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M-212 新な戦姫の稼働計画


「レクトル王国に住んでおいでなら、王子の方腕として活躍して頂けるのでしょうが……」


 残念そうな顔をしているけど、王宮暮らしなんて俺には出来そうもないんだけどなぁ。


「ウエリントン王国の属する騎士団の騎士でもある。娘を降嫁させて男爵位を贈ったが、やはり頭角を現すことになったな。

 とりあえず辺境伯として置けば、その功労にも合致しよう。

 問題はその領地だが、軍からは何も言ってこないのか?」


「昨夜に、マクシミリアン殿達がリオ殿を訪ねたと聞いております。上手く地に着いたということでしょう」

「そうか。となると、ワシに願うことがあるのではないか?」


 やはり計画通りってことか。それならマクシミリアンさん達に前もって伝えておいて欲しいところだ。


「国王陛下の真意は、西への備えと言うことになるのでしょう。今回の貴族招集を憂いての処置だと推測しています。

 それを前提に軍人を主体に領地を与えたとなれば、大きな問題が出てきます。

 1つはマクシミリアン公爵の土地利用。そして領地を頂いた我等の私兵をどのように集めるか……」


「マクシミリアンの土地に訓練所を設ける。そして爵位の授与と共に報奨金も渡されるだろう。小隊規模なら直ぐに集められるだろう」


 確かにそれぐらいなら集まるだろうが、ハーネスト同盟軍を止めるのは至難の業だ。

 私兵が死兵になりかねない。


「それを元手に、あの土地を皆で開拓しようと思っています。私兵を集めても戦が無ければ無駄飯食い以外の何物でもありません。

 それに小隊規模の私兵が纏まるなら、開拓することは容易に思えます。

 そこでお願いです。

 王都からマクシミリアン良までの道路を整備して頂きたい。その道路を元に我等で南北の道路を作り流通網を整備します。

 問題は私兵なのですが、少しご協力をお願いしたい。除隊後に進路が定まらない兵士を斡旋いただければと考えております。

 何せ、開拓に獣機を使おうなんて考えていますから」


 俺の話を聞いている国王陛下は噴き出しそうな顔を必死にこらえているし、王子は目を丸くしている。

 ヒルダ様とフェダーン様が、何やら小声で話をしているのが気になるところだ。


「ハハハ……。あまり笑わせるな。となると、当然マクシミリアンの訓練所についても要望があるのではないか?」

「それは俺よりもマクシミリアン殿が伝えると思います。訓練所は新兵ではなく中堅の訓練所。新たに整備した兵器の使い方を教える場とすべきかと。

 訓練所の兵士と我等の私兵を合わせれば2個中隊ほどになるでしょう。

 ハーネスト同盟軍の進撃を2日は停滞させることが可能と判断します!」


「十分だ。わしとトリスタン達では、どのようにシミュレートしても1日も持たせることができなかった。しかもお前達に与えた領地を蹂躙させることを前提としてもだ。

 ファネル。これがリオなのだ。

 忙しいとは聞いているが、たまに訪ねるのも良いだろう。滅多に王宮には来ぬからなぁ」


「友人を伴って、訪問しましょう。いつもは旗艦の部屋にいるとのことでしたね。私も大陸で一番優れた軍艦に乗ってみたいと思っておりますから」

「後でその姿を見せてやろう。確かに大きな軍艦だな」


 息子の驚く顔が見たいのかな?

 ちょっと大人げないと思うんだけどねぇ。


「訓練所については、後ほどマクシミリアン殿と調整を私の方で行います。昨夜に会合をしたのであれば、近日中に私に連絡があるでしょう」

「よろしく頼むぞ。基本はリオの考える通りで良さそうだ。それにしても退役兵を欲しがるとは……」


「私から1つ確認したいことがございます」

「リオに新たな降嫁と言うことか? それはかなり問題がありそうだが」


 これ以上増えたら、アリスと夜逃げしたいところだ。

 国王陛下の問いに笑みを浮かべているところを見ると少し異なるようだな。


「それも考えてはいましたが、既に美人の妻を2人お持ちですから、我が王国としては王女を送り出すことに躊躇してしまいます。

 それよりも、ローザ王女があれほどまでに戦姫を操れることに驚きました。

 前任者の話では、『動くことは動くのだが……』と聞き及んでおります。ですがスコーピオ戦での活躍を見ると、戦機数体に勝るとも劣らぬ働きです。

 なぜ、それが出来たのかを教えて頂けぬものかと……」


 他の王国にも戦姫はあるようだ。だが動かせる者がいないと聞いたことがある。

 だけど、ローザは元々は少し動かせたんだよな。それをカテリナさんが魔改造したんじゃなかったか?


「我の場合はカテリナ博士の努力ということになるのであろう。その背景にはリオ兄様の診断を通しての成果があったようにも思えるぞ」


「どうでしょう。わずかですが戦姫を動かせる者が現れたと連絡がありました。カテリナ様の技で戦機並みに戦えるようにすることはできないでしょうか?」


 次のスコーピオ戦に備えたいということなんだろうな。

 およそ70年周期と言うことを考えれば、今動かせるようになっても次のレッド・カーペットには対処できないだろう。

 だが国民に安心感を持たせることはできるだろうし、場合によっては次の世代にも受け継がれるかもしれない。


 じっと布陣に顔を向けていた国王陛下が入れに視線を移した。

 俺の考えを聞きたいってことかな?


「大きな問題があることを御承知おきください。完全に稼働する戦姫はそれだけで大きな脅威にもなります。俺が王都で暮らさないことも、邪な連中との接触を極力避けたいとの国王陛下の御意志と思っております。

 さらに、必ずしもローザ王女のように上手く行くとは限りません」


「前例が1つだけだからのう。それはワシも理解できるところだが、レクトル王国だけが突出することでコリント同盟が瓦解することの方が心配になるぞ」


「レクトル王国軍ではなく、コリント同盟軍に所属させる所存です。それに、3王国から教えを受ける者達を派遣することで、大きな問題は無くなるでしょうし、絆を深めることもできるでしょう」


 今度は、フェダーン様が驚いているようだ。

 ナルビク王国の出だからな。自分の祖国に着いて考えているのだろう。


「そうなるとブラウ同盟としても動くことになりそうだ。その辺りはどうなのだ? それが原因となって再び戦乱の世になるようでも困る話だが」


「各国が派遣してくるというのであれば、カテリナさんと国王陛下の判断で良いと思います。それにアリスの意思で、一瞬で元に戻すことができると聞いています」

「全てはアリス次第ということか……。アリスを自分の派閥に取り込もうと動く輩も出るだろうな」


 口調は真面目なんだけど、慢心に笑みを浮かべているんだから困ったものだ。


「暴走を抑えることはできるということか……。その判断はアリスが自ら行うと?」

「倫理判断を行ってくれるでしょう。権力に媚びることはありませんし、欲を持つこともありません」


「私達は試されるのかもしれませんね」

「そう言うことになるのだろう。戦姫の動きは全てアリスの手の上になる。……本当に統一国家を作る気はないのか? リオであるならそれができるはずだ」


「前にも言いましたが、自分のできる範囲を越えています。領地が増えれば、仕事が増えて責任も重くなる。それならなるべく小さくなって暮らした方がのんびりできます」


「怠け者にも聞こえてしまうな。だが必要であれば素早く動いてくれる。私は今のままのリオがいてくれるとありがたい」


 フェダーン様が援護してくれたから、思わず笑みを浮かべて頷いてしまった。

 どうやら、他の連中も諦めたというか、考えを放棄したみたいだ。

 アリスは誰にも靡かない。いつまでも俺の友人だからね。


「考えるだけ無駄のようだな。アリスの心を信じることになってしまうが、神殿の神官よりも遥かに良いだろう。

 コリント同盟とブラウ同盟の両者で調整することになるだろうが、カテリナの対応が心配だな」


「そこは何とか宥めるつもりだ。まあ、リオ殿が説得すれば直ぐに了解してくれるだろう」


 その対価が問題だ。

 俺で遊ぶんだから困ってるんだよなぁ。


「それぐらいは辛抱するんだな。それなりに色を付けてやるぞ。島に100人規模の宿舎と、管理人を付けてやろう。疲れたら体を休めることができるはずだ」


 対価は高そうだな。

 これで終わりかな? 

 そんなことを考えていると、メイドさんがワインを運んできてくれた。

 今から飲んだら、御馳走が食べられなくなりそうだから、あまり飲まないでおこう。

 国王陛下の乾杯の声に、グラスを口にする。


「それにしても、レッド・カーペットで戦死者が無かったとはなぁ。コリント同盟王国では少なからず損害が出たと聞く。我等で援助することはやぶさかではないぞ」


「長城が破られた時には王宮にいた記憶達の顔色が変わりました。再びスコーピオに蹂躙されるのかと誰もが諦めていたことも確かです。

 ブラウ同盟軍に、援護を依頼したのですがやってきたのは戦機が1機。

 その知らせを聞いて、天を仰ぐ者達もおったようです。

 突然現れた戦機の活躍は、とても言葉では表せないと聞いております。おかげで住民被害を2桁に抑えることができました。それだけで十分です。亡くした者を生かす術はございませんが、残された者達の暮らしを守ることは私達にもできるでしょう」


 回りくどいけど、いらないってことかな?

 とは言っても、何らかの形で援助はするんだろうな。


 俺達が騎士団だということに、王子は興味深々の様子だ。

 硬い話が終わると、すかさず俺達の暮らしがどんなものかを知りたいらしく、しきりに問い掛けてくる。

 そんな王子に応えているのはエミーとフレイヤなんだけど、どちらかと言うとエミーが答えられないところをフレイヤが答えている感じだな。


「私も1度同行してみたいと思うのですが、許可願えないでしょうか?」

「俺達ヴィオラ騎士団の団長は、カテリナさんの娘であるドミニクになります。俺は騎士の1人に過ぎません。エミーはリバイアサンの艦長で、その火器管制をフレイヤが行っています。

 王子の来訪ともなれば喜ばしい限りですが、団長に責任を負わせるのも……」


「その点なら心配ない。王都防衛艦隊を率いて来るが良い。長城付近での訓練を続けるより、隠匿空間への遠征で艦隊の練度を上げることもできよう。

 とはいえ、隠匿空間の停泊場所も問題だろうから、艦隊は5隻に制限するのだぞ」


 フェダーン様の言葉に、跳び上がらんばかりに喜んでいる。

 俺より年上なんだろうから、そこまで嬉しそうにしてると何もない荒野しか見せられないことに申し訳なく思ってしまう。

 


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