」

「何時もの味にゃ? 直ぐにできるにゃ」

「「私にもお願い!」」


 やはりワインよりはコーヒーってことだな。

 

「それで本当に自分達で動かすの?」

「一応、挑戦しても良さそうです。ダメなら警備兵が4日あれば船員を集めてくれると言ってくれました」


「そうね。先ずは試してみる。それは全てに通じることよ」


 それも善し悪しだと思うんだけどねぇ……。

 でも、カテリナさんの行動原理はそう言うことなんだな。少し分かった気がしてきた。


 夕食が終わると、船尾のデッキに出てワインを頂く。

 桟橋はいくつ並んでいるんだろう?

 1番桟橋は2隻だけだけど、他の桟橋には1つの桟橋に数隻が停泊している。

 華やかな明かりが点いているのは、どこかの貴族が船上でパーティを開いているのかもしれない。

 俺達もたまに開いた方が良いのかな?

 今度フェダーン様に相談してみよう。


「まだ、薬は残ってるのかしら?」

「だいぶ少なくなりましたけど、今月ぐらいは持ちそうです」

「今度は、これを試してみて。新作なの」


 近寄ってきたカテリナさんがポケットから大きなビンを取り出した。銀貨より一回り小さいぐらいの錠剤なんだけど、今度はマーブル模様が入っている。

 模様はともかく、これを飲み込んだら喉につっかえてしまいそうだ。


「かみ砕いてもだいじょうぶよ。一応、他の人が間違って飲まないように、毒物マークをビンに大きく描いておいたわ」


 骸骨の下に骨でバッテンが描いてある。これってどの世界でも共通なのかな?

『リオ君専用!』と手書きしてあるから、誰も飲もうとしないとは思うんだけどねぇ。


「アリスの依頼で鉄分を強化してるんだけど、血液に多量の鉄分があるとはねぇ……。おかげで、婦人用の薬も出来たのよ」


 鉄分不足を補うサプリメントと言うことかな?

 また特許料がカテリナさんに入ってくるのだろう。いつもより期限が良さそうだ。


「ヒルダから聞いたんだけど、貰った島の建物は別荘だけのようね。100人程度が宿泊できる建物を作り計画だけど、まだ設計が終わってないみたい」

「ちょっとしたホテルじゃないですか。管理人も雇わないといけないですね」


 人材不足が加速している気がするなぁ。

 1人と言うわけにはいかないだろうから、3家族ぐらいで島の維持をお願いすることになるのだろうか?


「漁村があったでしょう? 村長に相談してみたら何とかなるんじゃないかしら」

「アレクの別荘みたいな感じですか! 滞在している間は、近くの漁村から娘さんがやってくるんです。サンドラ達は料理が苦手みたいですね」


 それでも十分かもしれない。とは言っても大きさが違うからなぁ。

 やはり管理人を置いて、必要時に村から人材を派遣してもらうことになるのかな。


「島の桟橋には、2隻は停泊できるらしいわよ。それ以上船がやってきた時には入り江に停泊すると言ってたわ」

「そんなに来るということは、王族の別荘って大きいんですか!」


 カテリナさんの話によると、パーティを開けるだけの大きさがあるということだ。

 もっとも、デッキを使ったパーティになるとのことだから、大きなリビングと言うことなんだろう。

 来客の多くは船に泊るらしいけど、客室が3つあると教えてくれた。


「まさか、離宮並みってことは無いですよね?」

「さすがに、そこまでは大きくは無いらしいわ」


 俺は至って庶民派だからなぁ。どうもスケールが異なるようだ。マクシミリアンさんの別荘より少し大きいぐらいに思っていたけど、維持するだけでも問題がありそうに思えてくる。


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