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M-177 殺戮してもキリがない


『指揮所からの要請です。「エルトニア王国軍第1陣前方にナパーム弾を投下せよ」座標は、……この位置になります』

 

 仮想スクリーンが新たに作られ、地図上に投下地点が表示された。

 苦戦しているんだろうか? 早めに落としてくるか。


「このまま南東に飛行する。爆撃コースはアリスに任せるよ。投下スイッチ起動後の投下タイミングも委任する」

『了解しました。現在、投下地点に向けて飛行中。砲弾の弾道が低く抑えられてますね。着弾地点が数km程度ですから、仰角は10度に満たないはずです』


「飛行機が上空を飛んでるからだろうね。あれだけ派手に撃ってるんだから、流れ弾に当たる危険性をフェダーン様が心配したんじゃないかな」


 見る限りでは一方的な蹂躙に見えなくもない。

 だが継続砲撃を行うために、発射間隔は1時間に数発ぐらいに抑えているようだ。銃撃を多用しているようにも見えるんだが、機関銃が無いんだよなぁ。

 

『【ファイヤー・ウオール】が使われています。威力はマスターの半分以下でしょうか?』

「本来の魔法は、あのぐらいなんだろうね。俺の方が異常なんだろう。だけど、それなりに効果はあるみたいだ」


 炎の壁で、軍艦の甲板に上がってきたスコーピオを焼き殺している感じだ。

 よく見ると、軍艦の甲板が濡れているようだ。引火しないように水を撒いていたのかもしれない。


『どちらかと言うと、舷側砲が放つ葡萄弾の方が効果が高いようです』

「主砲は榴弾なんだろうけど、着弾時に潜ってしまうからね。やはり爆弾のように地上スレスレで炸裂するならば良いんだろうけど……」


 榴散弾の考えはあったんだが、さすがに仕組みが複雑になってしまう。魔方陣を使っても量産化は難しいだろう。

 それに、似た弾種の葡萄弾があるんだから十分じゃないかな。

 前装式の大砲が活躍できるのは、こんな時かも知れない。


『爆撃終了しました。指揮所より通信、「リバイアサンにてナパーム弾の補給をせよ」以上です』

「飛行機だってあると思うんだけど、間に合わないのかな? それじゃあ、一度戻ってみるか。指揮所からの指示なら離着陸台から帰った方が良さそうだ」


 直ぐにリバイアサンへと引き返す。離着陸台におりて駐機場に入ると、数台の自走車がナパーム弾を荷台に積んで戦機の駐機台前に待機していた。

 1個ずつ、ナパーム弾を取り上げて、その場で亜空間へと収容する。

 ドワーフ族の若者が驚いているけど、気にしないでおこう。後でベルッド爺さんが説明してくれるに違いない。


「指揮所から次の目標の指示は来てるかな?」

『まだですね。いつでも行ける状態での待機と言うことでしょうか?』


 俗にいう、ホット・スタンバイって奴かな?

 それなら少し賑やかになっている、リバイアサンの西の広場に行ってみるか。

 ローザ達がハルバートを振るっているのが見たからなぁ。少しは兄貴らしいところを見せておいた方が良いだろう。


『補給広場ですね。かなりスコーピオが入り込んでいるようですけど、制御できないわけでは無さそうです』


 作戦通り、と言うことになるんだろう。

 とはいえまだ序盤戦も良いところだ。戦機の活動時間はおよそ3時間。獣機はその5割増し以上とは聞いているが、早めに休憩を取らないと、全ての戦機が広場からいなくなってしまいそうだ。


「それじゃあ、出掛けよう。西の入り口が面白そうだ」


 ジョイスティックを倒して高度を下げながら西に向かう。

 南西はナルビク王国軍の獣機部隊が2個分隊いるようだから、北西に行ってみるか。


 リバイアサンの探照灯と、左右に並んだ船からの探照灯で、西はかなり明るい。

 その明かりの下で、スコーピオの虐殺が始まっていた。

 リバイアサンを越えることはできないから、ぶつかったスコーピオが南北に移動することで、リバイアサンの端に位置した廃船は乗り越えるスコーピオで船が見えないくらいだ。

 乗り越えたスコーピオを軍艦とヴィオラの十字砲火で潰しているが、潰しきれるものではない。ヴィオラとガリナムを越えてくるスコーピオをアレク達と獣機部隊がハルバートや魔獣用の解体用の大きな薙刀のような武器で倒している。


 西の開いた口から侵入しようとするスコーピオはそれほどいないようだ。

 ガリナム近くに待機した砲戦の上から、銃で狙撃していた。

 

「やはりアレクの方かな?」

『南側にローザ様達がいるようですね。少し代わってあげた方が良さそうです』


 まだまだヴィオラ騎士団の方は、意気盛んなようだ。

 南にはローザとリンダだけが向かっているようだな。獣機部隊はいるんだが戦機が少ないんでは、脱皮後はどうなるのだろう?


 ハルバートを抱えて、ローザの傍に向かう。途中でスコーピオを数体倒したけど、幌場の中も、スコーピオが増えてきたようだ。


『ドックの前面に戦機輸送艦が出てますね。銃で狙撃しているようです』

「機関銃を搭載したかったが、間に合わなかったのかな?」

『ブリッジ近くに搭載したようですから、斜路を下りてこないと使えないようです』


 そもそもが戦闘を行う艦じゃないからなぁ……。

 ん! 西に止まっていた戦闘艦が動き出したぞ。


『通信を傍受しました。ロケット弾搭載駆逐艦が補給にやってくるようです』

「撃ったってことか? さぞかし、凄い眺めだったんだろうね」


 ゆっくりと戦闘艦が西へと移動すると、北西より駆逐艦が広場に入ってきた。

 北側のドックに蓋をしていた戦機輸送艦が斜路を下り始める。

 北側のドックで補給するのだろう。

 この辺りの防衛と、ロケット弾の搭載はかなりシビアな調整がいるんだろうな。

 リバイアサンの制御室はさぞかし賑やかに違いない。


「助けに来たぞ!」

「兄様じゃな!」


 こっちを見ないでハルバートを一閃すると、2体のスコーピオを両断している。

 まだまだ元気で安心した。


 少し前に出てハルバートを水車のように回しながら、船を乗り越えてくるスコーピオの蹂躙を始めた。


「遅かったようじゃが、爆撃をしてきたのか?」

「フェダーン様に使われてるよ。とりあえず、次の指示が来るまでは後ろで休んでいていいよ。ローザが大丈夫でも、リンダは戦機だ。魔気のカートリッジが尽きる前にドックで交換しないといけないんじゃないか?」


「予備の小型カートリッジを搭載しています。30分は持ちますから、もう1時間はだいじょうぶですよ」

「……と言うことじゃ。補給船がやってきたから、そっちの護衛を行うぞ。リンダ付いてまいれ!」


 とりあえず下がってくれた。

 リバイアサンのドックの上には3基の連装機関砲があるから、それほど激務ではないだろう。

 真ん中の桟橋にはマイネさんがいるんだろうな。あの銃を撃って仲間とワイワイ騒いでいるに違いない。


『それにしても、次々と乗り越えてきますね』

「リバイアサンの側面砲も頑張っているようだけど、継続射撃となれば射撃間隔が空いてしまうからね。飛行機の爆撃だって、俺達中心じゃないはずだから、指揮所は指揮所柄忙しそうだ」


 南から幾筋もの光が空を越えていく。

 エルトニアに供与したロケット弾が使われたんだろう。

 屋根に3基の簡易発射台を乗せた自走車が活躍しているようだ。


『小隊での運用でしょうか? 発射されたロケット弾は96発です』

「炸薬量は軽巡洋艦の主砲並だからね。戦列を作っている軍艦の連中も少しは気が休まるんじゃないかな?」


 100発近いロケット弾なら、面で制圧できそうだ。だけど数が数だからなぁ……。


「騎士団の方はどうなってるんだろう?」

「ここよりはマシのようですね。三角形に艦を配置しているので、前方射撃はロケット弾を用いて側面を砲撃しているようです」


 弾切れは案外早そうだ。夜間の補給は危険だから何とか朝まで持たせて欲しいな。

 

『駆逐艦が3隻ともドックに収容されました。再び戦機輸送艦が蓋をしています』


 さて、どれぐらいで再装填ができるんだろう?

 今頃はベルッド爺さんまで手伝っているに違いない。

 外の砲撃音の負けないぐらい大きな声で弟子たちに指示を飛ばしてるんじゃないかな。


「ベラスコ達が休憩だ。こっちも少し手伝ってくれ!」

「了解です! ローザ達も休憩に向かわせますよ!」


 アリスが俺の神経伝達能力を上げてくれた。

 思考まで素早い判断ができるのがありがたい。


『さらに上げられますが、このぐらいにしておかないと人間を越えてしまいます』

「十分だ。スコーピオの動きがかなり鈍く感じるよ」

 

 まるでスローモーションの動きだ。俺とアリスだけが今まで通りに動けるから、縦横無尽にスコーピオを倒しまくる。


「これほど遅いんじゃ、俺だけで無双ができそうだよ」

『相対的にそう見えるだけです。今の状態なら主砲の砲弾も見えるはずですよ』


 他の連中には、俺達の動きはどう見えているんだろう?

 ちょっと気になるところだが、加速した状態であることは確かだ。

 スコーピオを斬り付けても、楽に両断できるからね。


「こいつら、ここでも共喰いを始めたぞ!」

『脱皮前の栄養補給でしょうか? でも始末してくれるなら都合が良いです』


 まあ、スコーピオの死体で広場が埋まってきたからなぁ……。明日は、この処理もしないといけないんじゃないか?

 全く面倒な事になってきた感じがする。


 ローザ達の休憩が終わると、アレク達がドックに入っていった。

 俺はアレク達の後で良いだろう。

 

 いよいよ俺も休憩に入ろうと指揮所に連絡すると、爆撃の要請を受けてしまった。

 とりあえず指示された位置に、5発のナパーム弾を投下すると駐機台に亜空間移動を行う。


「次の爆弾が積まれてるよ。今度は通常弾のようだね」

『便利に使われていますが、飛行機の出撃頻度もかなり高くなっています。2つに分けて出撃をしているようです』


 従来機の方も頑張っているに違いない。何度か上空を飛び去る期待を見ることができた。だが、滞空時間が短いからなぁ……。爆撃範囲は30kmを越えないんじゃないかな。


『カテリナ様から連絡です。「指揮所に来て欲しい」とのことでした』

「何だろう? とりあえず行ってみるか」


 1時間ぐらいの休憩は大目に見て欲しいところだ。

 コーヒーとタバコを楽しむぐらいは許されるんじゃないかな。


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