表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/391

M-194 東端の王国からの電文


 スコーピオと衝突して13日目。

 ついに、3回目の脱皮をした姿を見ることができた。

 全長20mほどの胴体に10m近い尾を持ち、2本のハサミは脅威そのものだ。

 2回脱皮したスコーピオを軽く跳ね飛ばして、その胴体をハサミで両断している。

 接近しなければ襲ってこないのが唯一の救いに思えるし、集団を嫌う様で互いに100mほどには近寄らない。

 これなら砲撃で倒せそうだが、動きが速いのが難点だ。元々軍艦は軍艦を相手にするのであって、機動力の勝る魔獣を相手にしないからなぁ……。

 巡洋艦以上の軍艦は、散布界を利用して面で制圧する考えのようだが、かなりの至近距離でないと倒すことは難しそうだ。

 

 その点、軽巡や駆逐艦の艦砲は直接照準でかなりの成績を上げている。

 さすがに戦機の放つ銃弾よりは、命中率が落ちるけどね。

 中型を獣機に任せて、大型のスコーピオは戦機が担当する形で戦が進んでいるようだ。


「この銃は、魔撃銃よりも使い易いが、もう少しマガジンの弾数を増やせなかったのが問題じゃな」

「5発撃てるし、マガジンは数個持ってるんだろう? 無くなるようなら、獣機が運んでくれるよ」


「アレクの銃が羨ましいのう。ダダダ……、と撃っているぞ!」

「直ぐに弾切れなのが問題だね。梱包箱を持ち出して、その上にマガジンをたっぷり積み上げてるよ」


 アレクの持つ銃はガトリング銃だ。右手で獣を構えて左手で横に着いたクランクを回せば、銃弾が撃ち出されるからなぁ。

 見た目は派手なんだけど、直ぐに弾切れを起こしている。

 マガジンに30発は少なすぎると、45発のマガジンを急遽作ったらしいが、それでもクランクを1回転させると、銃弾が6発飛び出すんだから、直ぐに弾が尽きてしまう。

 ベルトリンクにすべきだったかな?

 まあ、スコーピオ戦ぐらいにしか使わないから、あれで我慢して貰おう。


 俺の持つ銃は、ベルッド爺さんが作ってくれたものを少し改造した銃だ。

 弾丸はローザ達と同じ何だけど、半自動だからトリガーを引くだけなんだが、元々の装弾数が少ないからねぇ……。どうにか5発にして貰ったんだけど、直ぐに弾切れを起こしてしまう。

 とりあえず大型だけを狙ってはいるんだが、何とも心細い限りだ。


「兄様、そっちに行ったぞ!」

「大丈夫だ。任せとけ! ローザは少し薄炉に下がった方が良いぞ」


「リンダが援護してくれておる。我等は、2機で態勢を組んであるが、兄様は1機じゃからな。兄様こそ下がるべきではないのか?」


 そんなに危なく見えるのかな?

 アリスがアシストしてくれるから、たまに足蹴りでスコーピオを倒してるんだが……。


 アレク達がドックに移動を始めた。

 ドックの奥から、4機の戦機が広場に早足で移動してくる。

 結構うまく休憩を取っている感じだな。

 

 さらに2機の戦機がドックから現れたところで、ローザ達が休憩に向かった。

俺の隣にも戦機が並んだから、休憩に向かうとするか。


 その前に、前方に足を運んで【ファイヤ・ウオール】で炎の壁を作る。

 軽く戦機に片手を上げて、上空へと移動した。

 上空で周囲を眺めると、軍艦の艦砲が西にも向いている。

 艦砲で間引くつもりなんだろうけど、スコーピオの表皮はかなり強靭になっている。着弾点の直ぐ近くだけに被害が限定されているようだ。


 リバイアサンの駐機台に亜空間移動を行って、指揮所へと向かった。

 何時もなら駐機台の傍に爆弾が積まれてるんだけど、今日は遅れているのかな?

 皆忙しそうだし、結構疲れも溜まっているのかもしれないな。

 

 指揮所の扉を開けると、何時もいるカテリナさんが席を外しているようだ。フェダーン様と提督が、西と東の映像を見ながら、何やら相談をしている。

 話が終わったら、次の指示を受けようとテーブルの隅でコーヒーを頂いていると、フェダーン様の顔が俺に向いた。


「こちらに来たらどうだ? リオ殿は、貴族で騎士、更にこのリバイアサンの所有者であろう? 我等と並ぶことに難の躊躇がある」

「熱心に話しておられましたから、邪魔をするのも失礼かと……。それで、カテリナさんは、どこかに出掛けたんですか?」


 俺の言葉に、フェダーン様が片手で頭を搔きむしっている。

 頭が痒いわけじゃなさそうだ。

 顔の表情も若干ひきつっているから、怒ってるってことかな?


「全く、好奇心の塊みたいなやつだ。子供でもあるまいし、ちゃんとリオ殿が注意したというのに……」

「話が見えないんですが?」


 フェダーン様から1個席を開けて腰を下ろした俺に、再び厳しい表情を向けてくる。


「リオ殿が持ってきた狙撃銃を使ったのだ。伏せ撃ちをしたらしいのだが、反動でそのまま後ろに半スタム(75cm)も弾かれたらしい。

 右肩の骨が砕かれて鎖骨が肺に刺さったというから、まぁ、自業自得と言うところだな。ユーリルが治療しているが、さすがに1日では治らぬようだ」


 撃ってってことか?

 全く無茶をする御仁だな。あれほど止めたんだから、恨まれることは無いと思うんだけど……。


「狙撃銃は、マイネ達がプライベート区画に運んだようだ。これに懲りてくれれば場良いのだがなぁ」

「たぶん、無理だと思いますよ。そこがカテリナさんの良いところでもありますからね」


 俺の言葉に、再びフェダーン様が溜息を吐く。

 良い相談相手なんだろうな。提督では少し心もとないのかな?


「そう言う訳で、しばらくはここにいて欲しい。今のところは何とか西の広場も我等が主導権を握っておるからな」

「それは、構いませんが……。導師はどこに?」


「飛行機で近くの駐屯地の向かった。やはりレッド・カーペットの状況が気になるのだろうな。再び飛行船から観測すると言っていたぞ」

「この間、通常爆弾とナパーム弾の爆撃効果を確認しようと、2種類の爆撃前後の映像を記録しておいたんです。導師の意見を聞きたかったのですが……」


「それなら、我等でもできそうだ。報告を効くことはできるが、爆撃前後の状況を目視することなどできぬからな」


 フェダーン様の表情が少し明るくなったかな? 提督も興味深々で俺に顏を向けている。

 軍事上の判断ならば、フェダーン様達の方が優れているだろうし、ここは見せた方が良さそうだな。

 アリスに頼んで、大型スクリーンに2種類の爆弾の投下前後の画像を映して貰った。

 編集して時間を早めているのは仕方がないが、手の空いている士官達も食い入るように映像を眺めている。


「なるほど……、ナパーム弾の効果が薄れているようだな。脱皮後はここまで効果が変わるのか」

「ナパーム弾ではなく、通常弾の方が良さそうですな。とはいえかなりナパーム弾が残っておりますぞ」


「うむ……。それは、リオ殿に捌いてもらおう。どこに落としても、落とさぬよりはましだが、艦砲の射程外が良さそうだな。それに、リオ殿であれば距離を稼げそうだ。コリント同盟軍の前方が良いだろう」


 何か勝手に、俺達の爆撃地点が決められていく。

 言ってることは間違いないし、余剰のナパーム弾を使うなら、確かにコリント同盟軍の前方が適当だろう。

 フェダーン様の視線に気が付いて、小さく頷くと笑みを浮かべてる。

 カテリナさんのおかげで期限が悪かったけど、少しは元に戻った感じだな。


 コーヒーを頂きながら歓談していると、ユーリル様が指揮所に戻ってきた。

 俺に笑みを浮かべて頷いてくれたけど、そのままフェダーン様のところに向かって耳打ちをしている。

 カテリナさんの容態報告と言うところだろう。

 後でお見舞いに行かないと、後で何か言われそうで怖くなってきた。


「そうか、自室に運んだのだな? なら、後で私も様子を見てみよう。簡単に死ぬようなことは無いだろうが、困った御仁だな」


 何か酷い言われようだけど、たぶん昔からそんな騒ぎをしていたに違いない。

 まあ、それがカテリナさんの魅力の1つでもあるんだろう。

 結構悪口を聞くことがあっても、その後で笑い声を上げる人達もいるぐらいだ。

 

 バタン! と通信室の扉が乱暴に開かれると、士官がフェダーン様のところに駆けこんできた。


「騒々しいぞ。名誉あるウエリントン王国軍の士官であろうが?」

「これをお読みください!」


 士官が1枚の電文をフェダーン様の手に渡すと、息を整えている。よほど慌てて走ってきたのだろう。普段運動をしないのかな?


 さて、どんな電文なんだろうと? とフェダーン様の顔を眺めると、顔が蒼白になっている。電文を持つ手がぶるぶると震えているんだが……、どんな内容なんだろう?


「リオ殿! 至急、レクトルに向かってくれぬか。 レクトル王国の長城が破られたようだ」

「レクトルとは?」


 聞いたことがない名前だ。たぶん、コリント同盟の王国の1つなんだろうが……。


「大陸の最東端の王国だ。破られた穴に戦艦を横付けしているようだが、かなりの数が長城を越えてしまったらしい」

「直ぐに向かいます!」


 退室の挨拶もそこそこに、アリスの下に走っていった。

 長城を破るというんだからただ事じゃなさそうだ。アリスに近くの爆弾を収容するようお願いしておく。

 1対1よりは1対Nの方が良さそうだ。ナパーム弾の効果が今一になりつつあるけど、牽制するには都合がいい。


 アリス専用駐機台に向かうと、アリスが片手を床付近にまで下げてくれた。

 手に乗って、コクピットに納まると、そのまま亜空間転移を行う。

 

『東に2千km。高度5千mです。音速の2倍で飛行していますが、まだザンビア王国の東付近ですね。長城の位置は各王国共に同じ緯度付近ですから、このまま干菓子に向かって飛行します』


「了解だ。各王国共に頑張っているようだね」

『2個艦隊を長城の北に展開し、長城の内側に1個艦隊と騎士団の艦船を並べているようです。長城にも、一定間隔に砲台を築いているようですが、数門で対処するには相手の数が多すぎます』


 下に見える頂上から、盛んにロケット弾が発射されている。

 飛距離は短いけど、長城の上は幅が10m程ありそうだ。スコーピオが登って来ないなら、ロケット弾は有効に使えるということになるんだろう。

 砲台を作るよりも手軽だし、軽巡の砲弾並みの威力があるからね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ